本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
印刷会社における技能教育や標準化は品質に大きく影響し結果的に品質不良や事故防止につながるのである。
■効率化のなかで求められる品質検査
印刷物の製造工程は、DTPやCTPが不可欠なまでに普及した。それに伴い印刷会社では、クライアントから入稿するデータを加工して、印刷用データとして出力することが大幅に増加した。従って、印刷会社おける生産設備(とくにプリプレス)や人員配置、ワークフローは大きく変わってきた。
例えばプリプレス工程は、従来の専用システムではなく、パソコン上のDTPによる生産体制に変わったため、プリプレスというハードルが大幅に下がり、プロとアマの境界もなくなった。しかし、できるということと印刷用原稿として適しているということは別問題である。
現在でも印刷会社には印刷用原稿として適さない、いわゆるミスや不具合のあるデータが日々入稿されてくる。これらのデータを印刷会社でチェック、修正することは現場の生産性が悪化するだけではなく、大きなリスクも伴う。さらに、普及したCTPワークフローでは、デジタルデータを直接プレートに出力するため品質は向上したが、工程が短縮されることにより人間が不具合を発見する機会はかえって減少し、最終印刷物にまでミスが引き継がれてしまうこともある。
工程の短縮によって、作業者のスキルがそのまま品質に直結してしまうことも多くなった。さらにオペレータは、自分の作業は正しいと思う傾向があり、自ら校正してもミスは発見しづらい。これらの課題をできるだけ効率良く解決するには、現場におけるチェックポイントを明確にして、後戻りしないワークフローを構築する必要がある。コストがかけられない環境のなか、検査・検版はシステマチックに行わなければならない。
■個人の意識と日常の積み重ねが事故を減少させる
印刷事故を減少させるには、オペレーター一人ひとりがいかに高い意識を持つかが重要である。前述のようにプリプレスでは、クライアントがデータを作り込んでくるケースが増加し、印刷会社は出力センターのような仕事内容になるケースもある。よって、作業の付加価値は、従来に比べ低くなった。
そのような環境の中でも、品質を維持するためには自工程だけではなく、ほかの工程も知る必要があるだろう。それには、自ら勉強するという意識が不可欠である。また、短期間の研修や勉強では身にならないことが多い場合、ジョブローテーションなどのシステムを取ることも効果的である。
これらを実践することで、後工程の実作業や苦労を知り、「次工程もお客様」という意識を根付かせて、少しでも個々の作業の質を上げることができる。次工程への意識が薄く、機械的に作業していると本来の問題点が見えず、自分の工程さえ問題なければよいという意識が芽生えてきてしまうのではないだろうか。それらを払拭する方法として、次工程を知り自ら率先して仕事に取り組む姿勢こそが大切である。
■関連情報
PAGE2011
2月3日 S8 ・DTPに効く事故防止ポイント
2月4日 S14 ・印刷会社の品質管理と事故防止