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オフセット平版印刷機の動向

オフ輪は多ページ・多数web化へ

 海外メーカーのオフ輪は大型化が進み、一台の機械から多ページの刷本を一度に出してしまう多ページ機の方向性に向かっている。
 それに対し日本は今まで1webで印刷していたものを2webもしくは3 webで印刷することにより多ページ機と同じページ数を印刷する多数webという方向性に向かっている。既存のスペースを考えると大型機は導入しにくいことも一因だ。
 このようなオフ輪が登場する背景には、製品の仕上がり仕様の多様化などがある。ページ数が多いフリーペーパーやフリーマガジンが増加し、スーパー・百貨店などのチラシもB縦全判機を使用したB全折(B4×16P)からB縦半裁機を使用した同じページ数のタブロイド判にシフトされてきている。従来の工程から丁合いが一加工増えていることもあるが、工程が増えたからといって納期が延びることはない。したがって、いかに生産効率をあげるかを検討すると、二台接続構成でインラインという流れの中で付加価値をつけて効率よく納める工夫がさている。

シャフトレス技術の応用

 従来からオフ輪は、印刷ユニットにギアボックスを置き、それをサイドシャフトで繋いで同調させることによって機械を駆動させていた。これに対し、シャフトレス技術が発達し個々の印刷ユニットを別々のモータ駆動で同調させる技術が確立している。これにより機械の配置の自由度と生産性の向上などかなりのメリットが出ている。また、後加工の付帯機器もシャフトレス技術を利用した制御が普及してきている。
 また従来のシャフトで繋いだ場合、すべて同じスピードで個々の調整をやらなければならないので刷り出し時にかなりの損紙がでていた。しかしシャフトレス技術を用いることによって、刷り出し時の各装置間の張力制御が可能となった。すなわち部分的に速く回したり遅く回したりできることで、紙を常に一定のテンションを張るという制御が可能になり損紙の低減にもつながっている。
 そうした中で、シャフトレス技術によって2階建てに二台接続した機械構成が可能になった。2階建ての場合従来の機械だとシャフトで繋ぐには縦軸を設けなければならず技術的にもかなり難しかった。
 しかし、シャフトレス技術を使うと上下の機械を別々の運転をすることも可能であり、また上下の機械を同時に運転して2枚の用紙を後加工部で丁合することにより、一度に倍のページを印刷こともできる。さらにページを増やしたければもう1台繋ぐこともできる。狭い日本の国土の中ではこうした2階建てにすることもひとつの考え方だ。

多様化する製品仕様に対応できる枚葉機

 一般的に多くの場合、枚葉機は油性プロセスインキで印刷する機械として使用されているが、厚紙のパッケージや商業印刷でもインラインでコーティング加工することによりインパクトの強いものを印刷する枚葉機が発表されている。
 こういう枚葉機が開発された背景には印刷機械メーカーに対しエンドユーザーから求められる製品仕様の多様化にいかに応えるかというところにあった。例えば高級な化粧品のパッケージは表面にはベタの印刷とコーティング加工をして裏面にブランドのロゴを入れるというものもある。従来はこういうものを複数回通していたが、これをワンパスでやりたい。しかも、同じ印刷機で斤量の薄い紙から厚紙、蒸着紙やフィルムなどの特殊原反への印刷を両面印刷したいという要望がでてきた。こういう要望に応えて厚紙・特殊原反対応でかつ新しい反転機構を採用した両面機で15000回転のスピードを出せる機械も登場している。
 厚紙の仕事に特化していれば機械の調整はすぐにできるが、薄紙も厚紙もとなると従来の機械では調整は難しい。しかし、印圧調整は紙の厚みの数値を入れれば自動的に決まり、手作業でこの紙の厚みに対して調整する必要がなくなった。このことからオペレータへの負担が大幅に軽減された。

