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インターネットをビジネスに活かす PAGE2000より

インプレスが発行した「インターネット白書99」によると,1999年2月現在でインターネットの利用者は1800万人以上となり,電子メールも急速に普及している。
また,日経BP社が1999年12月に実施した調査によると,家庭でのアクセスが職場でアクセスすると答えた人の2倍以上となり,インターネットは個人で楽しむメディアとしても一定の地位を確立しつつある。
 また,Webの双方向性を活かし,オンラインショッピングやオンラインバンキングなどWebを利用したビジネスも,導入段階を過ぎ,定着する段階まで達してきた。
 「Webの今後の普及」のセッションでは,「インターネットをどうビジネスに活かすか?」をテーマの中心にかかげ,講演とディスカッションを行った。

インターネットビジネスでの3つのポイント
 情報通信総合研究所の野原佐和子氏は,オリエンテーションとして,インターネットを利用したビジネスを考えるにあたっての3つのポイントについて紹介した。
 第1に,それぞれが自社の資産を最大限に生かしたビジネスをどのように展開し,そのビジネスモデルは自分にとって何かを考えることである。
 第2に,雑誌やテレビなど既存メディアの模倣でなく,インターネットという新たなメディアの特性を活かすことが必要である。インターネットの本質は「双方向性」と「ユーザ主体」である。そこで,コミュニケーションをいかにうまくやるかということと,ユーザ主体でどのようにコンテンツを展開していくかがカギとなる。
 第3に,ビジネスを展開していくときにユーザの特長を見極めることである。
そのキーワードとして,ECマーケット・リーダーという考え方を紹介し,彼らにターゲットを絞ることが重要である。ECマーケット・リーダ−とは,新しいものが好きで,インターネットに関心があり,情報を選択した上で,自分から情報発信を積極的に行う特長を持つ。その中でも,早くからECを行う上,周囲のユーザへ体験やノウハウを提供することで影響を及ぼすマーケット・メーカーと,マーケット・メーカーの発信する情報をキャッチし,その情報を参考にしてECを行うマーケット・サポーターがキーとなる。

日経BP社
 日経BP社の竹田茂氏には,日経BP社のインターネットビジネスの基本戦略とインターネットマーケティングの現状についてお話しいただいた。
 BizTechのサイトはビジネスモデルでは雑誌のメタファに近いが,販売収入にあたる部分が少なく,広告収入に依存する割合が非常に高い。
 日経BP社の基本的な戦略に,機能軸とテーマ軸がある。各雑誌でインターネットを独自に行っており,これがテーマ軸に相当する。一方,機能軸は,記事を掲載するしくみや記事蓄積システムなどが当てはまる。記者が取材し,メールで発信し,Webで掲載し,雑誌記事に使って,記事データベースにPDFとHTMLで格納する。さらに,CD-ROM版を発行するといったコンテンツのマルチ展開を行っている。
 竹田氏は,インターネットを取り巻く現状として,(1)社会インフラの整備,(2)決済・物流・通信のブロードバンド時代の到来,(3)パソコン以外のプラットフォームの多様化,(4)ユーザの一般化,(5)ビッグネームと草の根の両立をあげた。
 また,インターネットマーケティングは,基本をおさえることが必要である。ただ,システムを会社の中にどのような形で導入していくかがインターネットビジネスの中では鬼門になる。
 ブランドのマネージメントも重要である。ユーザから見たときに,文脈がつながっている最初から最後まで体験を裏切らないことが重要だと考える。広告収入を得る意味でも,またプロモーションをするにあたって,手法そのものがECと広告の区別がつかなくなってきている。

旅の窓口 (講演資料はこちら
 日立造船情報システム(2月1日から分離独立して,マイトリップ・ネットへ変更)の小野田純氏は,旅行ECサイト「旅の窓口」について紹介した。
 旅の窓口のビジネスモデルは,(1)コンシューマからプロシューマに変わる利用者,(2)お互いが情報を交換する双方向性,(3)お互いに作り出す協働の3点である。ユーザが立てた旅行計画のプロセスに対してリアルタイムに応える必要があるため,リアルタイム処理に注目している。
 旅の窓口では旅のポータルサイトになることを目指している。そこで,機能として,(1)観光情報検索機能,(2)旅程作成機能,(3)宿泊施設予約機能の3点を有している。このサイトで旅行の一連の計画が立てられる。
 コンセプトとして,パッケージ販売はなく,コンポーネントの組み合わせの提供にこだわっている。また,いかに各ユーザが心地よいと思ってもらえる環境を提供できるかが課題である。
 月間でトップページは50万件のアクセスを誇り,現在の会員数は約26万人,登録ホテル数は2月初旬現在で約2740軒である。
 また,掲示板を設け,ユーザが口コミ情報やホテルへの要望を伝えたり,ホテルもそれについての的確な処置を行ってその報告を行うなど,電子コミュニティの場を提供した。これはホテル自身の業務改善,サービス改善にも役立ったそうだ。
 また,ホテル専用のHPがあって,ホテルは自分自身で随時価格を変化させている。ホテル業界のインターネット利用率は非常に低いが,アクセスが多いホテルは頻繁にインターネット上から情報を操作している。
 インターネット時代の旅行者は能動的なユーザなので,インタラクティブ,かつ協働を望んでいる。さらに,旅行予約のポータルサイトとして成長し,ユーザに多様な選択を与えられることを目指している。

Yahoo!Japan
 ヤフーの有馬誠氏は,ポータルサイト「Yahoo!Japan」の現状について紹介した。
 Yahoo!Japanでは,「ユーザが何か探したり,誰かを捜したりするとき,アクセスせずにはいられない唯一の場所になること」を目標としている。
 インターネットでビジネスを行う場合は,ほとんどの場合,(1)コンテンツプロバイダ,(2)株主,(3)ユーザ,(4)広告主の4つの側面で分けて考えることが必要である。
 日本リサーチセンターの視聴率調査によると,インターネットユーザのうち75.7%の人がYahoo!JAPANを月に1回以上見ているそうだ。
 ヤフーは,1999年の6〜12月の間にTVコマーシャルを首都圏で放映した。その後の調査で,Yahoo!Japanを主な検索エンジンとして利用している人が53%であったのに対し,同年12月には67%に達し,利用率が向上している。サービスのページビュー構成としてはやはり検索サービスが一番多いが,12月にはコマースの利用が20倍以上増加している。ページビュー全体としては,1999年9月から12月にかけて30%近く増加している。
 有馬氏は,ホームページのアクセスを増やすためのエレメントを4つにわけ,それぞれで工夫する必要があると語った。認知度を上げてユーザ数を増やすこと,内容を充実させ,訪問頻度を高くすること,1訪問あたりのページビュー数を多くすること,掲示板などコミュニティサービスの拡充によって滞在時間を長くすることである。さらに,スピードの速さが大事である。
 そして,これからインターネットを始める人たちに「インターネットを始めるときはまずYahoo!JAPAN」というイメージを定着させたいと語っている。コマーシャルや雑誌などで知名度を上げて,評判が広がるようにしていきたいと結んだ。

 ディスカッションでは,それぞれのビジネスが成功している秘訣について,各スピーカーにポイントを語っていただいた。
 竹田氏は運営のガイドラインの重要性を,小野田氏は技術面の優位性とともに自分たちで何が優れているかを考えてその信念に従って進めてきたことを,有馬氏はユーザの声に即座に対応することを徹底的に行ってきたことを挙げた。

 サービスの多様化が進む中,インターネットビジネスで生き残るには,特性を活かした上で,新たな差別化のための工夫が常に求められているだろう。

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2000/02/29 00:00:00


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