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変曲点を迎えつつある印刷産業

■課題は残しつつも変曲点を向かえつつある印刷産業
 いま、印刷産業は二つの意味で変曲点を迎えている。印刷産業の事業所数は徐々に減少してきたが、その市場淘汰により供給力過剰が幾分調整されてきたことによる変化がひとつの変曲点である。これは、業界全体としては過去7年連続のマイナス成長にありながら、一事業所あたりの平均売上額の増加基調が固まるという形で現れている。
 もう1つの変曲点は、新しい事業の開拓が可能な環境がまさに今見えつつあることである。5、6年後に印刷物需要自体が減る局面を迎えると見られ、従来の延長での対応ではなく従来実施してこなかった施策の実践によって新たな競争力と収益源を獲得する必要がある。そして、2005年はそれを促進する環境が明確に見え始めた。
 上記の二つの変曲点によって、印刷産業の景況は底を打ちつつあり、2006年はこれから反転に向かい始める年ではないか見ている。2005年の印刷業界は、長らく続いた不振を脱して反転に向かう変曲点にさしかかり、中小印刷企業の収益性は全体としては改善しつつある。しかし、今後の経営環境を考えたときにクリアしなければならない課題については、いまだ手が着けられていないことが問題である。

■今後の2つの方向性
一方、メディアをめぐる環境は、インターネットと携帯の普及、高度化によって急速に変化し、印刷市場にも明確な影響を与えつつある。ただし、この変化を見るときには、技術がもたらす可能性だけからではなく、人間の情報に対する基本的ニーズを理解しておくことが重要である。
 今後、企業規模の維持あるいは拡大に向けての方向性として、
(1)減少に向かう紙媒体市場でのシェアアップ:ITの有効利用による印刷物生産、関連業務の全体最適化がその手段である。
(2)新たな事業領域拡大:メディアをめぐる環境変化の中で拡大するクロスメディア展開に関わることがひとつの分野であり、その期は熟してきたと言えよう。
 いずれにしても、印刷物需要はすでに成長から横ばいの局面に入っており、これからは減少に向かうことになるだろう。従って、中堅以上の印刷会社は、ITの有効利用による印刷物生産、関連業務の全体最適化やソフトサービス提供によって紙媒体市場でのシェアアップを図るとともに、メディアをめぐる環境変化の中で拡大するクロスメディア展開に関わり、新たな事業領域拡大にチャレンジすべき時がきた。

プリンティングマーケティング研究会『2006年Fact5月号』より

2006/07/27 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会