本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
プランナー、デザイナー、エディター、印刷営業マン、プリンティングディレクター、製版担当者、印刷担当者等……、立場は異なっても目指しているものはひとつ。「よい印刷物を作る」ことです。
JAGATはこの一点に集中して、製版印刷の基礎知識とDTPの知識、コンピュータの知識を体系立てて、DTPエキスパートカリキュラムをまとめました。このカリキュラムをクリアすることが、これからの印刷メディア産業に携わる方々の共通の教育基準と考えています。認証試験及び登録制度は、その質的保証のために教育を経たことの証をあたえるものです。
エキスパート(Expert)を日本語訳すれば、「専門家、達人」などと表現されますが、当制度は決してDTPの専門家、達人を作るための制度ではありません。DTPが達人芸を要求する現状は過渡的な状況で、本当に必要なエキスパートとは、印刷物をつくる役割分野でのエキスパートのはずです。デザイナーはあくまでデザイナー、エディターはあくまでエディター、プリンティングディレクターはあくまでプリンティングディレクターなのです。それらの人がDTPの知識を広く、正しく理解したうえでお互いにうまくパートナーとなることが目的です。
DTP環境の出現によって、従来の伝統的な製版・印刷業以外の多くの方々が、これまでの領域を超えて印刷物製作に直接かかわるようになってきました。ところが、これらの方々の出自はさまざまで、それぞれが持っている文化的風土には大きな違いがあります。DTPの正しい知識を持って、これら文化的ギャップをお互いに埋める努力をし、よい印刷物の実現に向けて、制作環境やコミュニケーション造りを行うテクニカルスーパーバイザー、これが現時点でのDTPエキスパートの大切な役割と考えます。
なお、DTPエキスパートの認証および登録期間は、技術変化を考慮して2年間とします。有効期限後は更新受験が必要となります。
合格者にはDTPエキスパート認証証が発行され、対外的にDTPエキスパートであることを証明するIDカードとなります。
また、2回以上更新試験をクリアされた方にはゴールドカードが発行され、対外的には更新回数を星印で表記することにより、その質的保証をいたします。その他、PAGEにおけるコンファレンス・セミナーの割引入場など、複数回更新者に向けて企画される特典を受ける事が出来ます。
なお、6回以上の更新者にはブルーカードを発行します。11年11月現在、現役の第1期から第12期DTPエキスパート約1,400人がブルーカード所持者です。
理想のDTPのモデルを追い求めるのではなく、まずは現実世界の問題解決に取り組まなければなりません。しかし現実は流動的であり、あまり目の前の事象に囚われると方向を見失ってしまいます。日々の努力が蓄積されて着実に前進できるような、中期的ロードマップを持たなければなりません。つまり時代に左右されない戦略で、時代に切り込む戦略を建てるのです。そのために、もともと印刷物を何のために作ろうとしていたのかを探り、よい印刷物とはどういうものかを理解し、それを最も効率よく作り出す制作環境を計画できる能力が必要です。
DTPの定着、発展の中で、DTP関係の資格試験がいくつも立ち上がりました。国家検定として昔からある厚生労働省・技能検定の中に「DTP法」というコースが設けられ(通称DTP技能検定)、また、社団法人全国工業高等学校長協会の「グラフィックデザイン検定」や株式会社ワークスコーポレーションの「DTP検定」、アップル・アドビなどメーカーが実施する認定制度など、全部で6~7つあるようです。対象、試験内容などがそれぞれに異なるので、受験者はそれぞれの特徴を良く研究して受験しましょう。
各人がそれぞれの分野・立場で何を目指すのかを明確にし、最も適切な資格に挑むことが大切です。