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UV インキを使った印刷は、インキの乾燥(硬化)時間の短縮によって多くの効果をもたらしている。UV インキの乾燥システムの取り組みでは、インキやUV 光源などの技術が新しく開発されてきた。
従来メタルハライドランプがUV インキの乾燥用光源として使用されている。その分光分布は、可視領域および紫外線の全領域にまたがる。分光分布とは、その光源から放射されている光を波長ごとに測定し、その光のエネルギーの割合を表したもので分光特性とも呼ばれる。UVインキの硬化は、重合開始剤の反応する波長の領域の360nm付近で対応する。しかしメタルハライドランプでは反応に使われる波長域の光量は、全体の光量の13% 程度である。
硬化反応を起こすために必要な光量を得るには大きな電力が必要となる。その時の余分な電力が発熱に使われ、ランプの表面温度が高熱になり印刷媒体に影響を及ぼす。そのために光源を印刷表面から離して照射しなければならず、さらに多くの電力が無駄になる。また、酸素が100nm?210nm の紫外線に照射されオゾンが生成される。そのためメタルハライドランプではオゾン発生対策として脱臭、排気ダクト設備が必要となる。
そこで300nm 未満と500nm以上の波長域の光をカットし、インキ硬化に必要な波長域を有した分光分布のオゾンレスのUV ランプも開発されている。一方、高出力型LED によるUV 光源も普及している。従来のメタルハライド光源に比較し、70?80%の消費電力を削減、オゾンレス、排気ダクト設備が不要、光源の長寿命化などのメリットがある。ランプの表面温度は、上がらないので熱の影響を受けやすい媒体にも印刷できる。しかしLED が特定の波長域だけの発光なので特定の光重合開始剤が必要で、その使用量が多いためLED 専用インキは高価になる。LED 光源と印刷媒体の距離が狭いため厚い媒体対応も難しい。また、ランプ表面はあまり発熱しないが、光源装置自体が発熱するため冷却装置が必要となり、実際の電力消費は従来のランプの60?70%である。
ビジネスフォーム印刷の中では水銀灯を使った低電力のUV光源も開発されている*。水銀灯は、石英ガラス製の発光管の中に高純度の水銀(Hg)と少量の希ガスが封入されている。
365nm を主波長とし、254nm、303nm、313nm の紫外線の出力が高いのが特徴である。開発されている水銀灯は、石英ガラスに特定の金属を封入することで必要な波長を発生させて無駄な波長域の光や熱発生を極力抑えている。水銀灯が発熱しにくいため紙の表面温度は30℃程度に抑えられるので、光源自体も近接させられ(従来のUV ランプで10cm を2cm 程度)発光効率を上げられる。従来のUV 光源と比較すると発光の電力は約1/3(約2?3KW)、待機電力で約1/5 に削減され待機時間も1分程度になっている。
また、この水銀灯は2 種類ある。一つはガラスの組成を変え、250nm 以下の波長域が外部に漏れるのを抑えオゾンを発生させない。さらに光源の電源装置をアナログからデジタル方式に変更して、電源装置自体を大幅に縮小している。UV インキ乾燥のための光源は、メタルハライドランプ、LEDといろいろな課題を解決し製品化がされている。この水銀灯も今後オフセット印刷のUV 光源としての技術開発が期待できる。
UV 印刷を取り組むに当たっては、各UV 光源の特長を理解してそのメリットを十分に生かしてほしい。
(『JAGAT info』2013年11月号より)