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フォトショップワールド[Photoshop World ]2006報告


Photoshop world conference & expo 2006 BIG DEBAT (フォトショップ・ワールド・カンファレンス&エキスポ 2006 ビッグデバ) が11月28、29日東京流通センターTRCで開催されたので簡単にご報告させていただく。「年末呉服大処分市でもないのに、なぜ流通センターか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思うが、米Adobeシステムズ社のシニアクリエイティブディレクターであるラッセル・ブラウン(Russell Brown)氏のスケジュールが変わり、押さえていた会場をキャンセルせざるをえなくなり、急遽新しい予定で別会場を間に合わせたという経緯があるようだ。それくらいVIPなラッセル・ブラウン氏は昨年のボクサー姿に続いてジョニー・ディップの海賊(版)という出で立ちでキーノートに登場した。嫌味な言い方をすれば「鼻についた」感は否めず、CS3をチラッと見せた以外は「TIPSを紹介されてもねぇ」というのが正直なところである。しかし世の中の変化が早過ぎるデジタル時代にあって水戸黄門的な安心感も悪くないものである。
写真:会場の様子
「フォトショップ・ワールド・カンファレンス&エキスポ 2006」の様子

■Photoshop worldとは

Photoshop worldイベントはAdobeシステムズ社がダイレクトにハンドリングしているわけではなくNAPPJ(株)と(株)玄光社が主催 している。(本国のNAPPは、例は古いがScitexユーザー会的な戦略的な位置づけである)フォトレタッチソフトの代表格であるAdobe Photoshopを中心に、画像処理技術をレクチャーするためのユーザーイベントであり、日本では昨年に次いで2回目の開催となる。クリエイターらによる29以上のセッションが開かれるほか、アドビ システムズ(株)をはじめ25以上の企業が出展するエキスポ会場も用意されている。SAMSUNGが話題の158,000円也のAdobe RGB対応モニターを展示していたのが特に目を引いていた。また電塾コーナーをはじめ主要ブースではセミナーも活発に開催されていた。
写真:注目のAdobe
注目のAdobe RGBモニターも展示

■キーノート

キーノートには、まず米Adobeシステムズ社のクリエイティブソリューションズ ビジネスユニット シニアバイスプレジデント、ジョン・ロイアカノ(John Loiacono)氏が登壇し、「Photoshop Worldはワールドワイドで展開しているイベントの一環という位置づけで、米国では東と西の海岸で行なっている」とその規模の大きさをアピールしていたが、前述したようにユーザー会から発生したというイメージを昨年は大切にしていたのとは少々イメージが変わってきている印象だった。このロイアカノ氏は、米サン・マイクロシステムズ社に20年勤めてきた人物で、今年3月に前社のソフトウェア担当エグゼクティブ・バイスプレジデントを辞して、Adobeシステムズに移ってきたということであった。いままでエンタープライズ側にいた人間が、コンシューマー側の代表製品であるPhotoshopを語るというのも時代が変わったことを象徴している。ちなみにAdobeシステムズに移って最初に担当しているのはビデオ製品ということで、この辺もAdobeが目指す舵の向きを匂わせている。
ロイアカノ氏はマクロメディア買収後のAdobeシステムズについて「エンタープライズやウェブの領域にまで製品を展開するようになり、製品ポートフォリオの完成度が高まってきた」と語っている。具体的に言えば「FlashソリューションとApolloテクノロジーをAdobeのコアにしていきますよ 」ということであろう。オマケ的ではあったが、Photoshopのオペレーションもおぼつかない手つきでデモンストレーションしてくれた。Photoshop world的なコメント(印刷業界から見れば)では、10月19日に日本語版ベータ4の配布が始まった写真管理ソフト『Adobe Lightroom』に触れ「すでに50万件以上のダウンロードがあった」と語り、バブリックベータでは公開していない機能も含めて若干のデモを披露してくれた。暗室(Darkroom)から明室(Lightroom)へというかつての印刷業界のようなキャッチフレーズであるが、Photoshopは一点一点の画像補正は完成域にあるが大量処理という切り口が欠けていた。この大量の写真をバッチ的に処理していくのがLightroomでカバーしていくという説明だった。しかしあくまで主体はカメラマンという発想であり、「前工程から印刷業界へやってくるデータが完パケ(PDF/Xのような100%編集済みでタダ印刷するだけのデータ)になる」ということを前提とする発想である。印刷業界として新たなるワークフローをどう構築していくか?未来的且つ現実的な対処が必要になってくることを強く感じた次第である。
デモは写真の一部をマウスでクリックし、その場でドラッグするだけで指定した色をすぐに調整できる色補正の機能。マウスドラッグと同時に、対応する色のスライダーやヒストグラム、Photoshopに備わっている「スタンプツール」や「修復ブラシツール」といったゴミ取機能が紹介されたが、キーワードを入力し、スタンプを押すような感覚でライブラリの写真をクリックしていくと、次々と写真にタグが付けられる「キーワードスタンパ 」の方に、よりLightroomらしさを感じる。いずれにしろPhotoshopはLightroomと合体していく方向に向かうのは間違いがないのだろう。

■Photoshop CS3は5秒で立ち上げ

Adobeシステムズ社は動画とのリンクを強調していたが、印刷業界としては動画もさることながらCGの利用と合わせて、画像レタッチを考えていかねばならないだろう。ラッセル・ブラウン氏のデモはいつも通りのパフォーマンスに溢れるものだったが、「CS3をMacintelで立ち上げるのに5秒以内というデモ」以外は取り立てて説明する内容でもない。このスピードもAcrobat6.0から7.0のように初期機能を外してしまえば早くなるので、絶対値の評価はできない。しかしVistaをMacintelで動かしてみたときのサクサク感を考えれば、Windows同等以上のスピードは得られるはずである。Photoshopの向かう先は明らかに動画市場やハイエンドアマチュアカメラマンが対称だが、そんな時代に印刷業界がどうやってPhotoshopを含むAdobeアプリと付き合っていくか?再度考えさせられるPhotoshop world conference & expo 2006 BIG DEBATであった。

2006/12/01 00:00:00


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