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環境対応でプラスチックに引き離される紙

包装資材・容器の原材料出荷量の推移と見ると、全体としては実質成長率の上昇に反して減少傾向で推移している。内容別に見ると、金属、ガラス、木は大幅な減少が続き、紙・板紙はほぼ横這いのなかで、プラスチックの継続的な増加が目立つ。
実質GDPが増加するなかで包装資材・容器の原材料出荷量が減少しているが、何故であろうか?

ひとつの理由は、原材料使用量を測る単位が「トン」という重量単位だからである。1991年から2004年までの原材料出荷量全体の減少率は▲8.8%だが、それは金属、ガラス、木、その他の減少によるものである。いずれも、紙、プラスチックに比べて重い材料である。物流コストを考えれば、軽量化は誰しもが考えることであり、金属、ガラス、木からプラスチック、紙への移行は当然であろう。そのような移行が起こった場合、包装資材・容器自体の需要量自体は変わらなくても重量ベースの出荷量は減少することになる。したがって、図における原材料使用量全体が、必ずしも包装容器の需要量自体の減少を意味していない点に注意が必要である。

いずれにしても、この10数年で、包装資材・容器の原材料は紙かプラスチックのいずれかに絞られつつある。その中で、プラスチックはこの13年間で21.6%増、紙・板紙製品は0.7%の微増になっており、紙はプラスチックに押され気味である。
この理由は二つある。ひとつは原材料コストである。過去13年間における紙とプラスチックの単位重量当たりコストの推移を見ると、紙も低下しているがプラスチックのコスト低下は紙の約倍になっている。

もうひとつの要因はやはり環境対応に関わるものである。包装容器リサイクル法施行は、包装資材・容器の減量化を促進する大きな役割を果たしている。紙、プラスチックいずれについても、さまざまな工夫によって減量化が進められている。材料の厚さが薄くても強度面で問題がないようにすることなどである。紙とプラスチックを比べたときに、紙が有利な面は、再生資源であることであろう。
しかし、包装容器としての第一条件となる「機能」面での制約が大きく、上記の有利な面が活かされにくいことが、プラスチックの伸びに対して紙が伸び悩んでいるひとつの要因である。紙とその他の材料を組み合わせた容器は、分別回収の観点からは好ましくないから、機能面を優先するならばやはりプラスチックの利用が有利になるだろう。
紙容器が伸び悩むもうひとつの大きな要因が「一次容器化」の進展である。従来、内容物を入れたプラスチック容器の外箱として紙器が使われていたが、この外箱をなくしていく動きである。

環境対応について総合的に考えると、今後とも、包装資材・容器の原材料として、紙がプラスチックに引き離されていくことになると考えざるを得ない。

(「JAGAT info 2006年7月号」より)

2006/07/14 00:00:00


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