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組版ルールと可読性

組版ルールと可読性

澤田 善彦


本来組版ルールは,文字組版における美的要素(レイアウト)である行長・行間・文字サイズなどが,「可読性」を高めるために適切な条件で設定されるためにある。では可読性とは何か,また可読性を高めるための組み方とは何か,を考えることが必要になる。これがエディトリアルデザインである。

可読性とは,文字を読むという心理的要素を伴った「文字の見やすさ」をいうが,一般的な意味での可読性とは「文字の読みやすさ」のことを意味する。それは「正確に速く読めること」「理解しやすいこと」「読んでいて疲れを感じないこと」などである。言い換えれば日本語組版において,これらの条件を満たすための組み方が組版ルールといえる。

版面設計の基準,文字サイズ,書体(フォント),行長(字詰)・行間・段間の設定,行頭・行末禁則処理の必要性,約物処理の方法,和欧混植の組み方など,すべて可読性を高めるための組版ルールの範疇に入ることである。たとえば,句読点や約物などの行頭・行末禁則処理の必要性は,可読性に影響を与えるからだ。

したがって可読性の対象になるものは,読まれることを前提とした文字印刷物の構成要素である「文字」と「組版形態」や,印刷物になったときの状態をいう。またそれだけではなく,読む側の問題としての読書環境がある。それは照明とか,読者の心理的,生理的状態も無視できない。二日酔いの日の読書は,普段の倍の時間がかかるものである

したがって可読性の要素は,単にフォントデザインのために必要というだけではなく,組版形態や印刷物という最終目的に対して重要である。文字組版に関する可読性については,フォント品質と組版品質が相関関係にある。つまりフォントの使い方と組み方は,可読性を左右する大きな要素といえる(「フォントと組版品質の相関関係」の図参照)。

1999/09/01 00:00:00


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