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洋紙価格値上げの背景


洋紙流通チャネルの変化
 バブル経済の破綻した80年代以降,製紙会社は生き残りを賭けたM&Aによって規模を拡大し,スケールメリットの獲得による収益性改善を追求してきた。その結果,規模の拡大によって合理化が進み,流通構造におけるメーカーの発言力も改善した。代理店や卸商でも合従連衡や廃業が相次ぎ,「多過ぎる」と指摘されることのあった流通チャネルの再編はいまなお進み,製紙会社も紙・板紙流通業者も一定の構造改革成果を上げてきている。

原油価格高騰の要因
   躍進する中国経済による需要急増は,原油価格を1バレル70ドル前後で2004年の倍以上に高騰させ,紙流通の世界では古紙価格を上昇させ,世界的には紙の需要を急増させる結果となって,洋紙価格の上昇をも招く一因となっている。化学・鉄鋼など他産業では既に価格転嫁を終え,逆に原油価格高騰の恩恵を享受する業界も少なくない。経済産業省の調べによれば,製紙産業はあらゆる産業でもっとも重油を消費する産業であり,洋紙の生産には莫大なエネルギーを必要とする。製紙会社は化石燃料をバイオマス(生物資源)エネルギーなどの代替燃料に置き換えるべく模索を続けてきた。

今後の展開
 しかしながら,中国需要増大・原油価格高騰といった地球的マクロ要因による影響は,製紙業界の経営努力を上回る見通しであり,洋紙価格は値上げに踏み切られた。現時点ではバイオマスなどによる代替燃料供給力も限界のしれたものだ。印刷会社ではアート紙からコート紙へシフトさせて対応する動きなどが加速している模様だが,経営合理化で吸収しきれない部分について,顧客にできるだけ納得いただいて価格転嫁し,収益性を維持していく努力が必要な段階に入ってきている。
 デフレの出口が見え始め,ゼロ金利解除も遠くない将来に想定される。物価や金利は上昇の兆しを見せ始めており,資材料に限らず今度はデフレ対策から一転して今度はコスト高への対応策を準備しておく必要がありそうだ。

プリンティング・マーケティング研究会会報誌「FACT」2006年4月号
「変化する需給 洋紙市場の最新動向」より抜粋して加筆修正

2006/06/25 00:00:00


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