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PrintTalkの概要

印刷物の電子商取引といってもまだまだピンと来ない状況ではあるが、国際的にはPrintTalkという取引データ交換用の標準フォーマットが提唱されている。PrintTalkの生い立ちと概要を紹介する。

生い立ち

PrintTalkが誕生したのは、アメリカの印刷関連e-コマース企業にまだ元気があった2000年のことである。Noosh、Collabria、Impresseなどのe-コマース系企業と印刷業向け管理システム開発業者が中心となり開発された。そして、開発に携わった企業を中心にPrintTalkコンソーシアムが設立された。PrintTalkはXMLベースの規格であるとともに当初から受発注における印刷物の仕様表現にJDFを利用することが想定されており、JDFとの親和性は非常に高い。また、見積り依頼、回答、購入注文といった商取引の手続きについては、米アリバ社が開発したBtoBの電子商取引規約であるcXMLをベースとしている。
ちなみに、当時の印刷e-コマース企業のもう一方の雄がPrintCafe社であり、同社はPCX(printcafe eProduction eCommerce eXchange)というPrintCafeのシステムと他社システム(e-コマースや印刷会社独自の管理システム等)とを連携させる標準的なインターフェース仕様を提唱しており、JDF対応も表明していた。2000年9月にシカゴで行われたGraph Expo展では両者のデモンストレーションが活発に行われ話題を呼んだ。
その後、PrintCafe社はEFI社に買収され、PCXの名前を目にすることはなくなった。一方で、PrintTalkの仕様は、2004年からCIP4が管理することになり、JDFとPrintTalkの仕様は今後とも整合性がとられることとなった。それとともにコンソーシアムとしてのPrintTalkはその役目を終えCIP4に吸収されることとなった。

仕様の概要

PrintTalkの構造は、大まかにヘッダー要素、リクエスト要素、JDF要素にわけられる。ヘッダー要素には誰から(From)、誰へ(To)と通信の仲介業者(Sender)の三者を定義する。ビジネスの当事者であるFromとToに加え、e-コマース企業を想定したSenderを定義するところが特徴的である。また、BtoBの電子商取引では、取引相手が信用できるかどうかを認証する仕組みが非常に重要となる。PrintTalkでは認証の仕方はcXMLを踏襲している。
リクエスト要素には、取引相手に要求するビジネスの内容(ビジネスオブジェクト)を定義する。PrintTalkでは、RFQ(見積り依頼)、Quote(見積り回答)、PurchaseOrder(購入注文)、Invoice(請求書)、Confirmation(確認)、Cancellation(取り消し)、Refusal(辞退)、OrderStatusRequest(注文状況確認依頼)、OrderStatusResponse(注文状況報告)、ProofApprovalRequest(校正承認依頼)、ProofApprovalResponse(校正承認回答)というビジネスオブジェクトが定義されている。一つのPrintTalkドキュメントのリクエスト要素には、一つだけのビジネスオブジェクトが指定される(例えば、見積り依頼と購入注文を一度に行うことはできない)。
そして、JDF要素には、発注したい印刷物の仕様を表現したJDFが格納される。JDFは、製品仕様の定義をIntentリソースというものを用いて行い、製造工程の定義をProcessリソースというものを用いて行う。製品仕様と製造設計とが明確に分けられているのが特徴である。発注者は製品仕様だけを指定すればよく、印刷業者は製品仕様の情報に製造で必要な情報を付加して製造工程へ流すという流れになる。
JDF1.3の仕様で定義されているIntentリソースは以下の通りである。

各インテントリソースには、それに関する詳細項目が定義されており、例えば用紙の情報を指定するメディアインテントでは、銘柄(StockBrand)、米坪(Weight)、流れ目(GrainDirection)といった基本項目に加え、古紙配合率(RecycledPercentage)や支給紙かどうか(BuyerSupplied)といったかなり細かい項目まで定義されている。XMLはスキーマ定義により必須項目と任意項目を決めることができるので、詳しい情報が事前にわかれば指定するし、わからなければ無視するという非常に柔軟な運用ができる。従来のEDIのような固定長データでのデータ交換と異なる利点といえる。

なお、2005年9月にリリースされたJDF1.3より価格(印刷物の値段)に関する情報は、すべてPrintTalkで扱うことになった。しかし、現時点でのPrintTalkの最新バージョンは2003年1月に発行された1.1aであり、このなかでは価格に関する情報はJDFの仕様を利用することになっている。したがって、仕様の空白が生じた形になっており、PrintTalkの改訂が待たれる。

2006/10/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会