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広告の伸びよりも、実取引の伸びが大きくなる 記事No.#1581

掲載日: 2009年02月02日

インターネット上のビジネスといえば広告、といわれた時代があった。それは過去の話になりつつある。ちょうど今がその切り替 わりの節目の時代である。インターネットで活躍するところはポータルサイトやSNSやYouTubeのような巨大サイトが目立つ。確かにマスメディア以上 のページビューを稼ぎ出すようになった。むしろマスコミがネット上で後追いをしても追いつかないくらいである。訪問者の多いサイトは広告価値は高い。しか し広告しかネットでは稼げないのだろうか? むしろ広告モデルに頼るよりは、ネット上で何か自分のビジネスをした方がよい状況になりつつある。

 

別の言い方をするとネットに対する投資は「広告ビジネス」ではなく、ビジネスそのものに向かうだろう。人が多く行き来すると ころは広告の場であることは変わりないが、広告とビジネスはセットのようになる。売り上げを誘導するのは広告代理店に依頼する広告や販促が主ではなく、自 社サイト内での他の商品の広告でクロスセル・アップセルが基本になる。それは誰かに考えてもらうべきようなものではなく、そもそもその会社の販売戦略・戦 術を踏襲するものだからだ。

従来の広告業のビジネスはキャンペーンなどで、人々の注目を集め、それによって集中してモノがさばければ、キャンペーンは成 功であったといえた。しかしキャンペーンが終わってしまえば売り上げはダラダラ下がっていき、そしてまた次の年の同じような時期に同じようなキャンペーン をすることになる。それで企業は次第に成長していくのだろうか? 今はNoである。この雑誌不況の時でも売れる雑誌はあるが、キャンペーンで売れたような 話は聞いたことがない。もしキャンペーンという方法が有効ならば、それで景気回復でも、財政改革でも、少子高齢化対策でもしてみたらいいのではないか。つ まりキャンペーンはあくまでカンフル剤でしかなく、本質的な改革にはならないのである。

だからプロモーションの達人が今のような土台の変化の時代にはなかなか活躍し難い。むしろビジネスのプロセスを考え直す中 で、広告コミュニケーションを設計するという、逆のアプローチが必要である。それに気づいたクライアントは外部に委託する広告費を半減して、他の開発・改 善に振り向けているのが、今の広告不況の実態である。だから2~3年経って世界の景気が戻ってきたとしても、従来のようなマスメディア広告の復活はないだ ろう。ただしマスメディアが今後ダメになるという意味ではなく、マスプロダクツやオンリーワン製品には有効で、今後デジタル放送の時代には、新たなコンテ ンツと新たな広告というのも考えられる。それにしてもそれを誰が作り出すのかは今まだ予見できない。

2008年末に野村総合研究所が出した、2013年までのネットビジネスなどの市場分析・予測においても、2008年と 2009年でECの伸びが12%、インターネット広告の伸びが11%と逆転していて、2013年までの平均成長率ではECが13.5%、インターネット広 告が7.9%となっている。つまりインターネット広告の伸びは年々鈍化していく予測である。これは広告に特化したビジネスの数字であるので、実際にはいろ いろなところに埋め込まれた広告が減るわけではなく、それらを総計することが困難になるという意味である。クロスセル・アップセルでいえば、販売履歴をコ ンピュータが統計処理して「これを買った人は、こんなものも買っています」と表示するのは、果たして広告なのかどうかを考えて欲しい。

つまりネット上では実際に有効な広告が「広告ビジネス」としてカウントされないようになる。この延長にアフィリエイトもあ る。既存の広告ビジネスを外すことは、これから合言葉のようになっていくだろう。くどいようだが、ネット上で広告が引っ張るビジネスモデルは成り立ちにく くなる。そうではなくて、社内外の情報共有、アフィリエイト(ペイバック)、コラボレーション、会費、利用フィー、いろいろな関係作りや金銭の授受をIT の仕掛けの上で無人で行うような変化が、さまざまなビジネスで展開されるのがeBusinessであり、やっとその時代にさしかかりつつある。

PAGE2009には印刷をeBusinessに改造するヒントがいっぱいあります。

 

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