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プロモーショナル・マーケティング

 クロスメディアという視点で見てみると、販促としていろいろなメディアを横断的に活用することが増えている。紙メディアやWebなどのデジタルメディアを費用や目的に合わせて効率良く販促に利用しようということである。このような動きは、日本POP広告協会編『プロモーショナル・マーケティング』において、新しい販促の考え方として体系化されている。

プロモーショナル・マーケティングは、「ブランドの顧客開拓と維持のために、限定された期間に、消費者、小売業者あるいは卸売業者に向けた直接的購買動機付けを中心にするマーケティング活動」と定義されている。
具体的にはメディアを通じて知らせるだけではなく、プロモーションの「仕組み」で「行動」させて、一連の販売活動に決着をつける。最後に動機付けをして行動させて購買を促進することである。
本稿では、クロスメディア研究会のセミナー「販促に直結するクロスメディア制作」から、プロモーショナル・マーケティングについて紹介する。

販促に直結するクロスメディア制作のために必要な能力

 「クロスメディア」とは、本来は、特定媒体にかかわらずに、すべてのメディアについて「横断的」に検討を行うことである。全メディアを横断的に見渡して、合目的的に、効率的な媒体計画を行うことである。
 得意先側は、特定の媒体に思い入れがあるわけではなく、全体の中から、最も効果的で費用効率の良い媒体を取り揃えてほしい。

 このような視点からすると、「クロスメディア」の計画を行うには、3つの能力が必要になる。第1は、多様なメディアに関する知識である。第2に、最善のメディア選択を行うメディアの計画能力が必要になる。そして、第3に、得意先の問題を解決する方法論である。この3つが揃わなければ、得意先の役に立つ計画にはならない。

 これからは、問題解決の実行プログラムを作る能力が重要で、問題解決の仕掛け作りの能力が必要になる。実行プログラムの開発力である。
さらに、効率的に問題解決するためには、限られた予算を有効な市場に絞り込む能力が必要である。プロモーションの投下設計力は、どのマーケットに資金を集中するか、だれをピンポイントで狙うか、どんな購買オケージョンに向けて仕掛けていくかなど、プロモーション予算の投下計画である。そのためには、マーケットを読む能力がないと絞り間違いが出てくる。

@市場をよく読む力、A資金をどこに絞り込むかという投下計画の策定力、そしてB具体的な仕掛けを作る力、その上で、どういうCメディア展開にしていくか、D全体をどう運営するか。この5つの能力をもつことが、プロモーショナル・マーケターに求められる能力である。

認知と購買

 今日のマーケティング上の大きな問題は、「広告をすれば、知名度は上るが、モノが売れない…」ということではないか。知っていることと、買うということの間にギャップが出る。「認知」と「購買」の間にギャップが生じ、このギャップを埋めるための手だてが必要とされている。
 商品の認知者や、そのブランドに好意を持っている人はたくさんいるが、実際買う人は少ない。そこで、ブランド認知者や好意者への、さらなる「ひと押し」が要る。

 今日の市場では、ブランド「選好」とブランド「選択」の双方の促進が必要である。この両方を行わないと市場での販売は成り立たない。
 広告は、ブランドを好きにさせることである。今の顧客は、買っても良いブランドの集合を作る。しかし、買ってもいいブランドを全部買うわけではなく、最終的に買うのは1つだけである。ブランドを好きにさせるだけでは足りない。もう1つ購買を決断させるということが重要である。
 「何となく」好きになる段階には、リスクはない。だから、いわゆる購入意向は比較的スムーズに形成される。ところが、最終の購買決定にはリスクが伴う。そのため、最終決定は、好きか嫌いとう感覚軸だけでなく、「得か損か」という計算軸が入り込んでくる。リスクの伴う最終検討段階では、「異なった刺激」を付け加える必要がある。
 プロモーショナル・マーケティングは、このような購買を促進する働き行うことで、そのためのクロスメディア制作が要求されてくる。 (クロスメディア研究会)
出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2006年7月号

2006/07/08 00:00:00


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