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カラーユニバーサルデザインを支援する「カラーUDパレット」を開発

株式会社地理情報開発では、カラーバリアフリーおよびカラーユニバーサルデザインを支援するツールで、Adobe Illustratorのプラグイン「PlugXシリーズ」の新製品として、「カラーUDパレット」を開発、10月に発売する。この製品の開発経緯と、カラーユニバーサルデザイン(以下カラーUD)の現状について、同社専務取締役の小林和正氏、開発に当たった同社取締役技術部長久保田秀徳氏と、この製品の企画・開発協力を行った村上葉子氏にお話を伺った。

この記事では色覚特性についての呼称は、医学用語である「1型色覚、2型色覚、3型色覚、色覚異常」という用語を使用しております。

日本の色覚異常者の現状

一般的には色盲、色弱といった呼称が使われることが多いが、医学用語では色覚異常と言う。色覚異常には3つパターンがある。まず一般的に赤緑色盲と呼ばれるものが1型色覚と2型色覚である。緑の感度が弱いのが2型色覚で、色覚異常者の全体の75%を占めて一番多い。逆に赤の感度が弱いパターンが1型色覚で色覚異常者全体の25%を占める。1型色覚は赤が暗く感じるので、黒と赤の組み合わせが特に見づらく感じる。このほか1型色覚、2型色覚とも黄緑とオレンジ、水色とピンク、青と紫などが見分けにくい。3型色覚は青の感度が弱く、青と黄色が見分けにくいパターンで色覚異常者全体の約0.02%となる。ただ、色覚異常にも個人差やその強弱によって、見え方は変わってくる。また、高齢者に多い白内障の人も、色覚に関する不便を感じている。今後、高齢化社会の進展で、このような患者が増える可能性もある。
では、現状日本にはどの程度の色覚異常者がいるのか。実に男性の場合は20人に1人(5%)の割合で、女性の場合は500人に1人の割合と言われており、日本の人口比から300万人以上の色覚異常者がいると推定される。また、白内障については60代で80%、80代ではほぼ100%と言われている。このように色覚異常者は、実は決して少ないわけではなく、その意味でカラーUDの必要性が高くなっていると言える。

バリアフリー製品とプラグイン開発に実績

同社では、以前から視覚障害者のための触地図を研究していた。触地図とは、点字を埋め込んだり、立体的な表現を使ったり、音声などを駆使し、例えば鉄道路線図なら手で触る感覚を変えて、その路線は何かが分かるようになっている地図である。このように、特に視覚障害者の地図活用については研究を重ね、各種の実績を積み重ねてきており、例えば、同社のバリアフリー地図ソリューションは、バリアフリー情報には不可欠な場所の情報を実際に調査し、 地図を用いた情報発信のソリューションを提案している。実際にいくつかの自治体で採用されている。
また、同社ではもともと地図製作用などに、Adobe Illustrator用のプラグインソフトをいくつも開発・製品化しているという実績があり、このような取り組みを知ったグラフィックデザイナーの村上葉子氏から、色覚異常をもった人たちに向けたデザインを行う場合の、デザイン支援ツールを開発したいという依頼があり、今回のIllustratorのプラグイン「カラーUDパレット」の開発につながった。
今回、この企画を持ち込み、開発の協力を行っている村上葉子氏は、専門学校の講師をしているが、教え子の中に色覚に異常をもっている生徒がいた。この生徒は電気工事関係の仕事をしたかったが、コードの色が見分けられないためにできなかった。コードの色を分かるように変えればよいのだが、それができていない。現状の社会では色覚異常者に対する配慮が足りないということを感じた。このことから、カラーUDの必要性を感じ、大学院で視覚バリアフリーと色覚バリアフリーをテーマにしてデザインの研究を行った。
「いざカラーUDに取り組もうとしても、どうやったらいいのかが分からない、あるいは調べるのが大変、使いたい色が使えなくなるかもしれないというような反応がありました。デザイナー自身も色覚異常者に対する意識や、どのように見えているかという知識をもっている人がほとんどいませんし、いざカラーUDに取り組もうとしても、それを支援するツールが十分ではなかったので、デザインするのに非常に手間が掛かるということがありました。こういった状況をなくすためには、ちょっとした変更で、それほど大変な作業をしなくてもデザインすることができる、ということを確立しないと広まらないと思い、カラーUDパレットを企画しました」(村上氏)

株式会社地理情報開発 〒102-0081 東京都千代田区四番町4-8 野村ビル4F
TEL 03-3556-9908 

『プリンターズサークル』10月号より

2006/09/30 00:00:00


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