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印刷コストに響くのは紙代、インキ代よりもPS版のコストやジョブごとの手間暇(ジョブごとのRIPや設定)なので、異なる仕事をひとつのジョブにまとめてしてしまえば、大きなコスト削減になる。
最近ギャンギングという言葉をよく聞くようになった。異種多面付けという面付けの一種である。面付けがページ物を基本としているのに対して、クライアントはバラバラ、印刷物の種類もバラバラなものを面付けしてコストダウンしようというものであり、これをギャンギングと呼んでいる。
ギャンギングという言葉は、印刷業界では最初スキャナー関係で使われていた言葉だった。卒業アルバムなどの集合写真を作成するのに、倍率を揃えた反射原稿をレイアウトして一発で分解すればレイアウト済の集合写真が分解されるというアイデアだったのだ。
アルバム業界では実際にかなり多用されていた。それをギャングスキャンと呼び、DTP などのない時代には非常に効率的なシステムだった。切り抜きも反射原稿自体を切り抜いてマイラーシートに貼ってレイアウトし、反射光源と透過原稿を両方共に点灯してスキャンすれば、マイラーシート部分は切り抜きマスクのように黒化して、製版作業も効率よくできるという離れ業だ。一昔前の卒業アルバムは、このギャングスキャンを多用して地紋との合成等切り抜き合成をしていたはずである。
もちろんセットアップも1点ごとではなく、まとめてやるので、プリントする場合に調子は揃えておく必要がある。これは印刷のギャンギングでも言えることで、ギャンギングができる最低条件として「納期が揃っていること」「紙が同様なこと」「インキ(色数)が同じこと」「印刷枚数が似通っていること(ロット)」「印刷条件が同じであること」が必要となる。印刷条件もJapan Color 等の標準印刷規準を前提に成り立つのであり、ジョブによってインキ調整を行うことは基本的にしないのが常識である。
逆説的に言えば印刷条件を固定するので、印刷の色はむしろ安定し、印刷の工業製品化は進むこととなる。世界中の印刷産業はこちらに向かっており、紙の種類等も印刷標準規格で認定されているものに集約されつつある。
前述した条件をまとめて一つのグループとするのだが、絵柄の種類や色でグループを分けたり、通し方向を考えたり、面付け位置を考慮したりしているのだが、これを判断するのは高度な知識やテクニックが必要で、これを人のスキルに頼るのではなく自動的に行うのがオートギャンギングと呼ばれるソフトウエアである。納期・印刷枚数・紙種等を考慮し、色の似通ったジョブを近くに配置するようにプログラムされている。
最近のワークフローRIPにはこのオートギャンギング機能が備わっているが、その実現度合いには個体差があり、先進的なものはMIS ソフトともリンクしてその経費按分(どれくらい経費がセーブされるか)もキッチリ明示できるものまである。
欧米では日本のオフ輪伸張に対してVLF(ベリーラージフォーマット) 導入が進んだが、そのVLF印刷機を使って10 ジョブ以上ギャンギングして効率を上げることが行われている。超先進的なところではトンボなしで面付けして版面積を稼ぎ、JDF データをはき出して自動断裁するケースまで存在している。JDF を使えばトンボなしも決して夢ではないのだ。
日本でもLED-UVやハイブリッドUVと合わせれば、強力なオンデマンドワークフローが成立する。問題は大事なクライアントの仕事を他所の仕事とまぜこぜでやれるか?という道義的または守秘上の問題が残るが、そういうことを少しでも気にされる場合は、デジタル印刷で処理していくしかないだろう。
(『JAGAT info』2012年3月号より)