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顧客のビジネス環境がITにより大きく変わりつつあるなかで、印刷会社のビジネス戦略とそれを支える製造体制をどう構築するかが大きなポイントとなる。
印刷業界は大きな構造変化に直面しつつあり、変化に対応できなければ生き残れないという認識は多くの企業で共有されているようだ。印刷技術はコモディティ(日用品)化しており、“刷る”だけでは付加価値を生まなくなりつつある。顧客のビジネス環境がITにより大きく変わってきていることを認識し、顧客と同じマインドで考えて、“お金を払う立場”のロジック(価値観)でビジネスモデルを再構築する必要がある。
変化に対応する手段として、業態変革やワンストップサービスというキーワードが上げられる機会が多いが、どちらかというと営業戦略の文脈で語られることが多く、それを支える製造体制について具体的に述べられることは少ないように思う。
コンセプトは明快であっても、それを保障できる製造体制が確立されていなければ利益を出すどころか受注することも難しいだろう。では、何から手をつければよいのだろうか?
(株)エフ・アイ・エス は、WebToPrintを活用したソリューション実績を多数持つデジタル印刷専業会社である。パーソナライズドDMなど高付加価値のドキュメントサービスを得意としており、以下のような実績がある。
・多店舗型チェーン店の求人用ショップカード作成の合理化を実現
(デザインテンプレートの提供とバリアブルコンテンツの組み合わせ)
・マニュアルや研修教材等、バージョンアップ機会が多いドキュメントの在庫レスを実現
・自動車販売店の顧客に対しパーソナライズドDMを送る仕組みを提供
・プロスポーツ・チームの公式サイトにおいて、スター選手の画像が入った各種ノベルティグッズを作成、販売する仕組みを提供
・一連の広告制作業務(入稿、校正、出力指示、コンテンツ管理、進捗管理)がワンストップで行えるシステムインフラをクラウドサービスとして提供
・印刷~封入~発送までワンストップのDM発送業務をASPとして提供
同社の取締役専務 岡本幸憲氏によれば、以下の順番で社内整備を行ったという。
(1)MISの整備
自社の収益構造の見える化は必須である。
細かい受注分析をすることで次の営業ターゲットや自社の強化ポイントが見えてくる。
WebToPrintの画面設計は自社の営業マンの受注登録の効率化が出発点であった。
(2)製造工程の効率化(自動化)
キャッシュ・フローの安定性という意味でも1枚印刷して代金がいくらというビジネスモデルは決しておろそかにできない。 日常的にキャッシュを産み出す部分を徹底的に効率化してはじめて、ソリューション提案に足を踏み出すことができる。 小ロット/多品種の仕事を入稿から配送まで、いかに人手を掛けずにハンドリングするか、ITを活用してシステム的にマネジメントするかがポイントとなる。JDFの活用も当然視野に入ってくる。
(3)ソリューション提案
提案にあたっては、顧客をマーケットと見るのではなく、顧客の先の顧客をマーケットとし、顧客のROIを意識する必要がある。そして、顧客を説得するには「エビデンス(証拠)」が欠かせない。生産ライン、技術力を顧客に対して明確に説明できること。しかも透明性が大事で、いつでも製造現場を顧客に見せられるようでなければならない。
PAGE2011カンファレンス「顧客視点による戦略的ワークフロー構築 」セッションでは、
岡本専務をスピーカーにお招きし、印刷会社のビジネス戦略とそれを支える製造体制をどう構築するか、単なる成功事例紹介ではなく、これから始める会社にとってのポイントを議論する。