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PPO推進協議会とは世の中がBPOのベクトルに流れる中、印刷業界で考えられるBPOを具体化・推進する団体であり、益々小ロット化していく印刷物を、ITの力を最大限使って効率良く、低コストで小ロットの印刷物を製作&デリバーしている。
昨年のpage2013ではPPO推進協議会の会員がずらりと並び所信表明をしたのだが、1年経ってみると絵に描いた餅がしっかり食べられるようになったものもあるし、まだまだアイディア段階もあるというのが現状である。今回は確実に実績を上げている3社を集め、より突っ込んだ議論にしたいと思っている。
■小ロットというのは、たくさん集めれば中ロットにも大ロットにもなるわけで、ITの力(Web to Print)を借りて、小ロットをたくさん集めて中ロット以上の効率を上げるというのが、PPO推進協議会の当初の目標の一つであった。そして、その仕事を運用しているのが研文社である。
研文社が有しているデジタル印刷機は連帳タイプの高速インクジェット機と乾式トナーの枚葉タイプであり、この2台を中心として、One to one追い刷り用のナンバリングプリンタ(IDやバーコード、氏名等の印刷)なども装備され、デジタルオンリーやUVオンリーということではなく、総合的なオンデマンド工場というコンセプトで設計されている。もちろん印刷だけがオンデマンドということではなく、製本機まで含めた最終納品物をオンデマンドで製作できる工場として設計されている。
これは研文社がクレジットカード関連の印刷や自動車の整備マニュアルを長年手がけ、請求書や伝票類、カーボン紙の入った特殊製本のノウハウを蓄えてきたことと、クレジットカードの伝票類がインターネットの荒波に飲まれてきた経験から、世の中の変化に柔軟に対応できなければ未来はないと肌で感じ取っていたことが大きい(・・・と私は感じている)。
もちろんフォーム印刷ではその役目から、申し込み伝票やその受け付け作業自体がBPO的なソリューションビジネスとして確立していたのだが、世の中がインターネットにシフトしてしまえば、入力に関係したBPOの仕事自体がなくなってしまうという厳しい現実を皮膚感覚で知っているということである。
■研文社の場合には最終製品にこだわっているのでオンデマンドブックという単語を好んで使っている。キャッチフレーズとしてはKDVP(kenbunsya Digital Value Printing)という商品名(ソリューション名)で呼んでいる。
研文社のオンデマンドブック戦略の大きな柱になっているのが、前述したように電通オンデマンドグラフィックが中心となって推進しているPPO であり、PPOの製造・デリバー拠点として重要な役割を果たしているのだ。PPOは単なる仕事の外注先の組合という事ではなく、Web to Printシステムやロジスティックシステムを共有することで、有機的にビジネスメリットを上げていくというグループである。
研文社が関係しているPPO案件はある業種のカタログなのだが、日本全国にこの商品を扱う業者が何百とあり、それぞれで値段設定が異なるなど、典型的な多品種小ロット印刷物なのである。ここでポイントになってくるのが、PPOで使用されるDOP(Dentsu Ondemand Platform)と呼ばれるWeb発注システムだ。いわゆるWeb to Printシステムなのだが、ベースデザインや値付けの基本デザインは電通側(PPO側)が責任を持って作りこむのだが、その先の個別デザインに関しては、印刷発注主が責任を持ってデザインするという仕組みになっている。日本語Web to Printシステムでは、縦組みとか組版機能ばかりが語られるが、大事なのは「責任所在の明確化」や「基本デザインの完成度」にあるのかもしれない。
DOPを使うことで最少発注ロットを50部にしても何とかなるということなのだが、実際PPOの“最少発注ロットは50部から”ということになっている。印刷通販が市民権を得て以降、アナログ印刷でも100部が発注単位として定着してしまったため、デジタル印刷では、それを何としても下回らないといけないのだろう。
アナログ印刷の場合はギャンギングすることでコストをドラスティックに落とせるので、100部ロットを実現できたのだが、デジタル印刷の場合はWeb to Printを活用することで効率を上げることが出来る。分かり易く言うと、可変印刷・バリュアブル印刷が可能なデジタル印刷で問題なのは、PPOの仕事を50部、そのすぐ後にまとまったマニュアルの仕事を1,000部、そしてPPO200部、・・・というように、ごった煮的に仕事が入ると効率がガクンと落ちてしまうのだ。
同じ50部でもまとまって40事業所分の仕事が入れば、PPO向けに製作ラインをまとまった時間当てられて効率がアップするわけである。これはデジタルもアナログも同じことで、DOPというWebシステムを使うことで印刷通販的に浅く広く集めることも可能となり、結果的に2,000部くらいの仕事量として製作していくことが出来るのだ。PPOに充当する時間が確定すれば、あとはバリュアブルでもOne to oneでも、何でもゴザレがデジタル印刷のメリットである。この方式を関係者はジョブギャンギングとか時間的ギャンギングと呼んでいる(イメージはご理解いただけると思う)。
もちろん組織体制も含め、研文社側には大きな変革が必要だったのだが、この辺も含め出来る限り明らかにしていきたい。しかし、研文社が単に商業印刷のノウハウだけにこだわらずに、フォーム印刷のノウハウまで融合したことに勝機があったというのは間違いないところである。
■昨年のpageで大きく目立っていた東京リスマチックには、今回もご登壇願う。四つのワンストップを用意しているのがリスマチックのスタンスだったが、今回は何をどのようにプレゼンするか?はなぞになっているので「乞うご期待」としか言いようがないのだが、リスマチックはこの一年間だけでも事業を大きく拡大している。3D展開やアパレル産業へのオンデマンド展開等、独自の話が聞けるものと確信している。これだけの商品ラインナップでどんな要求にも応えられる体制を準備しているということである。
研文社にしろ、リスマチックにしろ、自分たちの技術やノウハウをフルに活かして事業展開している。また発注側の電通オンデマンド側にも様々なノウハウを有している。そんなノウハウを少しでも学び取っていただければ、皆様のビジネスに大きく役立つものと信じている。
(JAGAT 研究調査部 部長 郡司秀明)
オンデマンドプロモーション最前線~PPO推進協議会1年後の現状報告
2月6日(木) 15:45-17:45
スピーカー:電通オンデマンドグラフィック 輿石正和、小野裕二、野澤康文/研文社 網野勝彦/東京リスマチック 鈴木隆一