経済センサスから見た印刷産業 シリーズ『印刷白書2013』

「平成24年経済センサス-活動調査」の確報が8月27日に公表された。全産業の経済活動の実態を同一時点で網羅的に把握することができ、印刷産業とその主要取引先産業の実態を比較することが容易になった。

産業間の正確な比較が可能に

経済の国勢調査「経済センサス」は、全企業・全事業所を対象とし、産業別の統計調査では産業間の正確な比較が困難なことや、サービス分野の統計の不足などの理由から新設された。
総務省では、2009年7月に事業所・企業の捕捉に重点をおいた「経済センサス‐基礎調査」を実施した。この結果を使い、総務省・経済産業省では、各府省協力のもと、2011年の事業所・企業の活動状態を明らかにするための「平成24年経済センサス‐活動調査」を実施した。同調査の実施にあたっては、従来の「事業所・企業統計調査」「サービス業基本調査」を始めとした大規模調査を統合したほか、「平成21年商業統計調査」「平成23年工業統計調査」の調査事項についても、活動調査の中で把握することで事業者の記入負担の軽減を図った。

2012年2月に実施された「平成24年経済センサス-活動調査」の確報は、2013年8月27日に発表された。産業横断的集計「平成24年経済センサス-活動調査（基本編）」によれば、製造業の企業数は43万4130企業で全産業（412万8216企業）の10.5％、2011年の売上高は343兆3268億円で全産業（1336兆9524億円）の25.7％を占める。印刷産業の企業数は3万473企業で製造業の7.0％、2011年の売上高は7兆6760億円で製造業の2.2％を占める。

印刷産業の顧客企業は様々な産業に分類され、その市場規模を知るには経済産業省「商業動態統計調査」「特定サービス産業実態調査」などが利用されてきた。主要顧客である新聞業、出版業、広告業は「情報通信業」に分類され、その市場規模は総務省「情報通信業基本調査」の売上高によって推計される。経済センサスによって、全産業の経済活動の実態を同一時点で網羅的に把握することができ、印刷産業とその主要取引先産業の実態を比較することが容易になった。

「平成23年工業統計調査」に代わる産業別集計も発表

産業横断的集計（基本編）と同時に、産業別集計（「鉱業，採石業，砂利採取業」「製造業」）が公表された。
産業別集計は、活動調査の調査結果のうち、①管理、補助的経済活動のみを行う事業所ではないこと、②製造品目別に出荷額が得られた事業所であること、この2点に該当する製造事業所について産業別に集計された。製造業については、「平成23年工業統計調査」に代わるもので、工業統計との時系列比較が可能になる。
製造業の事業所数は、産業横断的集計（基本編）では49万3378事業所だが、産業別集計「平成24年経済センサス-活動調査 製造業（産業編）」では39万3391事業所となる。印刷産業は基本編の3万3524事業所が、産業編では2万6145事業所となり、2011年の出荷額は5兆7087億円となった。

基本編と産業編の事業所数の違いは、産業編では製造品目別に出荷額が得られた製造事業所に限定していることによる。基本編の売上高と産業編の出荷額の違いは、売上高は企業単位の集計で、事業別内訳で最も大きい産業に格付けされる。出荷額は事業所単位の集計で、その事業所が印刷産業に分類されるかどうかは、その主要製品が「印刷・同関連品」かどうかで決まる。
基本編から印刷産業の事業別内訳を見ると、6兆7582億円が製造業の売り上げだが、卸売業が5753億円、小売業が809億円、情報通信業（文字情報制作、情報サービスなど）が536億円と、その事業内容は多岐にわたる。つまり、企業単位の集計ではこれらの売上高はすべて印刷産業の売り上げにカウントされるが、事業所単位では幾つかの産業に分かれることになる。

今後、「工業統計調査」は製造業を主業とする4人以上の事業所を対象に、5年周期の「経済センサス-活動調査」実施の前年を除く毎年実施されるが、全数調査の実施間隔が長くなることで、実績との乖離が懸念される。また、製造活動の実態を把握する観点からは、「経済センサス-活動調査」の結果を踏まえて、従業が製造業の事業所を調査対象にすることも検討されている。

（JAGAT　CS1部　吉村マチ子）

■関連情報
『印刷白書2013』は9月末刊行予定です。
毎年発刊時期のお問い合わせをいただき、少しでも早く発刊できればと努力しておりますが、ぎりぎりまでデータを精査したことで、8月末発表の統計資料まで反映しております。
広く産業に役立つ年鑑の視点から、より信頼性の高い白書の編集、制作を進めているところです。今しばらくお待ちください。

■印刷白書2012