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DTPエキスパートで製本から広がる世界

◆杉本 浩康

私が働いている場所は、印刷会社の製本グループです。入社してから現在までの6年間、製本一筋で、恥ずかしながら「DTPエキスパート認証試験」に合格した後になって初めてPhotoshopやIllustratorに触れたというような経歴の、言わば「DTP部外者」です。そんな私が「DTPエキスパート認証試験」の受験をしたことに皆さん不思議に思われるかもしれません。そもそも私が「DTPエキスパート認証試験」を受験したのは、入社から3年がたち、製本の仕事にもおおよそ慣れたかなというころです。しかし、慣れた一方で不安も感じていました。

私は書籍が好きで「印刷物ができる過程を詳しく知りたい」と思い印刷会社に入ったのですが、自分の部署のことは分かってもほかの部署でどのような作業が行われているか、いま一つ分からないことに対して不安を感じていたのです。書籍や社内の勉強会などで部分的には知識があったのですが、多項目にわたる印刷知識の中では氷山の一角といったところでした。
また、コンピュータの知識はWindows95をバリバリ使っていた7年ほど前から停止してしまっていて、竜宮城から帰ってきた浦島太郎のような状態でした。そのような不安を抱かなくても仕事に支障はないのですが、「このままでいいのか?」と自問自答し突破口を探していました。

そんな私に思い浮かんだのが「DTPエキスパート認証試験」です。社内では既に取得者が6名おり、どのような試験か話には聞いていました。試験問題は知らないことばかりで難しそうでしたが、逆に考えれば得るものが多く価値あるものと言えます。試験勉強をとおして知識をインプットすれば相当な自信につながるでしょう。幸い会社の支援でDTPスクールの講座を受講させてもらうことになり、第20期の試験に挑むことにしました。
嘘だと思われるかもしれませんが、勉強していて楽しかったのです。「DTPエキスパート認証試験」の出題内容は、まさに私の知りたいことが体系的にまとめられたものでした。まるで海中に潜ってようやく氷山の全容を見ることができたような爽快(そうかい)な気分です。さらに気分を盛り上げるために、筆記試験の全カテゴリーで95%以上の正解率を達成した人に与えられる「優秀成績合格者」を目標にしました。そして2カ月間、過去問題を何度も何度も繰り返し解いて勉強した結果、「優秀成績合格者」として合格できました。試験をとおして知識と自信を得られたことが私の財産になったと思います。

資格取得後、会社では部下もでき、ほかの部署の新人が製本の研修に来たり、会社でインターンシップを実施したりと、何かと教える機会が増えました。今興味があるのは「教育」です。「DTPエキスパート認証試験」で身に着いた知識から製本の技術的なことまで、ただ行き当たりばったりで教えるのではなく、効率的に教育およびその評価ができるシステムを模索しています。
また、家では古いパソコンを買い替え、友人や親戚の結婚式で撮ったデジカメの写真を編集してムービーを作成することに夢中になっています。初めのころはただ音楽に合わせて写真を並べただけのスライドショーでしたが、AdobeのPremiereを使うようになってからは、かなり高度な編集を施したものが作成できるようになりました。写真は静止画ですが、徐々にズームさせたり、右から左へカメラが視点移動するようにしてみたり、というように動きを与えることだけでも効果的に使えばドラマチックな動画になり、ビデオカメラで撮ったものとはまた違った面白みのあるものになります。以前「一眼レフで撮った写真のプリント」を結婚した人たちに渡していた時に比べ、現在の「写真を編集したムービー」を渡した時のほうが数十倍も喜ばれます。5分間のムービーを作成するのに10時間以上掛かることもしばしばですが、あげた人の喜ぶ笑顔が見れれば大満足です。やっぱり「ものづくり」は楽しいですよ。これからも公私ともに「ものづくり」の幅を広げていきたいです。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2006年7月号


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2006/06/29 00:00:00


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