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受け手との関係に応じたストーリーのバリアブル印刷があれば、マス広告に対して非常に有利なものになるが、大量タレ流しではマスメディアとともに衰退する。
デジタルのコミュニケーションが増える中でもDMは分野によってはさらに有効に活用されようとしている紙メディアである。広告・販促に関するアンケートでもDMを減らすところと増やすところが相半ばするような状態で、DM全体では微増であったとしても、その内実は大きく変わりつつあるものと考えられる。
郵便事業株式会社が扱う国内郵便物は年間約250億通で、そのうちの40~50億通がDMであるという。ではDMの定義は何だろうか? 日本郵便DMファクトリーというサイト には、『皆さんのところにも、普段からたくさんのDMが届いていると思います。ではDMとは何なのでしょう。ただの広告とは少し違います。DMは広告であると同時に「お手紙」だということ。DMはそもそも「お手紙」であり「私信」であり「ラブレター」なのです。そう考えると、いろいろ面白いことに気がつきます。……』と意味ありげな言い方をしている。
実はこのサイトは「DMの基礎知識を身につける!」というタイトルでDMの作り方を説明していて、DM制作に関するいろいろな情報がある。一般にDMのイメージは企業が商品やサービスの理解をあるターゲット層にしてもらいたい時に行うもので、好印象を得るためにクリエイティブもコピーも練るとか凝るものを考えがちだ。このサイトのサンプルもそういうトーンである。しかし他方ではDMの半数が銀行やクレジットカード会社だったり、通信販売・通信教育企業であるとも書いてある。これらの主体が広告であっても、通知のようなものも多く含まれる。
また別のところには、『「お客様」といっても大きく3種類に分けられます。■まだ一度も利用のない人 ■かつて、少なくとも1回は利用したお客様 ■いつも利用する「お得意様」』という区分があり、初対面の時が着飾ったDMで、お得意様には諸通知も多く送られるものといえるだろう。月刊誌「プリバリ印」で誌上DM診断コーナーを担当されている大槻陽一氏のお話では、DM=宛名広告であって、「あなた」宛にコピーを考えることが第一なので、相手との関係によって表現は変えるべきであるとのことだった。
すでに出来上がっている顧客との関係からみて不適切なコピーを送りつけることは、せっかく築いてきた関係を冷めさせることになる。つまり相手を意識して着飾って金をかけたDMで最初の購入をとりつけても、あとの無神経な「通知」で顧客に悪印象与えてしまうと元の木阿弥であるが、そのようなDMはありがちであるという。販促といえば「効くDM」に意識が行きがちだが、その裏で「マイナスのDM」がないように気をつけることが必要だ。これらの発送元は営業ではなく別部門であることが多いが、受け取った方から見ると部門は関係なく、その会社が自分をどう取り扱っているかという問題である。
さてDMの種類と多さという点で「通知」やトランザクションの比重がかなりあることからすると、改善するべきは相手との関係にふさわしい「お手紙」的コピーをどう自動的に生成するかである。営業マンのように顧客自身に面識のある人が、データベースに一言書き込んでおくと、それがうまく埋め込まれてDMになるという半自動の方法もあるだろう。
しかしそれ以前に何万~何十万の顧客データの管理がふさわしくできていないと、不適切なコピーが出てしまうかもしれない。今までのCRMで顧客情報をデータベース化するというのは、顧客自身の属性、つまり年齢・男女とか職業とかであったが、コミュニケーションの視点に立って相手とのコンタクト歴や過去の関係のプラス面マイナス面などはうまく情報化されていなかったように思う。
よくバリアブル印刷のトランスプロモやDMを受け取った方が、自分の名前の連呼だけが目立って、自分と関係ない中身を無理やりくっつけてあったために、違和感を覚えたという話を聞く。つまりDMへの個人名の差込印刷のような技術がありさえすれば相手の心に響くというものではなくて、相手ごとにストーリーを変え、コピーも変えるようなバリアブル印刷がなければDMの「お手紙」的な役割は果たせないだろう。相手とのコンタクト歴に応じたストーリーの切り替えができるようなバリアブル印刷があれば、マス広告に対して非常に有利なものになる。さもなければマスメディアの衰退の後追いをするDMになってしまうかもしれない。
2009.2 ALPS協議会
【関連情報】 新雑誌「プリバリ印[イン]」創刊!記念セミナー
「DM(ダイレクトメール)を見直す 」 2009年03月27日(金) 14:00-16:30