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ワンストップサービスを考える 記事No.#1584

掲載日: 2009年02月23日

現在、業界では「ワンストップサービス」が「業態変革」のためのキーワードとして叫ばれている。基本コンセプトは「お客様の ために何ができるか」であり、その形にはいくつかの類型が考えられるが、それらはソフトサービス化の一つの形である。全日本印刷工業組合連合会の「経営動 向実態調査結果報告書」によれば、中小印刷企業のソフトサービス売り上げはやっと2%を超えたところだが、この2年急速に拡大してきており、業界各社の努 力は成果を上げつつある。

 

本欄でも紹介したことがあるが、アメリカの印刷業界には「1ドルの印刷の周りに6ドルの仕事、つまり印刷付帯サービスがあ る」という言い方がある。実際に、印刷物を作る前の段階では何のために印刷物を作るかの検討があり、それからコンテンツ作り、デザイン・編集などの前作 業、印刷、後加工、作られた印刷物の物流、さらに販売促進印刷物であればその結果や成果の総括がある。その印刷物での情報発信に合わせて他の印刷物や電子 媒体が組み合わされるならば、それも当然含まれる。さらに、この一連の流れには、それぞれに細かな業務がある。
例えば、チラシであれば、その掲載内容を考えるときには製品売価決定が必要だが、このときには同じような製品で以前に掲載した製品の価格情報を 参照することも行われる。チラシを配布した後には販売成果をチラシの内容と対比する分析も行われるし商品の仕入れ先へのチラシ広告掲載料請求といった業務 を持つクライアントもある。これらは、印刷自体からはかなり離れた仕事だが、チラシの印刷を行うときに扱っているデータをうまく活用することで、そのよう な顧客側の業務の支援、あるいは代行を行うことは可能であり、印刷会社での実施事例もある。

以上のような印刷付帯サービス(Ancillary service)を事業範囲に取り込んで顧客満足向上、売り上げ拡大を目指すのが印刷産業側のソフトサービス化の狙いである。顧客の側から見ると、印刷に 絡めて周辺の仕事もまとめて発注することで全体の費用対効果が上がるならば、それが誰であろうと望むところ、ということでワンストップサービスにつながる ことになる。

ソフトサービスの観点から見たワンストップサービスとは、上記のような各種の印刷につながる仕事をある単位で一括して対応す るということで、いわゆるアウトソーシングの概念に重なる。いずれにしてもポイントは、「個客」の要望に「深く応える」ことで、形は関連する仕事を一つの 括りとして受け、全体の費用対効果向上の成果を出すことであろう。

しかし、現在かなりの印刷会社が考えているワンストップサービスは上記とは異なるという。それは、受注製品の窓口を広げさら に生産機能も広げて応えるという形である。あの印刷会社に頼めばいろいろな印刷物を一括して面倒見てくれるという意味ではワンストップサービスではある。 しかし、これでは生産面での経営効率は悪くならざるを得ないし、「個客」に「深く応える」という要素がなければ単なる「何でも屋」に過ぎず、本来の流れと は逆行するものであろう。

従来、上記のような形を取っていた中堅印刷会社も多かったが、生産に関しては内製する製品を絞り込んで、その製品については 一貫生産体制を持つことで強みを発揮する方向に向かうべきである。一方、顧客側から求められていることはカバーする範囲を「印刷自体」に密着したところに 限定せずに広げることであろう。生産、受注を上記の方向に進めていくと、経営効率の観点から考えればアウトソーシング的な方向に向かうことになるだろう。

ワンストップサービスのもう一つの形として考えられるのが、生産機能をかなり軽くして、ソフト部分(企画や受発注支援)を重 視するものである。規模が小さい印刷会社の場合には、生産強化に投入できる資源はかなり限られる。設備への投入分を優秀な人材に振り向けてソフト力を強化 し、ハード面についてはそれを得意とする中小企業仲間とネットワークを組んだり、生産機能の強い企業への外注をベースにする。ただし、受ける部分が単に印 刷物の部分だけであれば、それは従来ブローカーと呼ばれていた業態である。ワンストップサービスというのならば、印刷の観点だけではなくまさに1ドルの印 刷の周りの6ドルの部分をある範囲まで拡大して、それらを一つのパッケージとして提供することだ。6ドルの範囲のどこをどの範囲まで捉えるか、またどのよ うな形で提供するかによってまさに多様な業態があり得るし、「業態変革」という言葉に見合った大きな変身、メタモル・フォーシスを遂げることになるだろ う。

ちなみに、アメリカでは「Ancillary service」の売上構成比が10%を超えているとのデータがあるが、そこには製本加工も含まれており、日本で言うソフトサービスの範囲の売上構成比 は、日本と変わらない。また、今までの「Ancillary service」という言葉を「Beyond print」と言い換え始めた。「印刷」だけではなく、幅広い範囲の情報に関わる支援サービスを提供していこうというニュアンスを感じるがどうであろう か?

 

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