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色の多原色って?

掲載日: 2010年08月15日

光の3原色、インキの3原色と従来慣れ親しんできたが、最近テレビのCMなどでは4原色の液晶テレビなるものが騒がれ話題になっている。多原色とは、改めてどういったことなのだろうか?

原色には、光の3原色と色材の3原色がある。ある色を表現しようとする時、いくつかの元となる色(色材・光源)を足し合わせて目的の色を作る。この足し合わせる元の色が原色と称されている。光の3原色は、R(赤)・G(緑)・B(青)で、光を混ぜれば明るさが増し、RGBの全部の光を混ぜると白色になる。一方、色材(インキ)の3原色はC(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)で、インキを混ぜれば明るさは減り、CMYのインキを重ねると黒になる。印刷の場合では、これに濃度の補足や階調再現の向上の目的としでBk(ブラック)インキが加えられている。

まずは、物が認識できるまで

眼で見て物を認識するまでの流れを簡単に説明すると、光が対象物から反射して眼に入り、その刺激の情報が脳へ送られて、色の識別になる。カメラのシステムで比較するとカメラのレンズに相当する水晶体と角膜によって焦点距離を調節し、カメラの絞りに相当する虹彩によって、入ってくる光の量を調節する。さらに、写真フィルムに相当する網膜の視細胞によって、光(色)を感じる。網膜では、眼に入ってきた光が色情報に変換され、光表面層を通過して、感光性を持つ視細胞に至る。変換された明暗や色信号の情報は、視交差で組み替えられて、外側膝状体を通じて大脳に送られ、情報処理され物として認識される。

感光性をもつ視細胞には、比較的暗い所で主に明暗だけを知覚する杆体(かんたい)と、比較的明るい所でR(赤)・G(緑)・B(青)の刺激に反応する錐体(すいたい)の2種類がある。それぞれの錐体の感度は、R(赤)・G(緑)・B(青)相当の感度特性によってS錐体値、M錐体値、L錐体値があり、S錐体値がBに当たり、M錐体値がGに、L錐体値がRに相当するとされている。正確に測定できるようになり、M錐体値とL錐体値のカーブは非常に近似しており、従来考えられていたRGB感度とS錐体値、M錐体値、L錐体値の感度若干開きがあるのでRGBと全く一致するわけではない。CIEで用いられているR原色の基準光である700nm付近ではL錐体値の感度もピークから下がり気味で、B原色の光435.8nmとG原色の光546.1nmとは異なっている。3つの種類の色の細胞によって、光の刺激を分解し、その信号を脳に送っている。

杆体は、明るいところでは殆んど働かず、暗い環境で、弱い明暗でも検出できる高感度な視細胞である。色の識別はあまり関与しないで、505 nmあたりに感度のピークがあり、薄明視(夕暮れ)などの状況で全体の感度調整するために赤の変わりをして感度を補っている。

こうした流れで印刷物や液晶テレビを見て その内容を認識している。

4原色の液晶テレビ?

光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)に、Y(黄、Bの補色)を加えたフィルターを使ったのが、4原色の液晶テレビである。なぜ、Y信号か?有効な理由は2つあり、1つは、黄色は人の目に明るく見える性質があるということ。2つには、白色LEDバックライトの光の波長には、黄色領域の光エネルギーが高いという特性があり、その結果、3原色表示に比べ、少ない電力でも映像を明るく表示できるとされている。さらに放送信号規格によって制限され十分に表現できていなかった黄色、シアンの色域に注目し、黄色を追加することで、RGBYの4色での再現範囲が設計が可能となり、RGBの3原色表示だけでは不十分だった自然の色の再現力をより高めるとされている。

多原色技術と世界初の光配向技術(「配向膜」という高分子がついた膜を利用しこの高分子にそって液晶分子の向きが揃い、高分子の向きは光の当て方によって自在に制御)を組み合わせた液晶パネルとLEDバックライトで高画質化された4原色の液晶テレビが実現されている。

従来の3原色では難しかった黄色や金色、エメラルドグリーンなどを鮮やかに再現できるという。色再現性が向上するだけでなく、同時に透過率が20%向上するので従来比1.2倍以上の明るい映像が実現できるとも言われている。4原色の実現で光の透過率を改善、光漏れを低減することができ、黒浮きを押さえコントラストの向上にもつながる。こうした輝度の向上は、今、話題になっている3Dテレビにも大変重要なことである。メガネをかけて3Dを見るとどうしてもメガネ越しの映像であるから、色再現の向上だけにとどまらず明るさ・輝度のアップは極めて重要なことである。今後、液晶テレビの多原色がどのように展開されるのか興味深い。

多色印刷の場合では?

印刷の場合でも、4原色の液晶テレビと同じような考え方で行われてきたのが、多色印刷であると言える。通常の4色印刷で行われているものを5色/6色/7色のプロセスインキ(ヘキサクロム、シックスカラー、スーパーファインカラー、ハイファイ印刷など)などで行い、色再現領域の拡大を目的としている。

ヘキサクロムの場合ではCMYKとオレンジ、グリーンの合計6色のインキである。通常の4色印刷とAdobeRGBの色域での比較では、色再現色域の中で最も領域に差がある部分がグリーン系の部分である。グリーンインキはその部分をより忠実に再現するためのインキの配色である。ヘキサクロムでのインキ構成も、通常の4色印刷のインキにオレンジ、グリーンを単に加えるのだけなく、全体の色再現領域から考えてCMYのインキも通常の4色印刷のインキとは多少異なった色相の構成になっている。こうしてバランスよく全体の色再現領域を設計している。こうした事項は、4原色の液晶テレビでのYフィルターの選択の理由にも通じる。

多色印刷を行うには?

今後の多原色の液晶テレビの動向も気になるところではあるが、印刷での多色印刷について一言。他社との差別化・高品位化が主な印刷の導入目的である。パッケージの印刷では、通常の4色印刷+個々の特色で行われている印刷を多色プロセス印刷で対応して、効率化を図る目的で行われている。

実際のところ、印刷において1色増えるだけでも、印刷条件やコストもしく労力といったものはそれなり費やさなければならないことは周知のことである。多色になれば、色の管理も厳しくなるので標準印刷の手法なり考え方が十分に理解されていることが必要である。

大事なことは、それに見合った仕事があるのかどうか、それによって高品位化、差別化が図れるのかどうかを見極めることである。特にそのコンテンツが多色印刷を行って十分効果のある色域を持っているのか、また必要なのかも十分に考えていかなくてならない。

(http://www.sharp.co.jp/aquos/より一部分参照)
(眼・色・光 より一部参照)

関連情報

色評価士検定

(資格制度事務局)

 

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