両面機の抱えていた課題を改善

 両面機の場合は表と裏の品質の違いが問題になっていた。通常の油性インキでは表に印刷して反転させたとき後の印刷ユニットの圧胴にインキをもっていかれないように特殊なジャケットを必ず巻いている。これで裏と表の品質は先刷り面と後刷り面とで同じ印刷をやっても差がなくなったが、厳密にいうと若干違いはある。 
 この問題を解決するにはUVインキを使用することになる。これにより圧胴ジャケットは必要なくインキを取られない。また、両面用のジャケットは約2000万枚で交換しなければならず交換には時間とコストがかかっていたが、UV技術を使うことによってこういうものが一切いらなくなるというメリットがある。
 最近の新しい厚紙対応の両面兼用機の中には用紙厚に応じ、形状可変タイプの用紙送り胴が装着されるものもある。これは用紙厚が0.4mm以上になると自動的に円筒形から楕円形に反転後のトランスファーシリンダーに形状が変わるものだ。従来、枚葉機ではシリンダーの形状を変えることはなかったことから新しい考え方といえよう。これで薄紙でも厚紙でもオペレータが特に細かい調整をする必要もなく、また印刷物の表面にキズもつけることなく、薄いものから厚いものまで両面で印刷できる。

新しい箔押し技術

 表面コーティングなど、インライン後加工装置を装備した枚葉機は印刷会社には数多く導入されている。その主な目的は生産性アップや他社との差別化をすることだ。最近の後加工の新しい技術としてはインライン箔押し装置を装備した印刷機が注目を集めている。これはホットスタンプよりも簡単に、かつオフセット印刷機上でワンパスで生産できるようにというコンセプトからコールドフォイル技術が応用されている。
 まず、一胴目で専用の糊を用紙に印刷する。この糊はインキと同じように通常のPS版でオフセット印刷される。次に2胴目の上にフォイルの巻きだしローラーが取り付けられている。そこから巻き出されたフォイルが印刷ユニットの中に送り込まれ、ブランケットと圧胴の間を通過する。その際に1胴目で糊が印刷された用紙と重なり加圧により糊がついた部分のみに箔が転写され、残ったフォイルは3胴目の上にある巻取りローラーにフォイルが巻き取られる。3胴目以降は通常の印刷ができる。インライン箔押し装置のシステムが装備された印刷機でも箔押しをしないときは通常の印刷をすることが可能だ。通常の印刷から箔押し、箔押しから通常の印刷への切り替え時間は約30分以内で済む。

箔の上に印刷

 当初のインライン箔押し装置は用紙と同じ幅のシングルリール方式だった。しかし、シングルリールの場合箔押しする面積が少ないとフォイルの無駄が出るため、これを省くために開発されたのがマルチリール方式だ。これはフォイルの節約にもなり、また付随的なメリットとして、異なる種類(例えばホログラムなど)のリールをひとつの用紙に同時に転写できる。このマルチリールでは最大で5種類装着できる。
 このインライン箔押し装置ではシルバーの箔の上に多色印刷できるのでいろいろな絵柄の表現ができる。また、糊がインキと同じ扱いのため箔押しの見当調整をすることができ高精細な網点での箔表現を通常のオフセット印刷のスピードで加工が可能である。

非価格競争をめざす営業活動

 このような新しい機械を導入しても以前と同じような営業を展開していたのでは機械の能力を十分に発揮できない。機械をうまく稼動させるには、印刷物をどのように印刷・加工して製品化するかというアイディアがなければならない。
 例えば、高級化粧品関係のパッケージは厚紙へ両面印刷という複雑な技術が使われ、また商業印刷でも特殊ニスを刷り合わせて独自の絵柄を表現し、箔の上に印刷して効果的にメタリック調を表現するなど、さまざまなアイディアがある。これらは刷り方・加工そのものが会社のノウハウだ。
 UV・両面印刷技術や後加工技術をノウハウとして定着できればそれは印刷会社にとって大きなメリットになるはずだ。価格競争は日常の営業活動の中では多くあるが、アイディアそのもので営業展開できるチャンスがあれば、価格競争だけではない部分で適正な価格で受注できる可能性がある。

2006/08/22 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会