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社内コストの見える化を行うには、自社の標準時間コストを求めるところから始めることになる。
厳しい受注環境がつづくなか収益性重視の経営を志向する企業が増えている。
印刷業に限らず緻密なコスト管理の手法として注目されているのが「見える化」である。受注一品単位、あるいは部門単位での収支をつまびらかにし、そこを出発点にしてPDCAの改善サイクルをまわしていく。
受注一品単位の場合、受注金額から材料費と外注費、そして社内製造コストを引いた残りの金額で収支を評価する。社内製造コストの算出には標準原価を用いる場合と実際原価を用いる場合がある。(参考記事:標準原価と実際原価の使い分け )
大東印刷工業(株)では、実際原価を用いたコスト管理をしており、作業が発生する度にシステムに実績登録(着手、完了入力)をすると、ほぼリアルタイムで作業時間に応じた製造原価が計算され、受注一品単位のその時点の収支情報が全社で共有できるようになっている。同社では「印刷タクシーメーター」と呼んでいる。タクシーに乗った時にメーターが気にならない人がいないように、その仕事の原価がいまどのくらいかかっているのかがリアルタイムに「見える」ことでコスト意識を高め、どうしたらより効率的に仕事を進めることができるかを常に考えながら仕事に取り組むようになる。
ここでの社内原価は、作業時間 × 標準時間コストで算出する。
では、標準時間コストとは何かというと基本的には、年間総コスト ÷ 年間総稼働時間 で求めることになる。
社内コストの見える化を行うには、この自社の標準時間コストを求めるところから始めることになる。一般的なやり方は、自社の直近の決算数字を部門単位、設備単位、工程単位に落とし込んでいき、その金額を単位ごとの年間総稼働時間で割ることで導き出す。
全社経費の配賦の仕方、総務、経理などの間接部門経費の配賦の仕方、減価償却費の扱い、稼働率の設定などは自社で運用しやすいようにルールを決めていくことになるが、基本の考え方は共通である。
7月4日(木)「”見える化”実践講座 」では、標準時間コストの求め方についてわかりやすく解説します。
(JAGAT 教育コンサルティング部 花房 賢)