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フォーム・その他印刷の動向

技術開発に貢献するサーボ技術 

 近年、フォーム印刷機やラベル印刷機はサーボモーターの技術を応用した機械が登場しており、従来からの機械の機構をベースに特にフィニッシングシステムの充実が目立つ。従来技術では印刷機のシリンダーを動かすためには各ユニットにギアボックスを装備しサイドシャフトを介して各ユニット連結させて駆動させるというギア駆動をとっている。
 それに対して最近の機械は各ユニットの駆動を独立させてサイドシャフトがなくてもユニットを駆動させることができるセクショナルドライブ方式のサーボモーターを使用している。
 印刷機へのサーボモーターの導入はすでに20年以上経過している。しかし、当時はサーボモーター自体が非常に高価だったことや、また、印刷見当をあわせるためには各ユニットのサーボモーターをそれぞれ完全同期させなければならず、当初は各ユニットが独立して回転するため、現在よりも印刷見当精度に問題があった。
 そのため、見当を合わせるために人間が手動でやっていたが、サーボモーターが各ユニットの位置がどこにあるかを自動認識できるようになった。このことから操作性において、複雑なメカニックを廃止して電子的に制御できるようになり見当精度もあがった。その結果、ギアが磨耗するということもなく保守が楽になり、騒音も低くなった。しかも、サーボモーターのコストも安くなったことから、フォーム輪転機、ラベル輪転機ではサーボ技術を応用した機械が登場していきている。

固定観念にとらわれない印刷機

1.間欠印刷機
 フォーム印刷機では交換胴と呼ばれるサイズ毎のカセット式のシリンダーが用意されているが、最近では1つのシリンダーでバリアブルなサイズの印刷を行う機械が登場している。それらの機械にもサーボ技術が使われており、間欠搬送方式によりさまざまなサイズの印刷をすることができ、小ロット、多品種、短納期生産に対応できる。
 また、交換胴やシリンダーなどの在庫が不要になり設備コストが軽減できることや工場内の保管スペースが減ることにより、作業効率にも有効であるなどのメリットがある。

2.コンビネーション印刷機
 ひとつの印刷機でフレキソ印刷、凸版印刷、オフセット印刷、ロータリースクリーン印刷など様々な印刷方式を柔軟に対応できる印刷機もある。それぞれの印刷ユニットがカセット式になっており、印刷ユニットを取り外して別の版式をひとつのラインで組み合わせることができるコンビネーション輪転機である。これにもサーボ技術が使われており、準備時間も短く作業できる。
 固定観念にとらわれない発想から生まれた機械だ。1台の機械で版式を変えて印刷できることからラベル印刷の他、紙器などにも対応できる。

複雑な後加工もインラインで

 機械メーカーは付加価値を高めていくために今までの加工技術を応用して複雑な加工もワンパスで最終製品に仕上げることができるようなバリエーションをもった機械を製作している。
 連続フォームは印刷後にインラインで巻き取って丁合やナンバーリングをしたり、圧着ハガキを作るために折って糊をつけてまた折ることができる。
ラベル印刷は細かい後加工はできなかった。しかし最近は例えばペットボトルに貼られている2重のシールで当たりハズレがでるという多層ラベルのような複雑な加工をインラインで最終製品に仕上げることができる。
 従来、フォーム・ラベル印刷の後加工作業には多くの工程があった。そのためにコストも時間もかかっていたが、加工技術の向上が製品の多様化につながり、コストと時間の削減と顧客サービスに繋がった。

