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環境負荷が社会問題として取ざたされて久しいが、後加工に関わる業界でもさまざまな取り組みがなされている。
この10年間で、ISOを始めいろいろなグリーン基準が制度化されてから環境問題に対する意識、取り組み姿勢が大きく変わってきた。これが印刷業界だけではなく顧客も含めいろいろなものを動かす原動力になっている。
グリーン基準における製本工程への適用範囲は狭い。難細裂化EVA系ホットメルトの認定がスタートしたのは2003年だ。ホットメルトを製本用に販売している糊メーカーは、2003年の早い段階でエコ認証を取得している。難細裂化EVA系ホットメルトは多くの製本工場で使用されている。PURも国内でスタートしたのは2000年前後である。
難細裂化EVA系ホットメルトについては、エコマークの認証基準が整備されてきたころに、各糊メーカーが、古紙再生促進センター(日印産連委託先)の試験方法に基づく試験を静岡県富士工業技術支援センターに依頼、その試験結果を受けて日本接着剤工業会が認定し、日印産連がリサイクル対応型印刷資材として公表している。ここでの基準は糊自体をリサイクルすることではなく、用紙をリサイクルするための適性の問題である。中綴じなどの針金は問題ない。
製本会社としては環境対応に対する顧客の要求があるかないかによって取り組み方が違う。環境系認証その他の取得が早いのは商印関係で、出版に関してはそれほどでもないようだ。
表面加工業界では、2004年3月に日印産連のグリーン基準に準拠した表面加工業のグリーン基準、「印刷物光沢加工サービス」グリーン基準が制定されている。これは、光沢業界が循環型経済社会において印刷産業界の一員として社会的責任を果たし、地球環境保全を進めるために、業界自らの指針として策定したものである。この基準は、東京都光沢化工紙協同組合(全日本光沢化工紙協同組合連合会)傘下の各企業、各事業所の印刷物光沢加工サービスに適用される。
表面加工には光沢コート、プレスコート、ラミネート、PP貼りなどさまざまな加工方法がある。この業界では、光化学スモッグの時代から大気汚染の問題があるため、独自の基準を作らなければという動きがあった。ダイオキシン問題についてはダイオキシン対策法が制定されてから、塩素系樹脂を使用しないこともあって激減し解決している。もし、塩素系樹脂を使用したものを焼却しても、焼却炉が800℃以上で燃やしていれば問題ない。
環境への負荷という観点から産業を分類すると、廃棄物排出型・エネルギー使用型・化学物質による公害型と大きく3つに分けられる。
後加工工程は刷り本を製品に仕上げるという流れの中で接着剤・フィルム・塗料・包装材料・電気や水や燃料を使用し、無形の労働力やノウハウをもって最終的に製品化する。ここで製品にならないものはヤレ紙・プラごみ・公害の元となるVOC・悪臭・振動・騒音として排出されている。印刷会社・製本会社の環境問題は材料関係もあるが、全体から見ると廃棄物の問題が主であるから廃棄物排出型と言える。
2001年に循環型社会の構築に向けた印刷業界の自主基準である「オフセット印刷サービスグリーン基準」が日印産連によって制定され、2006年に改定されて現在の基準になった。その中には「環境負荷低減活動を行う際のグリーン原則」と「グリーン原則の具体的なグリーン基準」が定められている。前者は、購入資材や工程、印刷の取り組み方についての原則である。後者は、(1)高度で最先端を行っている、(2)普通、(3)最低限クリアしている、という水準が設けられている。こうした原則と基準を両方考えていかなくてはいけないことになる。
このグリーン基準に基づいて工場と製品を認証する制度としてグリーンプリンティング認証制度があるが、このほかにもさまざまな認証制度がある。印刷会社としてはこうした認証を取得してエコビジネスに取り組みたいという意識が非常に強い。それを結果的に良いほうに結び付けてビジネスに広げている。一方で印刷関連の各団体が独自で認証制度を制定した結果、制度が多くなり力が分散される傾向にあるのも事実だ。こうしたことをうまく統制できれば、顧客にもより分かりやすいものになるし、世界でも通用するグリーン基準になるだろう。こうした基準の目的は究極のところ世の中の無駄を極力省くことと言える。
(『JAGAT info』2009年3月号より)