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本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

業績と戦略の相関、高収益印刷会社は何を考えているか 2014年8月発刊「JAGAT印刷産業経営動向調査2014」レポートから

掲載日: 2014年08月11日

業界の統計データを見ても、なぜそのような結果になったのかはわからない。業績と戦略の相関がわかれば、どのような戦略が印刷会社の業績向上に有効かわかる。良い会社は何を考えているか。現在まとまりつつある「JAGAT印刷産業経営動向調査2014」レポートから。

たとえば、「最も妥当と考える経営スタンス」はどれか

印刷会社の多くは事業領域の再定義を迫られている。貴社なら現在どれで、将来はどれを選ぶだろうか。
(1)印刷専業  (印刷のものづくりに特化)
(2)印刷ワンストップサービス  (印刷を軸に付帯サービスを一括提供)
(3)情報加工・発信業  (デジタル含む情報加工・発信全般を扱う)
(4)プロモーション・マーケティング支援  (宣伝・販促・広告活動を支援)
(5)コミュニケーション支援  (コミュニケーション活動全般の支援)
(6)ソリューションプロバイダー  (顧客の課題解決をビジネスにする)
(7)BPO・業務受託  (印刷関連以外の周辺業務まで受託)

判断一つで業績が変わる、事業領域をどう定義するか

この設問は今回が2回目であり、2回の調査を通じて一つの方向が見えてきた。印刷会社である以上、事業領域において印刷を重視せざるを得ないのは仕方ないが、縮小する印刷を重視し過ぎる経営スタンスでは縮小均衡は避けにくい。どのような経営スタンスを選ぶと収益性が良くなり、または成長性が高まるのか。このようなスタンスの選択による業績の違いは知っておいて、自社の今後の戦略立案に活かすようにしたい。

直接的に考えるより、構造的に考える会社のほうが業績優位

たとえば経営効率の改善を考える場合、回答の最多は例年「稼働率の向上」なのであるが、昨年まで業績の最良は3年連続で「精度の高い経営・投資計画の立案体制」を最重視した印刷会社であった。また、過去の調査から、「情報共有」を最重視する印刷会社の業績も安定して高くなる傾向にあることがわかっている。つまり調査結果からは、稼働率を直接的に改善しようと考えるより、経営計画そのものや情報共有のあり方など、会社経営を構造的に見直そうと考える印刷会社の業績の方が平均的に高くなる傾向にあるとわかる。 

数字の調査結果だけを見てもわからない

JAGATは30数年に渡り印刷会社の経営数値を集計、発表してきた。このような継続性ある調査統計は客観データを整備するうえで有意義なことだ。しかし、経営数値をいくら一生懸命に集計しても、なぜそのような経営数値になったかはわからない。業績とは経営の結果であり、集計結果だけを見ても単に結果を見つめているだけに過ぎない。なぜそのような業績になったかを知るには、印刷会社の日々の企業行動を知る必要がある。

何をどのように考えると業績に結びつくか、60の戦略設問から知る

企業行動を規定するのは企業の戦略であり、経営者の思考である。行動は戦略に従う。それならば、戦略と業績の両方を調べれば、戦略・行動と業績の相関がわかるだろう。「JAGAT印刷産業経営動向調査」では、特にこの7回、印刷会社の戦略と業績の相関を調べる視点で調査設計した。調査結果からは、業績の良い印刷会社・経営者に共通した思考や戦略が浮かび上がってくる。つまり、どのような思考や戦略をとれば業績が良くなるかである。

高収益印刷会社のかたちを考える

こうして業績良好社の戦略や思考を調べていくと、業績良好社の形が浮かび上がってくる。平均的な会社と比べて、1人当り売上高は変わらないが、加工高比率が高く、ここで最終利益率の大きな差が生まれる。材料費比率と外注比率が低く加工高が多い。従業員の平均年齢は若いが、1人当り人件費や教育費は高い。人材への投資が活発で、業態はサービス業・情報業的である、など。このように模範となる会社の手法を研究して取り入れることをベンチマークという。自社の強みは伸ばし、他社の参考になる部分は採用すればよい。

他社は、業績良好な会社は、どのように考えているかを知る

本調査は印刷会社の経営を(1)業績、(2)戦略、(3)設備の3点から総合的に捉えている。本稿では(2)戦略面の「経営効率」にのみ触れたが、報告書では事業領域・工程・財務・顧客・生産・営業・マーケティング・人材・教育・投資・価格といったあらゆる点から印刷会社を調べている。業績の原因の原因となる真因がより具体的になれば、より業績向上に役立つ。景気やメディア環境の先行きは不透明な現在のような時は、少しでも客観的な手がかりを増やしてより良い経営判断をするように心がけたい。

  (JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 藤井建人)

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「JAGAT印刷産業経営動向調査2014 」

体裁:A4版、104ページ
定価10,500円(税込)、JAGAT会員特別価格5,250円(税込)
発行:公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部
購入:お申込みはこちら

【構成】
1.2013年度の印刷会社の経営動向
 
(1)経営動向の概況 
    ・印刷会社経営の最新状況
    ・業績良好な印刷会社の経営構造  

 (2)経営動向指標
    ・貸借対照表、損益計算書
    ・生産性、収益性、安全性
    ・人的資源(平均年齢・部門別人員構成比・教育研修費)
    ・1人当り指標(売上高・加工高・人件費・機械装置額等)

2.印刷会社の業績と経営戦略
 (1)業績と経営戦略の概況
    ・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
    ・業績良好な印刷会社の戦略 
 (2)経営戦略
    ・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
    ・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
    ・人材教育(手法・対象者・分野)

3.印刷会社の設備動向

 (1)設備動向の概況
    ・設備投資のスタンスと意向
    ・工程の保有・強化・縮小意向
 (2)設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
    ・枚葉機
    ・輪転機
    ・デジタル機等
 (3)新技術・新商品/サービスの導入意向
    ・クロスメディア展開
    ・導入状況と満足度
 (4)DTP環境
    ・PCの種類と台数
    ・アプリケーションの種類とバージョン
    ・データの入稿形態

4.印刷会社の経営指標

 (1)セグメント別の経営指標
    ・データ:損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
    ・セグメント:2地域別、従業員6規模別、業種業態6分類別、オフ輪の有無別
 (2)月次の各種前年比推移

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【印刷産業経営力調査の概要】
概要:印刷会社135社から調査票を集計
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2014年1月~3月

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■関連レポート
印刷会社の経営と戦略、そして設備と投資スタンス2014

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