フレキソ印刷の品質向上

 日本でフレキソ印刷の約7割はダンボール印刷だ。その他はスーパーマーケットのビニール袋などマーキングを中心にした簡単な印刷が多い。しかし、最近は印刷機の性能や関連機材の改良が進められ、フレキソ印刷の品質もあがってきた。
 フレキソ印刷の品質向上の要因としてあげられるのがアニロックスロールの改良だ。アニロックスロールは凹んだセルが並んでいるインキングロールである。そして、フレキソ印刷で重要なのがセルと版のスクリーン線数との関係である。
 フレキソ印刷では版上のスクリーン線数の最小網点がアニロックスのセルに埋まらない程度の大きさのドットが適当といわれている。これにより安定したインキを供給できる。もし、セルより版上の最小網点が小さいとセルの中に網点が埋まり適正なインキ供給ができなくなる。
 ダンボールへの印刷の場合、アニロックスロールのスクリーン線数は200線を使用し、版上は40線で印刷される。しかし、最近はアニロックスロールも高細線化が進み最高で1500線のものも出されている。これにより、版上のスクリーン線数は250線での再現も可能になった。
 また、従来のアニロックスロールが鉄心だったため交換作業に時間を要した。最近ではスリーブ化されたため交換が簡単になりその分ローラーの洗浄など他の作業もでき効率アップにも繋がった。

フレキソ製版ソフトの充実

 フレキソ版もCTPの出現により細かいスクリーン線数にも対応でき、またスリーブ状になっている版に直接レーザーで露光するため見当精度もあがった。また、フレキソに特化した製版用のソフトウエアがいくつかでており品質向上の重要な役割を担っている。
 フレキソ印刷ではベタの部分の再現に問題がありインキが泳いだような模様がでる。それを避けるために従来技術では90数%の網を入れることが行われてきた。これに対し、プレート上にグラビアのようなセルを形成させ、このセルの形状や大きさをコントロールするソフトも開発されている。これによりベタ部分のインキの泳ぎも解消し、抜き文字も鮮明に再現されるようになった。
 フレキソ印刷はハイライト部分の再現にも限界があり、版上の最小網点を従来は数%までしか再現できなかったが、これ以下の網点を再現するために再現可能な最小網点を決定し、網点を間引くことにより再現するスクリーニング方式もでてきている。
細字の太りを調節するソフトもある。これまでは、製版のデータを作成する際に、デジタルデータ上での処理を行い、予め太りを予想し細らせる手法と取ってきた。日本語はひとつの文字の中にも太さの変化があり、一定の割合でデジタルデータを処理してしまうことで、文字のなかの細い部分が欠けてしまう問題があった。これに対し、フィルム製版を行う際にオーバー露光を積極的に利用し、コントロールすることで文字の一番細い部分の再現を可能にしたものだ。
 このようにフレキソ印刷はハード面やソフト面からさまざまな改良がなされている。これからはダンボールなどのマーキングだけでなく、オフセット印刷でやっている紙器・シールラベルなどの分野にも今まで以上に進出が期待される。紙器はロットの短いものは枚葉機で印刷されることが多く、面付けすると紙面に無駄なペースができることもある。しかし、フレキソは輪転で印刷するため損紙などの材料の無駄を削減することができる。
 また、フレキソ印刷に向いた特殊原反への印刷に取り組もうとしてフレキソ印刷機を導入しているグラビア製版会社もあることを考えるとフレキソ印刷のシェア拡大が予想される。

フィルムへの印刷はグラビアが主流

 海外ではフィルムへの印刷はグラビアとフレキソが共存しているが、日本ではグラビアが主流だ。その理由のひとつとして、日本はフレキソに比べグラビアの製版代が安いことがある。欧米では一本の鉄心に彫刻して刷版し、一度作業が終わると使い捨てだが、日本はバラードメッキで、何度も剥がして使うことができるため、トータルのコストを安くできる。
 品質も平均してみると、グラビアの方の評価が高い。しかし、グラビアインキは溶剤系を使用していることが多いため、依然として環境対策への課題は残されたままだ。今後、フレキソ印刷・水性グラビア・という選択肢もあるが、現時点では大きな変化はないようだ。

取材協力:椛セ陽機械製作所、他

2006/08/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会