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クリエイティブコモンズがもたらす、コンテンツを媒介とした人の輪。
歴史的にWebを考えると、マスメディアなどとは対象的に情報発信をするための道具であった。しかし最初からWebを見ることのできる人が多く居たわけではないから、Webを使うことができる人同士が情報を発信しながらお互いにリンクをはり情報の共有をする使い方であった。最初のブラウザであるモザイクをダウンロードしながら使っていた時代は、Webのhtmlはまだテキストエディタ手で書いていたので、一定のリテラシーの人だけが使っていたといえる。
Windows95のころからパソコン利用者なら誰でもWebを見られるようになって、このオーディエンスの増加を背景に既存のマスメディアもWebで情報を発信するようになった。しかしその後のWebの発展の経緯を見ると、昨今ではBlogやSNSの利用者が巨大になったように、次第に情報発信の道具という面が強くなっているように感じられる。
日本とアメリカのWebサイトのアクセストップ20を比較すると、共通しているサイトは3分の1もなく、日本は確かにさまざまなBlogサービスが入っているのだが、アメリカはFacebook、Myspace、TwitterなどのSNSのアクセスが多い。またCraigslist、eBayという草の根的ECの役割が大きい。Blogはどこで誰がみているかわからないが、SNSの方が対象がはっきりしている。それにモノのやり取りがついたのが前述のEC的なものである。
これらとりわけアメリカの動向が意味するものは、実際には人が会ったり、コラボレーションしたり、モノのやり取りをするにしても、それらに付随した情報交換に自ら発信できるメディアを使うようになったのだといえる。これはメディアに使うコンテンツの意味合いの変化でもある。マスメディアなどの場合は情報発信の川上側にコンテンツがあったのが、現在では草の根の情報発信する側がコンテンツを多く提供するようになったのである。
別の言い方をすると、コンテンツの権利処理も、プロの専門のクリエータなり写真家がつくって、それを特定の人が代理して扱う希少性を重視したコンテンツではなく、コンテンツそのものよりもそれを使って何かを表現したいとか、意思表明したい、意識の共有をしたいというニーズが強まっているのだ。
日本でもそういったWebサイトは増えていて、私の森.jp という、日本の森を愛するサイトでは、関連したNPO・NGOのポータル的な役割をしながら、遊び、仕事、エッセイなどの情報提供と、私の森.jp写真部 という写真ギャラリーを行っている。投稿された作品は、「森のいきもの!」「光と陰」「おいしそう!」「木霊」「木漏れ日」「これなんだ?」「これが私の森!」などがあり、今は新しく「森のいきもの!」というお題がでている。
私の森.jp写真部は、写真を媒介とすることで、人々が森について伝えたり、想ったりすることができるという考えで、発表される作品は非営利であれば、誰でも自由に編集して使えるよう、改変を許可する条件で公開していて、ポストカードの制作など2次的に使ってもらって、森への想いをみんなで広げていこうとしている。そのためにクリエイティブ・コモンズのしくみを利用している。商業誌などへの掲載も、私の森.jpの紹介をすることを条件として、利用できる。
写真がデジタルでより身近になったのだから、そのコンテンツが人々の関係をよくする方向に使われるべきだし、そこでの写真の役割は大きいだろう。日本人は世界一カメラ好きなのに、意外に写真の投稿サイトのランキングはアメリカより低い。日本は権利処理を難しく考えがちかもしれないが、意識の共有を目的にするならばクリエイティブコモンズを活用することで、写真も簡単に活用できるようになる。
情報共有時代のコンテンツビジネス動向 2009年06月19日(金) 14:00-16:00
情報共有時代におけるコンテンツビジネスを類型化し、幾つかの軸や分類体系によって整理・概観する。また、情報共有のためにクリエイティブ・コモンズが果たす役割や、その他の権利処理スキームの持つ可能性について検討する。