本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
[若手印刷人リレーエッセイ 4月] 自発的な気づきをベースにした人材育成技法であるコーチングと出会い、起業にまで至る。
わが社の自慢話を少々披露することをお許しください。1年半ほど前に社長就任以来、なるべく実務に携わらないようにして自社分析をしてみました。驚くべきことに16年前から毎年17社以上新規のお客様と取引を開始しておりました。その大部分がお客様の紹介です。とは言え継続できていないお客様もあり、ここ2年は売り上げも減少しております。
外部コンサルの勧めもあって取引中のお客様にヒアリングしたところ、継続的にご発注いただける理由、お客様をご紹介いただいた理由には「仕事が速い、誠意がある、ともに作り上げていく楽しさがある」というようなご回答を数多く頂戴しました。格別にダンピングはしていないので「安い」という回答がないとは考えておりましたが、お客様の細かいご要望に一つひとつ対応してきたからこそと判断できる非常に喜ばしい結果でした。どれほど世の中がデジタル化しようと、人と人との信頼関係がなければ仕事に結び付かないということを改めて認識しました。
新規のお客様が増えることは、営業社員にとっては売り上げが上がるうれしさがある反面、訪問先と社内処理が増加するという苦しみが発生することになります。
営業社員との面接中に、この苦しみが営業社員のモチベーションを下げ、新規取引に二の足を踏むようになってしまうことを教えられました。とは言え、厳しい経営状態の中で新規取引の数に合わせて社員を増やすわけにもいきません。何とかモチベーションが下がらないようにする方法はないかと、研修会や講演会をWebや口コミで探しては、参加させてみましたが、参加した社員の感想はどれもイマイチ!
そんな時に元社員がアメリカNLP協会認定のコーチングトレーナー資格取得を目指して活動中であることを社員から聞いて再会し、コーチングとはどのようなものなのかレクチャーを受けました。日本ではスポーツ界で少々話題になったくらいで、認知度が低く私自身がその内容について何も知らなかったためです。
ご存じない方のためにコーチングを簡単に説明させていただきます。
コーチングとは「(自発的な)気づき」をベースにした人材開発、人材育成のための技法の一つと考えればいいようです。
もともと「コーチ」(COACH)という単語は馬車のことを指しました。馬車が人を目的地に運ぶところから、転じて「クライアントを目標達成(ゴール)へ導く人」を指すようになったそうです。コーチングでは(自発的な)モチベーションを重視し、人が自らの可能性と方向性を見いだし、自ら問題を解決していけるようになる環境(心境)を作り、結果を出していくようになることを目的としています。自発的であるところが重要なポイントです。統一的なやり方を押し付けることはしない。これが一般的な「教育」との一番大きな違いです。あくまで、個人を尊重し、個人の思考と行動とそれに伴った結果出す能力を育てることが目的となっています。手法により、個人(パーソナル)はもちろん、集団(グループ)にも適応できます。人を活性化させ、ビジネスに役立てようというものだそうです。
という内容を説明して社員に勧めてみますと、いかがわしいとか宗教っぽいとかしり込みしておりました。試しに社員一人に強制的に受けさせてみると1回2時間のコーチングを2回受けただけで、周囲がすぐに気がつくほど、表情が生き生きとして、発言もかなりポジティブなものに変わったのです。参加した本人も非常に良かったと喜び、ぜひとも受けてみろと社内で勧誘するほどでした。営業社員は言うに及ばず社員を順番に継続的に受けさせているうちに、社内が明るくなったように感じられます。
縁あったトレーナーに、「日本ではまだまだトレーナーの数も少ない上に、その大部分が個人でコーチングを行っている」と聞かされたのが切っ掛けとなり、当初はトレーナーを育成して、その派遣業をもくろみました。元社員を呼び戻し、マーケティングのためにWebで聴講者を集めて、15名ほどの小規模ながら「人生が変わるセミナー」と題して連続講演会を開催させたところ、途中離脱者もなく、さらには個人コーチングの申込者も現れて、需要が高いと判断しました。トレーナー数人との提携もなり、さらに企業向けの研修企画会社と連動する内諾を得て、コーチングを主業務とする会社を今年3月に登記し、営業を開始しました。某大手金融機関の新入社員研修の一部に組み込まれることも決定し、初年度何とか採算ベースに乗せられそうです。
当然コーチングに関わる資料のデザインや印刷を自社でこなし、さらにはコーチングのクライアントから印刷物の引き合いも発生して、本業との相乗効果も上がり始めております。
個人的に興味を持たれた方、また社内研修などでお困りの方、一度体験されてはいかがでしょうか? 私または弊社金城(かねしろ)までお問い合わせください。
自社コマーシャルに終始し大変失礼いたしました。
保木俊彦(やすき・としひこ)。株式会社ヤスキ代表取締役社長、1962年3月26日生、東京都出身。趣味は旅行、麻雀。
株式会社ヤスキ
1990年有限会社ヤスキ印刷所から独立。主に商業印刷物。企画、ディレクション、デザイン、DTP。