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クロスメディア力が問われる通信販売

掲載日: 2009年04月25日

メディアごとの個別の特性を熟知して、また組み合わせた全体を俯瞰できるようなエキスパートがこれから活躍する。

今日では新聞広告が激減する中で通信販売の広告が多くなり、内容も旅とか大手の総合通販だけでなく、まるでチラシのように多様なものがある。また大手メーカーが製造直販を通販で行う広告も目立ってきた。こう見ると通信販売が隆盛のようだが、実際はそれ以外の販売で落ち込んだものが多いだけで、通販全体で見るとそんなに売上げが増えているわけではない。それでも通販ビジネスが他に差をつけていることは事実で、その差は販促の工夫をほぼ自分達で綿々と築いてきたことがあるだろう。

通販もマスメディア広告を使うが、それは新規顧客を獲得するための門戸であって、その分だけで収支をみると特別良くはないだろう。通販はリピート客に対する管理や信頼獲得や次期購買に結びつける努力をするという顧客関係の改善にノウハウがあり、キャンペーンを打ちっぱなしの広告業界とは一線を画する。そこにマスメディア広告に完全に左右されない要素がある。だから突然通信販売ビジネスを始めようと思っても、フルフィルメントや広告の外注はできても、顧客コミュニケーションのノウハウがないところは苦戦をすることになる。

また従来の紙カタログをベースにした通販もWebやケータイを活用する一方で、紙カタログをほとんど使わないWeb通販が盛んになっている。TVショッピングやWeb通販でも紙カタログを作り出すところは出てくるので、いろいろなメディアを組み合わせたクロスメディア時代にどんどん入り込んでいくことになるのだが、紙でもWebでもそれぞれのメディアを使って顧客とどのようにコンタクトするのかというノウハウが重要なので、どうしても慣れないメディアを活用するまでにはいろいろな困難がある。

従来のマスメディアの場合はマーケティング会社にしろ広告代理店にしろ専門家がいたが、通販のような顧客密着業種のメディア活用をサポートするところは意外に少ない。しかしそここそがクロスメディアの肝のようなところである。単なる広告ではなくビジネスに有効になるように、メディアごとの個別の特性を熟知して、また組み合わせた全体を俯瞰できるようなエキスパートがこれから活躍する時代になるだろう。

(クロスメディア研究会 会報『VEHICLE』238号より)

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