JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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Kodak Unified Workflowの導入事例から見るそのメリット

掲載日: 2014年04月14日

コダック株式会社 ソリューション部
三浦 知津子 氏

コダックはUnified Workflow、統合ワークフローで、ワークフローRIPのPrinergyを中心に、全体ワークフローを統合し、最適化し自動化していくことを非常に得意としている。

実際かなりの導入実績もあり、Web to PrintのInSiteという製品を導入して利用されている会社も多数ある。そこで、導入事例を紹介して、少しでもヒントを持って帰っていただければと思う。

小ロットになるとどんどん売上が下がってしまうので、その分、売上を確保するためには量をこなしていかなくてはならない。また、たくさん量を捌けるようになっても仕事が来なくては売上が上がらないので、どうやって仕事を取ってくるか。そして、取ってきた仕事の中で、実際に利益をどうやって確保していくか、この3つに焦点を置いて今日は紹介していきたい。

実際にUnified Workflow、Prinergyを中心としたワークフローを導入していただいているお客様の例を紹介をする。

Kodak Unified Workflow Solutions

最初に、Unified Workflow(図1)を簡単に紹介したい。コダックはワークフローのRIPの部分から、CTPのレコーダー、CTPの感材、トナータイプとインクジェットタイプのデジタル印刷機、すべて自社で製作販売している唯一のメーカーである。

デバイスは、CTPとデジタル印刷機の両方がある。これも完全にPrinergyで、1つ真ん中に司令塔を置いて、デバイスに出力する仕事に関しても、まずはPrinergyで処理をして、そこからどこに出すかというボタンを押す感覚で出力ができる。その中で定形のものに関しては全て自動化できるのが、Prinergyを核として統合されたUnified Workflowのコンセプトである。

本日特に話をするのは、PrinergyとWeb to Printの部分である。小ロット対応ではWeb to Printは外せない。InSiteは、入出稿、校正、Webの受発注まですべて賄うことができるが、一番のベースになる考え方としては、Prinergyでやっている仕事をインターネットに公開するのが、InSiteのベースになる。

このPrinergyで、今までは印刷会社の中で、クローズで製版処理されていたために工数がかかっていた部分を、ある一定の部分、お客様に開示することによって、「行った戻った」をなくしたりして、ワークフローを統合していき、間のミスやロスを減らしていくがInSiteである。したがって、あくまでPrinergyの付属品というか、Prinergyを、Webを使って上手に運用していくためのツールが、Web to PrintのInSiteである。


 
 
▲図1


 

小ロット化するジョブ

Prinergyを中心としたInSiteワークフローを利用されているお客様を順番に紹介したい。まず1社目の船場印刷株式会社は、小ロット化するジョブに対して売上をどのように確保していくかということで導入された。
小ロットの仕事も、大ロットの仕事と比べて間の工数が少ないというわけでなく、ほぼ同じである。校正が3回あれば3回やらなければいけないし、社内の処理も、最終的に何部刷ろうが、処理の工数は同じなので、今後小ロットになった時、今までの人海戦術で対応するのでは限界がある。なので、Webを上手に使って、難しいことを考えずに従来の仕事をいかに工数を減らしていくかがポイントになる。

私が西日本を担当しているため、紹介する会社も西日本のお客様の事例が多いが、InSite自体は今、日本全国で100セット以上導入されている。実際に北海道から九州まで使われている。

船場印刷は、兵庫県姫路市にある(図2)。InSiteの導入時期は2008年で、もともとPrinergyを使われていたので、そこにInSiteを付けていただいた。非常に上手に使っていただいている。

InSiteのトップページでは、他社と同じように、インターネットを使ってIDとパスワードでログインする。今日紹介する事例は中ロットくらいになるだろう。隔月で出されている音楽雑誌の仕事である。制作は全部、制作会社がデータを作って、船場印刷はそのデータを受けて印刷をするというパターンである。ここでInSiteを使ってうまく仕事を回している。

今までの制作会社のフローは、データができ上がると、制作会社からFTPサーバのほうにデータが送られて、RIP処理をして、直しがあれば戻すというパターンだったが、それをInSiteの入稿に変更した。

どうなったかというと、まず入稿する制作会社が、船場印刷のInSiteにアクセスして、トップページでIDとパスワードを入れてログインすると、制作会社と船場印刷の間で、この仕事が見えてくる。

「何月号の音楽雑誌」といったフォルダがあるので、そこをクリックすると、「ファイルのアップロード」というボタンがある。これを押すと、制作会社がいつも使っているMacやWindowsのほうにウインドーが出てくる。

