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目にやさしいフォントを開発-イワタUDフォント-

フォントメーカーであるイワタは、「年齢・性別に関係なく、また障害者も健常者もあらゆる人が商品やサービス、住居や施設など快適に利用できるように配慮されたユニバーサルデザイン(UD)」のコンセプトを取り入れた新しいフォントを開発した。同社取締役技術部長の水野昭氏にイワタUDフォントについてお話を伺った。

―ユニバーサルデザインフォントを開発した経緯とその目的は、どのようなことなのでしょうか。

イワタUDフォントは松下電器さんとの共同開発になります。松下電器さんが主に仕様を作りまして、当社がフォントを制作しました。
松下電器さんでは、同社の製品などに印刷されている文字が見えづらい、あるいは誤読してしまうというユーザーからの声が寄せられることがあり、そういった声に耳を傾けてユニバーサルデザインの視点からUDフォントを研究していたということがあります。2年ほど前からは実際にUDフォントのベースとなる各メーカーのフォントを調査しており、今回は和文フォントでは当社の新ゴシック体、欧文フォントではURW社のF015が選ばれました。そこで、松下電器さんからお話があって、1年ほど前からこれらのフォントをベースにUDフォントの開発、製作に掛かりました。
しかし、こういった問題は松下電器さんだけの問題ではありません。現実にはこれからますます高齢化社会が進み、それに伴う老眼や白内障など、あるいは視力の衰えと、さまざまな障害をもつ人が増えている状況があります。
また、今、市場に出ているさまざまな商品は、多機能・高機能化し、小型化やデジタル化も進んで、紙媒体だけではなく、電子メディアなど文字を使った表示伝達がますます増えています。そのため、文字を情報伝達の手段として使用するものでは、見えにくい、誤読の恐れがあるといった障害を取り除くことが重要になっています。そういう意味で、障害をもつ方には読みやすく、健常者も違和感なく見ることができるフォントが必要なのです。

―電機製品に印刷されている文字が見づらいとは、どのようなことを指すのでしょうか。

電機製品にはいろいろと指示や機能を表示する文字が印刷されています。例えば、テレビのリモコンであれば、小さいスペースに電源や音量、チャンネルの数字などの文字が印刷されています。このような文字が、弱視の方に限らず、健常者でも見づらかったり、文字によっては誤読したりするというようなことです。
これらはスクリーン印刷で印刷されることが多いわけですが、それらの印刷で表示される文字の視認性、判読性の改善ということが一番目の理由としてあったと思います。しかし、その先にはスクリーン印刷の表示以外にも、液晶画面での表示なども視野に入ってくるでしょう。

株式会社イワタ

『プリンターズサークル』10月号より

2006/09/29 00:00:00


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