JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

印刷業も公的支援活用を 補助金・助成金の活用の好機

掲載日: 2013年10月04日

「ものづくり補助金」「先端設備投資促進事業費補助金」など「補助金」の活用が可能な状況になっている。補助金を含む公的支援制度の狙い、企業がどのように取り組むべきかをまとめた。


2012年末から起きた大きな経営環境変化は以下の2つである。
1. 金融円滑化法の終了
2. 自民党安倍政権によるアベノミクスの発動

その結果、不況対策による弱者救済やセーフティーネットの構築という受け身の対策から、3本の矢を柱とする成長戦略を基本に、「デフレ脱却」「企業の前向きな取り組みに対する積極的な支援」へという前向きの体制となった。
この環境変化が印刷業に与えた影響のひとつは、設備投資などへの「補助金」の活用が可能な状況になったということである。

例えば、「ものづくり補助金」「先端設備投資促進事業費補助金」など、複数の印刷関連会社が応募、採択されている。企業にとっては、返す必要のない資金が手当てできれば、それを活用して業務改善や新規設備投資が行える。こうした「活用可能な」公的支援施策事業による景気活性化策は当面継続される様子であり、公的支援制度の活用について検討する良い機会が巡ってきたといえる。
まず、補助金を含む公的支援制度の狙い、企業がどのように取り組むべきかを検討し、次号で印刷業が活用可能と思われる補助事業の内容について具体的に見ることとした。

現在の補助事業の特徴

今回の中小企業支援策の特徴の一つは、事業規模の大きさである。24年度の補正予算と25年度の予算で2000億円以上の新規の中小企業支援策が予算化されている。特に「ものづくり補助金」については、上限1000万円、約1万社を対象に1000億円の事業規模を予定している。

従来、研究開発型の補助金について印刷業は受注加工産業であるため、「印刷会社」が対象になることはあまりなかった。今回は試作開発に加え設備投資そのものが対象になるなど、該当するケースが幅広くなり、印刷会社にとって使い勝手は格段に向上した。

この2つの特徴の結果、例えば7月10日に2次公募の締め切りが済んだ「ものづくり補助金」については、相当数の印刷関連企業が申請を行ったと見られる。我々もこれまで依頼により複数の企業の申請支援を行っている。

公的支援施策の方向

国の中小企業対策は、大きな節目が21世紀初頭にあった。
1999 年に中小企業基本法(新基本法)の抜本的な改正がなされ、中小企業政策の基本理念は従来の「救済」から「自立支援」へと移行した。印刷業界においても、同時期に2005計画の取り組みが始まっている。
国が中小企業政策において、特に重点としている分野は以下の通りである.

1. 中小企業の立場から経営支援を充実・徹底する
2. 人材の育成・確保を支援する
3. 起業・新事業展開のしやすい環境を整える
4. 海外展開を支援する
5. 公正な市場環境を整える
6. 中小企業向けの金融を円滑化する
7. 地域および社会に貢献できるよう体制を整備する
8. 政策評価に中小企業の声を生かし、起業・転業・新事業展開への支援策の有効性を高める
今回の公的支援施策は、この方向の具体化を目指し、「緊急経済対策」として予算化されたものである。

公的支援施策の数

全国的に中小企業の経営支援を行っている中小企業基盤整備機構の運営する中小企業ビジネス支援サイトJ-NET21によれば、都道府県に限定されているものを含め、全国各地で現在(7/15現在)実施されている公的支援は以下の状況である。
kouteki-sien-table1.jpg

補助金と助成金

大雑把にいうと最初から金額の支給総額が決められており、「審査委員会」などで採択されなかったら支給されず、必ずもらえるとは限らないのが補助金である。
1企業当たりの補助額は、例えば「ものづくり補助金」では上限1000万円(費用の2/3以内)、「先端設備投資促進事業費補助金」では改善計画の実現度合いにより補助率は異なるが、中小企業は最高で補助率1/2、上限額120億円まで対象となる。
対して助成金は申請してそれが通れば、原則としてすべての人に決められた額が支給される。例えば厚生労働省管轄の「雇用調整支援」は助成金であり、経済産業省の「ものづくり支援」は、補助金ということになる。どちらも支給されたお金は返済不要であるという点は共通している。

活用に当たっての心得

「補助金」を中心にして、申請に当たっての心構えを以下に要約した。
1. 情報収集
公的支援の申請に当たっては、支援施策について、早めに情報収集することが必要になる。特に補助金は、応募締め切りまでの募集期間が短く、「ものづくり補助金」の場合は約1カ月程度であった。準備に相当な労力を必要とするケースも多く、絶えず情報収集をしておくことが重要である。不明な点を直接窓口に確認する手間を惜しんではいけない。
2. 審査がある
補助金は、雇用関係の助成金のように申請要件が適合すれば確実にもらえるものと異なり、申請要件と応募の倍率によって交付の審査がなされる。
3. 出費先行
補助金申請に成功しても実際のお金の受け取りは、年度末の請求に基づき行われるのが基本で、先行して経費は出て行くことになる。このため資金的な準備(融資を受ける場合は金融機関の了解)が前提となる。もちろん使途は申請時に定められており、申請時の目的以外の資金については請求できない。
4. 帳票類の整備
補助金を受けた企業は、会計検査院の検査を受ける可能性があり、しっかりと事務処理し、正当な目的で費用支出していることが求められる。検査が入る可能性があることを認識した上で事務処理を行うことが前提になる。
5. 計画策定がカギ
補助金の採択に当たっては、審査会などで申請書類による審査を行い、採否の振り分けがポイント制で行われる。自社の方針を納得力ある形で説明し、国、地方公共団体の支援を受けるためには、実現性の高い「計画」が必要となっている。補助金申請に限らず、法律の認定に基づく支援申請など、実現性の高い事業計画や研究開発計画の作成・提出が求められるケースが多くなっている。納得性の高い「計画」作成のスキルが重要になっている。 (JAGATinfo 2013年8月号より)

阿部 隆 株式会社GIMS 代表取締役 http://gims.co.jp   このメールアドレスはスパムボットから保護されています。観覧するにはJavaScriptを有効にして下さい

(C) Japan Association of Graphic Arts Technology