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小ロット対応の後加工処理

掲載日: 2013年10月02日

デジタル印刷は、多品種・小ロット・短納期の仕事に威力を発揮するが、後加工もそれらに対応できなければ最適なシステムとならない。従来の加工機を転用しても、セット替え(段取り替え)に時間や手間が掛かりすぎて、生産性は悪くなる。

オフセット印刷に対応した通常の後加工機の多くは、セットアップ調整など前段取りがマニュアル操作で行うものが多く、オフセット印刷機に比べて自動化が遅れているといえる。このような設備で多点数の小ロット印刷物を加工しようとすると、生産性は著しく下がる場合がある。専任オペレーターによる職人的な調整にゆだねる部分が大きいと、さらに効率がダウンする。

デジタル印刷でページ物の製本加工を行うときに、サイズやページ数などの異なる仕様の製本を連続的に加工することが求められる。しかし、従来の製本機ではその都度、機械を止めてセットアップ調整する必要がある。製本は断裁、折り、丁合、綴じなどの工程から構成される。

さらに上製本であれば表紙をくるむ工程がある。それぞれの工程で稼働している機械のすべてで、これらのマニュアル作業を行うことになる。つまり、手間と採算性を考えるとデジタル印刷機が得意とする100 部以下の加工に、従来型の加工機は向かない。そこで、デジタル印刷による小ロットの印刷を前提とした後加工機がリリースされている。製本加工の無線・中綴じ機では、高速から中速(3000~7000 部/h)タイプで、オフセット印刷機に対応した機械に対して、低速(1000~3000 部/h)タイプなどのデジタル印刷機の連携を踏まえた製品もある。印刷機と後加工機のスピードの差を調整するため、一時的に紙を蓄えておく装置(Buffer)も考えられている。

これらの加工機はセット替えを自動化することにより、仕上がり寸法の異なる加工をほぼ連続的に行う。セット替えの指示データはJDF と呼ばれる、印刷機や加工機のメーカー間で標準化されたXMLベースのデジタル指示フォーマットが使用されている。これにより、異なるメーカーの印刷機や加工機をLAN で接続し、段取り替えや稼働情報、作業完了情報をMIS で管理するという自動化の進んだ工場となり、バージョニングや極小ロットの印刷物を効率よく生産できるようになる。

ブックオンデマンドのサービスやフォトアルバムやブログ製本などの1 冊からの少ロットの仕事がデジタル印刷で対応されている。このサービスでは小ロットごとにサイズや仕様の異なる製本に迅速に対応している。サイズや厚みが違う製本の連続加工にも対応し、製本データを入力、転送を行うだけで部品交換などの煩わしい作業も必要がなくセット替え時間も数秒でOK である。製本作業も冊子を投入するだけでよい、専用オペレーターが不要となるオンデマンドの製本機も登場している。また、紙器パッケージの抜き加工やシール・ラベル印刷の抜き加工では、従来の抜き型でなく、高出力のレーザーで抜きを行うレーザーカッター加工機が開発され、小ロットの製函やシール・ラベルの加工に威力を発揮している。

小ロット対応では大きな生産量を期待しがたく、そのため後加工のデジタル化に対してもあまり多くのコストが掛けられない側面もあり、ほかの仕事と併用した後加工の運用も検討しなければならない。さらにプリプレス工程でボトルネックになりやすいのが、顧客との間で行われるプルーフ提出と直しの工程である。理想はプルーフレスだが、顧客と色の基準を取り決め、JAPAN Colorなど標準色を活用することが必要になる。
小ロット・多品種の印刷物の生産に対応するためには、デジタル印刷機との連携や加工機の自動化だけでなく、全く新しい発想で独立した運用を考えていくことも必要であろう。

(『JAGAT info』2013年9月号より)

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