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フォトアルバムのビジネスモデルは百家繚乱に

掲載日: 2009年03月29日

ECや、情報共有、SNS、フォトレタッチという、フォトアルバムをブレイクさせた要因に目を向けて次なるビジネスモデルを考えよう。

アメリカでは2008年にフォトアルバムがブレイクした。これは当然ながらデジタルカメラの普及によるものだが、それだけではない。デジタルカメラが急速に普及してアナログカメラと逆転したのは2004年前後だが、同時にネットでの通販が盛んになり、Webでの写真投稿サイト、写真共有サイトが普及し、さらにSNSでインターネット上のコミュニティが活発化したこと、さらにデジタル印刷のカラー品質が非常に向上したことなど、いろいろな要素が絡まって起こったことである。そのためにアメリカの場合はWebToPrintのフォトアルバムへの参入があらゆる分野から興り、ちょっと行き過ぎの感があるくらいだ。

日本でも印刷製版関係者以外でも、写真教室やその修了者がWeb上の写真フォルダを利用できるようにして、そのサービスの延長上にフォトアルバムサービスを結び付けるとか、元DPE業者が始めるなど、多様なサービス展開があるのが今日のフォトアルバムの特徴であって、フォトアルバムの印刷形態からすると小ロット短納期でデジタル印刷にはピッタリの分野のように思えるが、必ずしもデジタル印刷機の用途開発から始まったものではない。

いくらフォトアルバムが盛んになっても、デジタル印刷機の側の主導力は弱く、システム全体からみると「選択」される側なので、市場拡大につれて各社が同じように伸びるとは限らない。フォトアルバムは今後は用途ごとに分化して、そこで生産システムの側にいろいろな要求が起こって、ニッチな分野になるだろう。今はBtoCだけでなく、写真館などを対象にしたBtoBtoCも盛んになるので、デジタル印刷機でビジネスをするところがBtoBに対して業務提案する機会も増えるだろう。

要するにフォトアルバムが日本でもブレイクしそうであるにしても、ただ口をあけてフォトアルバムの仕事が来るのを待っていてるような状況ではなく、どんなデジタル印刷のビジネスモデルを提案するかにかかっている。フォトアルバムやBlog本のようなもののニーズは非常に多くある。しかし誰でもやっていることを起点にしてデジタル印刷のビジネスを考えても、競争の中で強いものにはなり難い。アスカネットが今でも遺影に関するノウハウに投資しているように、原点となるオリジナルなビジネスモデルを持つことが必要だろう。

アメリカでフォトアルバムが一挙に乱戦状態になったと書いたが、ブレイクの先の自分のビジネスを設計しておくことがないと、ただ時代や新機材に翻弄されて投資貧乏で疲弊することは目に見えている。むしろインターネット上のECや、情報共有、SNS、フォトレタッチという、フォトアルバムをブレイクさせた要因の方にもっと目を向けないと、次なるビジネスモデルを見誤ることになるだろう。

テキスト&グラフィックス研究会 会報 Text&Graphics 278号より

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