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「目から鱗」のデジタルカラー

印刷関連でボーンデジタルがいち早く実現したのがデジタルカメラであることはいうまでもない。その画像データを取り込んだ印刷ではCTPまでデジタルのまま進むので、印刷物もクリアになった。露光条件がいびつでない限り、素人でも撮影した姿に近い印刷物ができる。このことは世界共通で、アメリカでも中国でもカラー印刷物の水準は高まっている。

しかしデジタルできれいになるのは印刷だけではない。デジタル放送になって家庭にあるプラズマや液晶ディスプレイに映る映像は、放送局の内部にあるモニターのそれと原理的には一致するものである。つまりテレビカメラマンが撮ったものが劣化せずに見ることができるようになり、画像表現は格段の進歩を遂げ、画面ってこんなにきれいなものなのかと、「目から鱗」の思いをした人も多いだろう。

それだけではない。今の映画はSFでなくても実写とCGを合成することは普通に行われるようになり、見ている人もどこがCGであるのか区別がつかない。マンションのチラシも同様で、よくよくみればCGだとわかるのだろうが、通常は気にかかるようなものではない。カタログなどにある工業製品の写真もすっきりきれいなものはCGで作られていることが多い。

CGの発達というのは人の目に映る「モノ」の質感を、コンピュータのアルゴリズムで表現できるようにする技術の発達である。その積み重ねの結果、今日非常に多くの物質の質感がアルゴリズムで再現できるようになった。Photoshopでもいくらか演算で加工できるようにはなったものの、実際の使われ方はアナログ大きな変化はない。

たとえば画面の中の光源の位置を変えることは、平面を扱うPhotoshopではできない。だから金属の表面の反射具合をレタッチで修正することは困難だが、CGであれば自由にできる。GIFのような低解像度の人物画像を拡大・高解像化する方法もある。人物モデルの構造データに対して、シンセサイザのサンプリング素材のように低解像度の画像をサンプリングとして使い、CGで高解像の描画をするものを開発したところもある。

またかつてのCGは、金属やプラスチック、無機質なものなどは得意でも、動物や有機質のものは違和感があったが、それらのモデル化というのも非常に進んでいる。これはアニメ映画が「ぬいぐるみ」みたいになってきていることからもわかる。いろんな質感が絵筆のように道具化されて、本物よりも本物らしく表現するには、写真を元にレタッチするよりもCGで最初から行った方が、いかにもそれらしく仕上がるのである。

ボーンデジタル時代には、出来の悪い素材を中間工程で調整していくような情報加工は減り、最初の「ボーン」ところが質の決め手になるように、ワークフローも変わっていく。今までの画像のプロは、なるべく「ボーン」に近いところに自分の足場を据えるような切り替えが必要になった。それがこれからのPAGEのテーマでもある。

2006/12/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会