本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2009年5月11日、JAGATで「人材育成を考える会」が開催されました。
「生産現場を強くする人材育成とは」をテーマに、元 共同印刷株式会社 経営管理本部業務改革推進部の河野勝彦氏を講師に迎え、印刷現場30年、業務改革推進部10年の経験に基づく人材育成について、豊富な事例をもとに解説していただきました。当日は印刷会社の生産現場の方を中心に、13社16名の出席者がありました。
「生産現場を強くする人材育成」に必要なのは、次の3点であると河野氏は語る。
(1)現場の一人ひとりがルールを守り、小さな変化に気づく感性を養い、5S(職場環境を改善するためのスローガン、整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)実践で「個人力」を上げること。
(2)リーダーが現場の声をよく聞いて把握し、基本行動を示した上で部下を指導し、「現場力」を上げること。
(3)上司と部下双方のコミュニケーションを円滑にし、気配りと報・連・相で「組織力」を強くすること。
5Sの実践で「個人力」を上げる
「個人力」のアップを図るには、5Sの徹底が欠かせない。
5Sというと清掃活動のイメージが強いが、一言でいえば「ルールを決めて、それを守らせる、当たり前のことを当たり前に行う」ということである。しかし、それが徹底できていないのが実態であり、その一番の原因は管理者の姿勢ではないだろうか。
まず、管理者がしなければならないのは、「現場の基本ルールを決めること」である。職場にルールがなければ、基本となる行動規範が成り立たなくなってしまう。
どんなに立派な教育システムを構築しても、決めたルールを守れなければ、5Sが定着せず人は育たない。
例えば、「ものの置き場所を決める」「表示をする」「使ったら元の場所に戻す」といったルールが習慣づけば、もしそれが別の場所にあった時に、その変化に気づくようになる。現場では、このちょっとした変化に気づくという感性が一番大切だと考える。
決めたルールをいつでも守るという習慣づけのためにも5Sは必要なのである。「ルールなくして、人は育たず」「そのルール守らずして、また人は育たず」なのである。
次に実際にどうやって5Sの推進を進めたかお話したい。
(1)現場巡視
5年間で、6工場を60回巡視し、各工場の5S状況を写真撮影し、コメントを加えてフィードバックをした。それにより、改善意識が徐々に高まった。
(2)事例研修会の開催
5S実践職場でのいい事例を発表する場を設け、水平展開を図った。その活動ぶりを社内報に掲載した。
(3)子会社でのキャンペーン活動の展開
教育実施から活動報告までの半年間を、自ら現場に入って、率先して活動した。
(4)ムダをなくす取り組みと5Sを関連づけた教育
4年半で11回実施、延べ6800名が受講した。現場の人に分かりやすよう、内容の工夫をした結果、回数を重ねるごとに現場から挙げられる改善・工夫ポイントが増え、全員のモチベーションが上がっていくのが感じられた。
リーダーが行動規範を示し、「現場力」を上げる
「現場力」を高めるには、リーダーが現場の状態を把握し、自らルールを守ることを実践し、部下にもその姿勢を示すことが重要である。
こうすることで、5Sのルールを守るという風土が定着化し、改善や工夫を継続するという「現場力」のアップにつながっていく。
リーダーは、できるだけ現場に出向き、声を掛け、情報収集しながら職場の強み、弱みをきちんと把握しなければならない。
仕事をする上で、自分の部下がムリをしていないか。それによって作業にムラが出ていないか。その結果、ムダになっていないかを部下に気づかせるのである。指導する立場のリーダー自身にも、その気づく感性、気づきを養うために5Sが必要なのである。
また自分が課長であれば、現場のオペレーターに直接指導をするのではなく、必ず係長に指導をしなければならない。課長の部下は係長であるから、係長に注意、指導をするのが当たり前である。そうしないと、自分の部下の係長が育たないのである。
JAGATでは定期的に「人材育成を考える会」を開催し、情報の収集、発信を行っています。「人材育成を考える会」へのご意見、情報提供をお待ちしています。(教育サポートセンター 小須田紀子
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