本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

製本のトラブルと表面加工−知って得する製本の知識(5)

最近の社会的傾向として、自己本位で仕事をしている風潮がある。つまり他に対する思 いやりに欠けていることである。それはDTP作業においても共通していえることがある。

版下作成からフィルム製版が行われていたときは、版下工程で後工程のことを考えて作 業をしていた。プリプレスの組版や製版などの各工程が分業化されていたが、それぞれの 技術的コミュニケーションが図られていた。

ところがDTPは、同じプラットフォーム上でプリプレス工程を一括処理するのが特長で あるが、デジタルプリントを除いて後工程の印刷、製本などはオフラインである。そのた め後工程に対する知識や配慮が疎かになりがちである。この項の締めくくりとして、現実 に起きている製本工程における主なトラブルの例を挙げ、他への思いやりの気持ちを促し たい。

●主なトラブルの要因と対策

1.中綴じの場合

文字や絵柄が仕上り線ギリギリか、または仕上り線上にあると、仕上げ断裁後に字切れ や白が残ることになる。写真のネームやキャプション、罫線などは、仕上り線より3mmは 内側に設定した方がよい。

2.無線綴じの場合

ミーリングカット分がないと、断ち切りの絵柄などは小口側に白が残る。それを避ける ために、絵柄は外トンボまで延ばしておく(絵柄の塗り足し)。また写真のキャプションや ネームなどは、仕上りから5mm程度内側に追い込んでおくことである。

3.多面付け印刷の場合

1枚の用紙に、同一ページを複数面付けすることを「多面付け」というが、この場合に は各印刷面の中間に、断裁のための「ドブ(groove)」を取る必要がある。天地左右に接す る印刷面との間に空き(溝)を取ることで、数mm以上が必要である。

●表面加工の種類

印刷物に関する加工にはいろいろな種類がある。製本も加工の一種で「製本加工」と呼 ばれる。その他に「パッケージ加工」「製袋加工」「表面加工」などがあり、それぞれ技術 的知識を必要とするが、ここでは印刷物に直接関係する「表面加工」について説明する。

表面加工とは、表紙やカバージャケットなどの印刷面を保護するために、防水や光沢を 目的として何らかの加工することをいい、これを「表面コーティング」という。

表面加工の種類は、目的により@光沢コート、Aプレスコート、Bラミネートなどに分 類されるが、いろいろなトラブルが発生する場合があるので要注意である。

1.光沢コート

ニス引きともいい、オフセット印刷機にニスコータを取り付け、4色印刷と同時にニス を塗布するインライン方式と、オフラインのニス引き機やグラビア印刷機を使った方式も ある。用途によりニスを変えて耐熱性、耐摩擦性、耐水性などを与えることができる。

2.プレスコート

印刷物の表面に鏡面光沢をつける加工をいい、光沢コートの処理後に熱プレスを行う方 法である。印刷面にアクリル樹脂などを塗布し乾燥させた後に、加熱したステンレス鏡面 板に圧着して仕上げる。また水性ニスや溶剤系ニスの他、UVニスを塗布し熱圧着させる方法がある。

この加工は、ニスの皮膜によりインキ層の光の反射率が下がり色調再現が変化する、と いうトラブルがあるので、対策としてプレスコートした色校正で校了を取ることである。

3.ラミネート

ラミネート加工のことをいい、P.P.貼りとも呼ばれる。P.P.(ポリプロピレン)やP.E.T.(ポリエステル)フィルムに接着剤を塗布し、印刷物の表面に圧着加工をする方法である。インキが十分乾燥しないうちに加工すると黄変したり、またフィルムを貼った後はプレスコートと同様に、色調再現が変化し、トラブルの元になる。対策としてはP.P.貼りの色校正で校了を取ることである。

他連載記事参照

2001/01/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会