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ブラウザを超えて進むインターネット

イースト株式会社 代表取締役社長 下川和男氏に聞く part1

JAGAT:2006年に社長になられて、今最も力を入れておられることは?

下川氏:Microsoftの.NET関係をいろいろやってきましたが、今度Vistaが出るし、Office2007もいろいろな機能が入っているので、その対応で毎日のようにMicrosoftと行き来をしています。

JAGAT:今までもWindowsコンソーシアムをはじめ、ずっとアプリ開発やソリューション開発をしている人との間の仲立ちをされていました。

下川氏:そうですね。今回、Microsoftが5年ぶりに大改訂をし、ものすごい仕組みを持っているのに、それがなかなか認知されていません。例えばVistaの新しいWPF、Windows Presentation Frameworkという機能を使うと、インターネットにつながっているのに、ブラウザのない世界が作れます。
よくFlashを使っているサイトがありますが、今はブラウザの枠があってメニューが出て、その中でFlashが動くものです。それがブラウザのメニューがなくてアプリケーションだけでできるようになります。利用者はブラウザのことを抜きにしてアプリケーションに集中できます。

ドキュメントというのも非常に大きな概念になっています。WPFのアプリケーションで有名なのは、自動段組という機能で、ウィンドウを広げると自動的に段組数が増えていき、4段組等になったり、縮めたら少なくなるし、文字サイズも自由に変えることができます。ブラウザのように、文字サイズが5種類しかなくてHTMLで選ぶのとは全然違い、リニアに選べます。
HTMLが考えられたのは、もう十何年前です。十何年前と今とは全然違いXMLが使われています。MicrosoftのXAMLというXMLのアプリケーション体系は、非常に膨大な機能を持っていて、HTMLの機能も包含しています。その上に新しいテクノロジーが入っています。例えばFlash的なスクリプトがXAMLで動くものとして書くことができます。それを再生すればきれいに動くアプリケーションが作れるし、あわせてドキュメント用の構造も持っているので、T-Timeのような電子書籍風の表示もおなえます。

かつ、印刷も、今までブラウザを印刷するときは右側が欠けて出てきましたが、WPFの印刷という機能では、「この画面上で一番きれいなレイアウト」という形でやるのと同じで、A4で指定すればA4で一番きれいなレイアウトにして印刷します。今、XAML関連のソフトを多数、開発していますが、それ以外にも体験サイトを作って普及啓蒙のお手伝いをやろうとしています。

JAGAT:入口はいわゆるWebで、そこから先はシームレスに開発ができるようになるということでしょうか。

下川氏:Webからリンクしてアプリケーション起動という形もとれるし、それ以外にVistaのサイドバーにいろいろなアプリケーションを埋め込むことができます。例えば「ニューヨークタイムズ」というメニューが表示されて、起動するとサイドバーに出てきて、クリックするとアプリケーションとしてそれが動き、「ニューヨークタイムズ」の最新版が見えてしまうという形がとれるようになります。よく使うアプリケーションをガジェットから取り出す。そうすると、ブラウザは一切ない世界が創れます。

今回のVistaやOfficeの特徴は、「インターネットにつながっているのに、なぜみんなブラウザ、ブラウザと言うのか。アプリケーションを作ってしまえば、Web APIがあってやりとりするだけの話ではないか」という考え方です。今でもWebサービスをOfficeから呼ぶことができますが、それがもっとやりやすくなって、かつ、データ構造がXMLになったので、XMLデータとして、今まではできなかったアプリケーションからOfficeドキュメントを生成するということができます。 逆に、アプリケーションがOfficeのXMLドキュメントを読むという世界が作れ、非常に自由度が広がります。ExcelもXML対応なので、財務諸表のXBRLなどもExcelのXMLに変換してしまえばいいので、そういうこともやりやすくなります。

JAGAT:Vistaの場合、今までのXPのインストールベースがあると、お客さんの側には入れ替える時期の問題がありますが。

下川氏:そうですね。Microsoftが危惧しているのは、「今のままでいい、要らない」と言われることでしょう。次の世界のほうがもっと良い世界に行ける。良い世界に入ってしまえば古いものの不便さがわかりますが、「これでいい」と思っていると、変われません。

JAGAT:今のでいいというか、今のでもあっぷあっぷしているのでしょう(笑)。 ユーザーがこれからどのようにしていこうかというグランドデザインがしっかりできていると、新しいテクノロジーをとりこみやすくなります。しかしユーザのグランドデザインは一枚岩ではありません。もともとホストコンピュータの世界に対してUNIXがあって、またパソコンが伸びるという形で、社内でもいろいろ軋轢がある中でパソコンの成長があったので、会社としてのグランドデザインがパソコンに移りきっていないところもまだ日本にはあります。

下川氏:Microsoftもインフォメーションアーキテクトという言い方をして、アーキテクトを育成して、グランドデザインができるようにやろうとしています。お客さんのいろいろな案件に対して「基本構想はこうしよう」という提案をする人をイースト社内でも今育成しようとしているし、デザイン会社と組んでもやっていこうというふうな動きになっています。MicrosoftのVistaの普及が今のXPと同じレベルになるには、5年くらいかかるのではないかと見ています。XPへのフレームワークの追加で、WPFは動くので、数年後には、「ニューヨークタイムズ」のタイムズリーダーなどおもしろいWPFアプリケーションが普及すると思っています。

part2に続く〜

2006/12/17 00:00:00


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