このままデータをドラッグ&ドロップして「アップロード」のボタンを押すと、圧縮もシステムのほうがして、インターネットの中は暗号化して通信で持ってきて、そのままInSiteのサーバで安全性のチェックをして、Prinergyのサーバにコピーして、ストップする場合はそこでストップする。

このように、システムが、今までやっていた圧縮作業や転送作業などをすべて、「アップロード」ボタンを1回押すだけで全部行うので、作業者としてはドラッグ&ドロップで終了になる。そうすると先方に「入稿した」というメールが飛ぶようになっている。

データは特に形式は関係ない。フォルダごとでも何でもコピーすることができる。フォルダの中の階層やリンクも全く切れないので、非常に喜んでお使いいただいている。

ドラッグすると、コピーしてストップすることできるが、PrinergyというRIPの中にデータをコピーしているので、いわゆる完全PDF、完全に処理されたPDFを入稿された場合は、そのままPrinergyのホットフォルダの中にデータを入れることができるので、そこでRIPをかけられる。外から印刷会社のRIPを使っているような感覚になる。入稿して、しばらくインターネットの画面を見ていると、船場印刷のPrinergyが処理をして、その結果がブラウザ上に表示される。

事前にPrinergyの設定をしておいて、船場印刷と音楽雑誌を作成している制作会社との間で「RGBのデータがあったらいったん止める」、「そのままCMYKに変える」など設定を先に決めておいて、ルール違反に関しては、そのページに大きくバッテンが出てくる。
入稿側は、船場印刷でRIP処理したものがおかしいと言って返ってくるのを待つことなく、自分が今送ったデータが船場印刷でそのまま刷れるデータかどうかを画面上でチェックできるので、船場印刷に人がいない場合でもRIPで処理ができる。いつでも入稿ができる。

中身のどのデータが悪いのかまでInSiteは抽出していくので、このページの中の、この画像がRGBだからだめ、この画像が粗いからだめというところまで追い込むことができる。いつも処理されている担当の方に「完全データ入稿と言われる不完全データ入稿を、完璧データ入稿にできた」と言っていただけて、非常に評価が高い。
(図3)は工数をまとめたものである。今まではFTPサーバにつないでいるので、まず制作会社でデータを圧縮し、船場印刷のFTPサーバにつないで、データを送り、「今送りました」という連絡を入れていた。船場印刷では人が待っていて、FTPにアクセスしてデータをダウンロードし、圧縮してRIPに投げると、ここで何かエラーが出て、急いで制作会社に戻して、制作会社がまたデータを直して入稿し直していた。
このフローが、先ほどのInSite入稿によってInSiteサーバにつないで送って、エラーが出たらそこですぐに訂正して再入稿する。こういったフローが組めるようになった。

よく「お客様にデータを直させるのか」と言われるが、それに関しては本末転倒になるので、当然、今までどおり処理することが大前提になる。ただ、ものによっては、全部お客様におかしいものは返していくので、船場印刷の都合は関係なく、お客様の都合でチェックしていただけるので、非常に評価が高い。

朝入稿して、船場印刷のほうでも順番に仕事を処理していくが、夕方に処理すると、たまたまエラーが出て夕方返す。ところが相手がもう帰ってしまって、次の日に連絡がいったり、そういう部分がこれで解消されているので、お客様からの評価も非常に高いフローになっている。

このように、顧客満足度を向上させていきながら、社内の効率も上げていく、社内の工数を減らして処理をする量を増やしていくことで、非常に上手に使われている会社である。

校正も、もちろんInSiteでできる。ちなみに、船場印刷の資料の裏側に、船場印刷で刷ったサンプルがある。商工会議所報というものがあるが、これは全くのペーパーレスで、全部InSiteで校正をやりとりしていることで、これもお客様からの評価が非常に高く、上手に使っていただいている。

今話したのは、ただのInSiteの機能で、PrinergyにInSiteを付ければ、ここまではできる。そして、ここからがUnified Workflowのもう1つメリットがある部分だが、Prinergyの大きな機能として、ルールベースオートメーションという、Prinergyの肝になる機能(図4)がある。

 
 
▲図2
 
▲図3
 
▲図4
 

ルールベースオートメーション

ルールベースオートメーションを説明するが、まず、これを端末の画面だと思ってもらいたい。イベント、フロー、アクションとあるが、イベントは「ジョブが作成されたら」、「下版したら」、何か起こったらということが全部アイコンになって並んでいる。

