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専門分野の壁を越えて、再現性に挑戦すべし。

我々が覚醒している状態で肉眼で目のあたりにしている光景と、ハードコピーでもソフトコピーでもイメージングされたものの間には、まだ大きなギャップがある。よくプリンタの広告で、現物とプリントしたものを並べてそっくりに表現しているものがあるが、それはどちらもプリントされた状態なので同じに見えて当たり前である。しかし繊維にしろ美術工芸品にしろ、動植物であっても、現物と見まごうばかりのイメージングというのは遠い。

そうはいってもイメージングに関する技術は進んでいるのだし、このギャップに挑戦したらいいのではないかと考えるのだが、被写体とその再現という共通の課題をもっているところの写真分野/印刷分野/放送分野などは、それぞれが構築してきたビジネスの枠の中での品質改善を行ってきた。アナログの場合は入力から出力までそれそれ独自な技術を開発してきたので当然のことであったのだが、デジタルになるとCGと実写を違和感なく合成するような画像分野の境界を越えたようなテーマが次第に増えてくる。

今まではそれぞれの分野で十分なシステムであっても、もしデジタルの世界で汎用に使えないような画像及び画像システムであると、用途は狭まっていくことは間違いない。その分野は投資もされなくなって、いずれ他の研究開発が進んだ分野に飲み込まれてしまうだろう。

1980年代にハイビジョンが登場して、当初は産業応用ということでいろいろな試みがされたが、それぞれの応用分野で自分の用途だけを考えていたのでは、ディスプレイの部分だけが共通化しても全体としては効率的なものとはならなかった。むしろハイビジョンからsRGBの規格を引き出したマイクロソフトの方が多様な展開をすることが出来た。

最初の今後のチャレンジ目標に戻って考えると、色に関する規格化の動きをみても、人の目にとって見えるとか見えないということとは別に、計測可能なデータは最大限漏らさず残すという方向や、またテレビのカメラやプロジェクタをRGB+3色にしたようなナチュラルビジョンの取り組みなど、色に関する土台が変わり始めていることに気がつく。

色のコントロールや発光や色材の側から考えても、ナノテクノロジーは可視光の波長の領域であって、2005年の愛地球博でもグレーティング(回折格子)を使った2005インチのプロジェクタが登場したように、今後いろいろな分野のナノテクノロジーの開発成果の影響を強く受けることになるだろう。そうであると、この分野は随分夢のある世界であり、大きな夢を描いて発想を変える必要がある。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 2006年6月号より

2006/07/18 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会