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クロスメディアを勉強して、何になる?

Webサイトがpullなら、メルマガがpushだとか、雑誌にQRコードを印刷して、ケイタイで読ませてどこかのサイトにつなげるとか、キーワード広告とか、Blogでアフィリエイトなど、インターネットの世界は次々に新たな販促手法の話題に事欠かない。それはデジタルメディアというのは、底では共通の技術でありながら、見栄えはいろんな姿を取り得るからである。BlogもSNSもCMSも技術的には同じようなものであり、今後もキリなくアルファベット3〜4文字で表現される新手法は出てくるだろう。

つまりいくらでも新たなメディアを「発明」できるわけだから、人が考えた「メディア」のあとを追いかけていても、先頭に立つことはありえない。この世界の先頭に立つ人は、ビジネスモデル自体を考え付く人であることは、GoogleやAmazonを見ても明らかである。今Web2.0というような話題で、またいろいろな先駆者が紹介されているが、それがどんな効用があるのか、という現実的な部分だけに注目するのでなく、なぜその先駆者はそのようなことを思いついたのか、やってみてどう総括しているのか、というビジネスモデル開発の「プロジェクトX」的な視点で分析してみてはどうだろうか。

クロスメディアというと冒頭の3〜4文字の新手法を人より早くマスターして、うまく組み合わせるノウハウを得ることと思う人もいるようだが、部品の知識を身につけて各部品をいじりまわしていると、偶然優れた自動車ができるということはありえない。こういう考え方は製造業的で、誠実に仕事をしているときっと報いられる「専門バカ」のメンタリティである。コンピュータの仕事につく人にも、そのような職人的な人が絶えることがない。しかしパソコンのパッケージソフトの業界が極端な寡占化になった以上に、ネット上のビジネスモデルも優れたところが寡占化をする傾向にあり、職人的な人は減らざるを得ない方向にある。

残念なことにIT関係のスキルアップや資格制度も、今までのところ職人的なものの比重が高かった。いつの時代にも各分野で専門知識は必要でありつづけるが、それだけあればよいことにはならない。このデジタルメディアとネットワークの世界の浸透は、非可逆的なパラダイムの転換をも引き起こしているからである。それは今までコンピュータ産業が特権的なもので、効率的な「手段」を先に開発して、その応用を後でみんなが考えるものであったのが、「手段」はパソコンとネットによって普遍化してしまい、それを応用する側に重心が移っている。つまり「手段」ありきから、「目標」ありき、への転換が起こっている。

たとえば、CRMとかOneToOneを導入すると、DMのヒット率が高まるという考えがある。よその会社でヒット率が何%から何%に向上したかが問題なのではなく、自分のビジネスにおいて、「このターゲットに会社からのメッセージがどのくらい到達しているのか、いないのか」「改善の目標値はどれくらいでないと事業は健全でないのか」など「目標」が先に定まっていて、その手段としてCRMとかOneToOneがふさわしいのか、どんなビジネスモデルをすべきかと考えるのが筋道である。

つまり「目標」から手段としての「メディア」を考える人にならないと、うわべだけのクロスメディアのトピックスにいつも引っ張りまわされて、人まねをしているだけで、評価もされない、もうかりもしないビジネスに陥ってしまうのが関の山である。だから先駆者に学ぶべき点が多いのである。Googleをはじめ、ベータテストがオープン化されることが多いが、それらは現実のビジネスとしてのクロスメディアを勉強するもっともよい場ともいえるだろう。

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2006/07/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会