真ん中にフローというのがあるが、これはタイマーで、「30日たったら」とか、フィルターとか、「ファイルネーム1が何々だったら」など、条件分岐を付けたりする。最後にアクション、「何々しなさい」というのが、全部アイコンになって並んでいる。これを端末の上に、自社のフローに合った形で全部並べていく。これによってさまざまな自動化を組むことができる。

例えば、下版が完了して30日たったら、ジョブネームで判断して、「チラシの場合001というファイルネームを付ける」などと社内で決めておき、「チラシの仕事なら30日たったら捨ててもいい」とか、チラシ以外のものに関しては、「再版オーダーが来るからPrinergyのサーバの中にそのまま保存しておこう」とか、「再販オーダーはないが2年くらいデータを置いておかなくてはいけないものだから、別のサーバにPrinergyからバックアップをとっておこう」など、こういうフローを1つ作れば、サーバがいっぱいになって、掃除をする必要がなくなる。

こういったルールをいくらでも作れるので、例えばシステム全体にかければシステム全体に効くし、1つ1つのテンプレートの仕事に付けておけば、決まった定形の仕事に関して、「今回はこれを使おう」と、それに合ったルールを立てておけば、いちいちルールを作る必要もない。これも非常に工数を減らせるので、このようなフローを組んでいただいている。

ルールベースオートメーションとInSiteを組み合わせて使うことによって、例えばこんなことができる。左側はPrinergyで操作する製版側の画面(図5)である。たくさんページ数が並んでいて、現状、校正依頼をしている。右側はInSiteである。クライアントや、制作会社が見ている画面である。

例えばクライアントが「このページは承認でいい」ので「承認」を押すと、製版のほうも「校了」というようにステータスが変わる。これだけなら「ああ、変わった」で終わりだが、これをトリガーに先ほどのルールベースオートメーションが動いて、例えば「Webの承認が下りたら自動的にプルーフを出力する」、「揃った台から下版する」など、そういうことを自由に組んでいける。

今の「Webの承認が下りたら揃った台からプルーフを出力する」というルールを組もうとする際、非常に難しいわけではない。この2行だけを作ってジョブにセットすれば、その仕事に関しては、夜のうちにクライアントが「校了」を押してくれると、印刷会社では朝会社に行くと面付けが揃ったプルーフが出ているというフローを、1つ例としては組むことができる。

こういったフローを自由に幾つでも組める。お客様が使われているところを拝見すると、日々の細かい仕事を、とりあえずこの部分は自動化、この部分は自動化というふうに組んでいき、こことここがくっつけられるとなれば、ここを2行にしてしまえばいいだけである。こんな感じで、点と点がだんだん広がっていくようなフローを組まれているケースが多い。

あまり複雑に分岐、分岐とやっていくと大変なので、結構現実的にどんどん作っていただいているのがまず1つ、Prinergyの中のルールベースオートメーション機能と、InSiteを使って効率化できるポイントである。

今のやり方で、日々の仕事の工数をできるだけ減らしていただき、処理できる量を増やしたりている、あとはミスが減るとよく言われる。こういったことを推進していただいた後に、今度はどうやって小ロットの仕事を集めるかになると思う。

 

 
▲図5
 
▲図6

 

小ロットの受注を拡大する

海外の事例で、コダックのユーザ会にクライアントと印刷会社が来られて、双方のメリットを聞いたのでその例をご紹介をしたい。これはWhirlwind Print社という従業員約140名のオーストラリアの印刷会社(図6)である。

今日紹介するクライアントは、ブーストジュースバーというフランチャイズチェーンである。日本でも、駅の近くなどに約1坪でジューサーミキサーを置いて、1杯200円くらいでミックスジュースやイチゴジュースなど売っている店があるが、そんな感じで、オーストラリアでスムージーなどを売っている。これは顧客満足度を向上することにより小ロットの受注を集めている例である。

まず、クライアントのブーストジュースバーは、オーストラリア全土に200店舗フランチャイズ展開している。フランチャイズなので、各店舗の店長はオーナーになる。Whirlwind Print社が提案する前までは、各店舗から、例えばシドニー店なら「シドニー店という名前の入ったスタンプカードを100枚ください」とか、「イチゴポスターを3枚ください」とか、「ダーウィン店ですけどスタンプカードを100枚ください」とか、フランチャイズ本部にばらばらに入ってきていた。

印刷発注者のマーケティング担当に受注が入り、ある程度まとめて制作をし、校正を出して、各店舗の店長に見てもらっていた。オーナー自身がお金を払うので、やはり校正を見なければいけない。校正を見てもらい納品するというと、大体1週間以上かかっていた。

