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再構成されるべき、メディアビジネス

日本ではパソコンの歴史とともにあった「月刊ASCII」がなくなる。一方で「アスキービジネス・ITスキルアップ」という月刊フリーマガジンが始まっている。アスキービジネスは定価1000円と書いていあるが、実質的には職域配布のフリーマガジンである。また、アスキービジネス・オンラインというWeb版もある。この夏には「東京IT新聞」というタブロイドのフリーペーパーも登場した。その前にワイズノット社からNEXTWISEというフリーのインターネット関連ニュービジネス月刊誌が出ている。

パソコンがこれだけ広まったのに、パソコン雑誌は終焉に向かうといわれている。人々がパソコンを使えるようになると、雑誌を買わなくてもネットで情報を得られるからなのか? ならばどうして紙媒体のIT系インターネット系のフリーマガジン・ペーパーが出てくるのか? 理由の一つは広告である。市販の雑誌が広告も含めて200ページほどもあるのと比べると、これらR25的な厚さのフリーマガジンは薄いのだが、R25と同様に濃い内容で興味を持って読みきってもらうことを狙っているので、読者をひきつけ、ひいては広告価値が出てくる。

それでも、有料がだめで、無料ならいい、というのは腑に落ちないところがあるのではないだろうか? しかし無料なら人々がどんどん読んでくれるというわけではなく、人に読まれないですぐに消えるフリーマガジンも多くある。そのビジネスが続けられるかどうかは、内容にかかっている。とすると、有料誌の衰退の理由は、その内容が面白くなくなっただけなのだろうか? ネット上で情報が先にダイナミックに大きく流れることで、おそらく雑誌を面白くするための編集環境が変わって、いままでの編集体制がついていけなくなっている一時的な現象ではないかと思う。なぜなら、ネット上でも持続的に面白いサイトを運営するには、やはり「編集」能力が鍵であるからだ。

つまり、読者やライターが先にネットの世界に軸足を移したのに対して、編集・出版側のネット上でビジネスをする体制が遅れているという印象がある。ネットの住人とうまく付き合う仕組みを持ったAmazon.comで本が売れるように、オンラインであれ紙媒体であれ「雑誌」をネット上で広めるには新たな工夫が必要になる。(本なら、中身検索で部分立ち読みというプロモーション方法もあるが、雑誌はもともと立ち読みで終わってしまうようなものだから)

今のところ、今の編集者が能力を発揮できるのは紙媒体なので、紙媒体を維持する方法としてフリーペーパー・フリーマガジンという形態が選ばれているのだろう。だからフリーペーパー・フリーマガジンが今後順調に推移するのかしないのか、実際には予測しがたい。面白いのは、次第に情報発信はみんなネットと紙の両刀使いになりつつある点だ。将来どうなるかはわからないが、コンテンツ側から内容にふさわしいメディアを決める縦割りの情報伝達ではなく、読者の側のTPOに合わせて、同じ内容をいろいろなメディアを駆使して伝えていくことで、情報伝達の高度化をしようという流れにあることがわかる。

プロモーションを考える際に、AIDMAとかAISASなどのような段階を踏むが、読者のTPOを機軸に考えると、それぞれの段階にふさわしいメディアがあるのだが、一方で読者を追跡している側からすると、読者が折々に接するメディアが異なっても、一貫した縦糸も持っていなければならないことになる。異メディアを貫く縦糸がクロスメディアマーケティングになるといえる。ASCIIの新たな展開を見ても、販促に関係したメディアは、この視点で再構成されようとしている。

2006/08/31 00:00:00


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