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撮影画素が印刷に及ぼす影響

掲載日: 2014年01月08日

デジタルカメラの撮影画素数が大きくなることがプリプレス工程に及ぼす影響

画素数の増大の功罪

現在、デジタルカメラの撮影画素数はコンパクトカメラで約1400万画素、一眼レフタイプでは約2400万 画素程度の製品が普及している。一眼レフタイプには画素数が3600万画素のものもある。スマートフォンに搭載されているカメラ機能でも、iPhone 5sなら800万画素、富士通のARROWS NX F-06Eでは1630万画素となっている。
印刷に必要な画素数は、入力解像度300dpiで仕上がりサイズA4ならば、870万画素となる。つまり、iPhoneのカメラでも、A4程度の画像を印刷するには十分対応できるわけである。

画素数が大きくなると、印刷で十分な仕上がりサイズが得られ、カメラ機能としてはレンズや光学系の解像性などを十分に引き出せる。
流し撮りの撮影後にトリミングして必要な部分を使う時の画質向上(トリミング耐性)などのメリットがある。デメリットは画素が多くなって1つ1つの画素の光電素子の受光量が減って感度(高感度耐性)が下がることや、データの増大によるPCへの負担が大きいことなどが挙げられる。

光電素子であるCMOSのダイナミックレンジもこの10数年で飛躍的に向上し、高感度耐性の問題も解消されてきている。PCの性能アップに伴い、大きな容量の処理の負担もあまり感じられない。
撮影では通常、最大のサイズの画素(もしくは解像度)で撮影することが多い。大きなサイズが必要になっても対応可能なように最大サイズで撮影しておき、必要画素数に応じて縮小(ダウンサンプル)して運用されている。

また、今後は大サイズ出力の用途が増えると予想される。例えば、液晶ディスプレイで主流のフルHD(1920×1080pixel)は、近い将来4K(4000×2000前後)や8K(8000×4000前後)になると考えられる。8kでフルに表示するためには、3200 万画素超のデータが必要となる。最大サイズで撮影し、データを管理していくことが妥当な考え方である。

プリプレス工程での影響は

アナログ写真原稿を入稿する際には、仕上がりサイズに合わせて倍率を計算し、スキャナー分解時に適正な解像度を設定していたため、画像データは適正サイズとなっていた。

デジタルカメラデータの入稿ではこの工程が異なっている。
印刷会社に入稿された紙面データ上では、最大画素数で撮影した画像データがダウンサンプルされずにそのまま貼り付けられているものも多い。PDF/X-1a では必要最低限の画像解像度を規定することはできても、過剰な解像度に対する規定は行っていない。

つまり、多くの場合、必要以上に大きな画像データを貼り込んだ誌面データを後工程に渡している。RIPやPCの性能が大きく向上しているため、大きなデータでも特に問題が露呈されてはいない。
しかし、全体の仕事のデータ量からみれば、ネットワークの転送時間やRIP演算処理時間が増大し、結果的に全体の効率を下げてしまっている。

画質も、適正露光でピントが合って画素数も十分にあり、それなりのコントラストのある画質で、よい画像が得られている。そのためUSM処理をしない印刷画像が多く見られる。しかし、印刷での写真画質の向上のためには、コントラストの低下を補うUSM処理は絶対に必要である。

現在のデジタルカメラの画像データは、画像品質が大きく向上し、プリプレス工程での画像データの入稿形式、処理形態も大きく変わってきている。改めて、大きな無駄であったり省いてしまったりする工程もあるため、それに見合った適正なワークフローを構築する必要がある。

(『JAGAT info』2013年11月号より)

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