もともとブーストジュースバーはWhirlwind Print社の既存のクライアントだった。営業の人がInSiteで営業効率を上げて、人にしかできないコンサルティング営業、「今困っていることはありませんか」というように時間を作って引き出したところ、「発注も困るが、この辺の店長が待てなくて隣の印刷会社に勝手に出してしまうのが困る」ということであった。

例えば、キャンベラのお店の周りだけ、見たこともないタダ券が出回るようなことがあり、「ブランドイメージを確保できないことに一番困っている」と言われたのである。

そこで、Whirlwind Print社で、「そういうことがなくなるような仕組みを提案する」と言って提案したのが、図6である。これは実際にWhirlwind Print社がブーストジュースバーに出しているInSiteの画面である。InSiteの画面は、同じシステムだが、トップページを変えることができるので、これはブーストジュースバー専用のホームページという感じで作ってある。

各店長がログインしてくると、ブーストジュースバーの販促品全般が見えてくる。最近「コンテンツの本棚をWeb上に作ってあげられる」とよく言われて、結構クライアントに喜ばれたりしている。
全部コンテンツが並んでいるので、店長は欲しいものを選ぶことができる。商品が並んでいるので、例えばこのブーストVIBカードという、「スタンプが溜まったのでいつまでは何%引きにする」というカードを作りたいなら押す。

Windowsマシンで、特に専用のソフトは全く入れていない。InternetExplorerとJAVAが動けば大丈夫である。ストアネーム、有効期限、そして何%オフにするかというポイントがある。各店舗のオーナーは、自分のお店の名前を打ち込んでいく。
これで確実に校正を見てもらい、有効期限やパーセンテージを入れてもらい、これでOKだったら「カートに追加」として発注すれば、今まで1週間待ちで隣に出していたものが、目の前ですぐに確認できるので、「これくらい簡単なことなら使える」ということで、実際に利用されているサイトである。

こういう形で1回営業が取ってしまえば、もともと仕組みはやっているので営業活動としてはいちいち注文を取りに行く必要がなくなる。実際にこれで非常に評価をいただいた。

こうなると、印刷の仕事を取りに行くというよりは仕組みの提案をしにいくという感じである。このクライアントの場合はこれが評価いただいて全部採用されたので、クライアントとしてはブランドイメージが守れるところで顧客満足度を上げられたし、Whirlwind Print社に関してはオーストラリア全土の、外に出ていた印刷物を全部囲い込むことができたので、1社の受注額を上げることができた。

Whirlwind Print社はこれに味を占めて、フランチャイズ協会に加盟して名簿をゲットして、他の印刷会社とコンペになった時、同じような悩みがあるだろう考えて、簡単にトップページを作って、中に合いそうなコンテンツをある程度デモで作っていく。
コンペになって、他社が「うちは8色機があって、どのくらいの納期でどのくらいの単価で持ってこられる」と言っているとき、隣で、「こういう悩み事があるのではないか。うちはこういうシステムを作ってあるので、是非使ってほしい」というプレゼンをすると、全然内容が違うので結構新規が取りやすいという話をされていた。
営業の効率を上げて、仕組みの提案を持っていって、小ロットをかき集めてくるという1つの例ではないか。これはInSiteのWeb受注の部分を使って運用されている例である。

実はWeb受発注は、いただいた後そのままPrinergyで処理されるので、そこからPOD機に出したり、面付けをしてCTPに出力するのも、結局ワンストップである。少し極端な話だが、POD機だと紙を積み替えたりすることがあって、どこかで関所を作らなければいけないが、お客様から発注が来るとプリントアウトできる仕組みが組めているので、社内のフローも工数が減っていることになる。(図7)
 


 
▲図7

 

小ロットで利益を上げる

東和印刷は、東大阪の非常に印刷会社がたくさんあるような地域にある。これは大阪ならではのチラシの仕事が非常に多い印刷会社で、非常に効率化されている(図8)。

Unified Workflowを活用していただいて、全体の最適化を行うことで工数を減らして、利益確保に一番重点を置いている会社である。ここではMISとしてプリントサピエンスを使っている。

まず、営業が仕事を持って帰って、プリントサピエンスで指令を出すが、伝票を起こすと、そのまま自動的にPrinergyにジョブができるように設定されている。ジョブができたら、伝票番号、受注番号が営業のほうに返るので、営業は受注番号とデータを生産管理のほうにおろす。

