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印刷会社の収益源と経営スタンス 2013年発刊「JAGAT印刷産業経営動向調査2013」レポートから

掲載日: 2013年10月31日

業界の統計データを見ても、なぜそのような結果になったのかはわからない。業績と戦略の相関がわかれば、どのような戦略が印刷会社の業績向上に有効かわかる。良い会社は何を考えているか。「JAGAT印刷産業経営動向調査2013」レポートから。

印刷会社の利益率低迷が続く

印刷メディアの需要増を望みにくい状況が続き、印刷会社にとっては経営構造を変えていく必要性がより高まっている。印刷会社の平均利益率は高い時代は5~6%台あったが、いまや1~2%台での推移が定着しつつあり、赤字の会社も少なくないと見られている。インターネットの普及、電子書籍の実用化などが到来、競合となるデジタルメディアの活用が広がって、広告メディアにおいては数年前に放送・通信メディアのシェアが既に印刷メディアを上回った。

差別化できる一番を持って収益性を高める

このような状況下においても、10%近い利益率の印刷会社常に一定数ある。彼らは差別化されたビジネスを持っているが、その多くは他のどこかが真似してうまくいくスタイルではないように思われる。それは彼らの会社が地域や商圏、製品・サービス、あるいは顧客に最適なスタイルに特化して適応することで高収益を実現しているからだ。それは、何らかのニッチな分野における圧倒的な、あるいはちょっとした一番であり、良い会社になればなるほど、こんな「小さくても一番」をたくさん持っている。

困り事や面倒をビジネスに仕立てる

中小企業であればあるほど、競争回避の戦略を選ぶことがセオリーだ。他の誰かと同じ設備で同じ仕事をしても競争になる。設備の差別化は望ましいが、同じ設備なら他社と違う使い方をして生産性を高めるとか、他社に真似できない思いもしないインプットとアウトプットのあり方などを考える必要がある。印刷会社の収益源とは変則的な仕事である、という言い方があって、同業の嫌がるような、または顧客の面倒などを引き受けてビジネスに仕立てられる印刷会社こそが儲かるという意味であろう。

業態変革は確かに印刷会社の数だけある

たとえば顧客に最適な印刷会社への適応が生き残るための鍵だとすれば、印刷会社の業態は印刷会社の数だけありうることになる。ビジネスのスタイルや業態そのものを真似してもうまくいかないかもしれないが、うまく適応した印刷会社には共通した思考特性や行動特性、あるいは戦略などがあるはずだ。「JAGAT印刷産業経営動向調査」は、これらを高収益企業と平均的企業の比較を通して浮かび上がらせることが目的で、今回最新調査では初めて経営スタンスについて調べた。

高収益企業の思考や行動の特性を知って参考にする

妥当と考える経営スタンスの選択で最多得票は「印刷ワンストップサービス」だった。「印刷専業」が続き、「ソリューション・プロバイダー」、「BPO・業務受託」、「情報加工・発信業」などの順で続いた。収益性と成長性の総合業績評点の最高は成長性が高い「BPO・業務受託」で「印刷専業」が続いた。収益性評点の最高は「印刷ワンストップサービス」である。印刷をコアとして事業領域を広げるか絞るか、明確にしたほうが有利とわかる。印刷経営の将来は100社100様であるが、こんな調査結果も参考にしながら考えてみたい。

(JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 藤井建人)

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「JAGAT印刷産業経営動向調査2013 」

体裁:A4版、104ページ
定価10,500円(税込)、JAGAT会員特別価格5,250円(税込)
発行:公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部
購入:お申込みはこちら

【構成】
1.2012年度の印刷会社の経営動向
 (1)経営動向の概況 
    ・ニューノーマルの時代に対応する印刷経営  

 (2)経営動向指標
    ・貸借対照表、損益計算書
    ・生産性、収益性、安全性
    ・人的資源(平均年齢・部門別人員構成比・教育研修費)
    ・1人当り指標(売上高・加工高・人件費・機械装置額等)

2.印刷会社の業績と経営戦略
 (1)業績と経営戦略の概況
    ・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
    ・業績良好な印刷会社の戦略 
 (2)経営戦略
    ・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
    ・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
    ・人材教育(手法・対象者・分野)

3.印刷会社の設備動向

 (1)設備動向の概況
    ・設備投資のスタンスと意向
    ・工程の保有・強化・縮小意向
 (2)設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
    ・枚葉機
    ・輪転機
    ・デジタル機等
 (3)新技術・新商品/サービスの導入意向
    ・クロスメディア展開
    ・導入状況と満足度
 (4)DTP環境
    ・PCの種類と台数
    ・アプリケーションの種類とバージョン
    ・データの入稿形態

4.印刷会社の経営指標

 (1)セグメント別の経営指標
    ・データ:損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
    ・セグメント:2地域別(東京とその他)、従業員6規模別、業種業態6分類別、オフ輪の有無別)
 (2)月次の各種前年比推移

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【印刷産業経営力調査の概要】
概要:印刷会社135社から調査票を集計
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2013年1月~3月

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印刷会社の経営と戦略、そして設備と投資スタンス2013

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