生産管理の人はMISのほうで機械取りをして指示書を作成し、製版におろす。ここは普通だが、次に製版部は何をするかというと、来たデータのファイルネームを変えるだけである。作業はこれだけである。

何が起こるかだが、印刷機が、輪転1号機なら001番、菊全8色機なら003番などが決められている。サイズがB1なら001、面付け中綴じだったら001、カラーがどうだとか、記号化している。指示書を見ればその記号がわかるので、製版部でしている仕事は、ファイルネームを002_003_002_002といった形に変えてPrinergyに投げることだけである。

そうすると、ルールベースオートメーションが動き出し、条件分岐をしていき、エラーのものだけをメールで返しストップをする、エラーがかからなかった場合は当然そのまま自動でルールベースオートメーションが動いて、製版処理が行われて、下版直前でストップする。そして刷版の方が板を入れて流すというフローを組まれている。

東和印刷は、Web to PrintのInSiteは2005年頃には導入されて、InSiteも活用されている。先ほど製版のほうで名前を付けるという話をしたが、これをお客様に言ってしまう。生産管理部で受注番号の伝票を取った後、お客様に「今回はこのファイルネームで入稿してください」と伝える。

そうすると、お客様はファイルネームを書き換えて、InSite経由で入稿する。あとは先ほどの話で、そのデータがPrinergyに入ってくるので、そのまま処理をして、同じように下版前にストップ、何か問題があればお客様と東和印刷にメールが返るというようなワークフローを組まれている。

お客様にとっては、チラシの仕事が多いのでできるだけ入稿の時間を遅くしたいというニーズがある。今まではデータチェックする必要があり、その分を逆算して原稿期限を決めていたが、来たデータがこれを通ったものに関しては全部そのまま刷れるので、入稿時間をずらしてあげた。これによって非常にお客様にメリットを感じていただいた。

私もヒアリングしていて、「こんなことをお客様にやっていただけるのか」と思ったが、常にお客様のメリットをご紹介しながら、こういうフローを一緒に使って、お互いに効率よく仕事を回していくということを実践されている。

東和印刷は、このフローをまずベースで組んでいて、この仕組みで年賀状印刷をやっている。年賀状も非常に小ロットである。先ほどのルールを使って、入ってくるデータをPrinergyで全部処理している。
(図9)(図10)(図11)(図12)

 

 
▲図8

 
▲図9

 
▲図10
 
▲図11
 
▲図12
最後に

現在コダックのCTP、Trendsetterと、デジタル印刷機のNexPress、あとはコニカミノルタのPagemaster2台とHPのインクジェットの計5台を、1台のPrinergyで全部処理している。まさにUnified Workflow、ワークフローを統合して、間の工数を減らして利益を確保していただいているという、1つの非常にわかりやすい例として紹介した。

コダックも、今までは「こういう機能があってこういうふうに使えるので買ってください」と言っていたが、最近はお客様がどういうフローを組みたいのか、クライアントにどういう提案をしたいのかも含めて、InSiteをこういうふうに使えないかなど、印刷会社と一緒に考えてフローを作っていく。
もしくは、Prinergyの中で仕事を自動化していく、「この仕事なら、こういうふうにPrinergyのルールベースを組んだら、これだけ工数が減らせるのではないか」というふうに話をして一緒に組んでいく、MarketMoverというサービスを始めた。

デバイスを販売するだけでは、なかなか皆様にメリットを感じていただけるところまでいかないが、そういったところも今後は一緒にやらせていただく。IGASでは佐川印刷の例も紹介したが、多分20人くらい人が必要なところを、ルールベースで2人で処理しているという話をしていただいた。

こういったコンサルティングサービスも、今後はやらせていただきたい。皆様とこれから仕事が小ロット化していく中で、一緒に考えて前に進んでいきたい。

郡司:もともと欧米のワークフローは、PDFなどで吐き出して、だめなら突っ返す感じでやっていた。しかし、最近、PIAも大分言い回しが変わってきて、「それを直すのがソリューションだ」、「そういうのをビジネスにしなければだめだ」などと言っている。全然言っていることが違う。
Prinergyは、もともとのコンセプトは、最初のプレフライトで「これはだめ」とはじいたイメージがあったが、今は結構直前で直しも可能になっているのか。

三浦氏:プレフライトはあくまでチェックするだけで、本当にだめなら、先ほどバッテンが入っていたが、あれがPDFにそのまま入ってしまう。そうではなくて、このくらいなら通そうというものに関しては、バッテンを入れないで通すこともできる。

2011年11月10日TG研究会「小ロットを前提にした印刷ワークフロー」より(文責編集)

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