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印刷40年アウトライン(1)「産業動向」

来年2007年には、JAGATは創立40周年を迎えます。そこでこれまでの印刷産業40年間をマクロトレンドの視点で振り返ってみたいと考えました。過去を総括し、印刷産業の全体像を捉える試みとして、「産業」「技術」「人材」のそれぞれの動向から変遷を見ていきます。12月26日、27日、28日の3日間、年末特別号として連載します。第1回目の12月26日(火)は、この40年間の概観を「産業動向」から見ます。



高度成長から成熟、そして縮小へ
40年間の印刷産業を振り返ってみると、高度成長から成熟化そして縮小へと変遷してきた。この変化の基本的要因は需給ギャップの逆転である。印刷産業は、35年間一度もマイナス成長を経験することなく伸び続けたが、1991年以降縮小に向かい、2005年には事業所数、従業員数規模は30年前、出荷額は17年前の水準に逆戻りしている。

カラー化、小ロット化が加速した成長
印刷産業の出荷額拡大は、1970年以前は主に印刷物需要自体の増加によるが、以降はカラー化と小ロット化の進展による。1970〜1990年の20年間で印刷物需要自体は経済規模と同じ勢いで拡大した。一方、プリプレスの付加価値は、多色化と小ロット化の進展で紙の需要の3倍以上に伸びて印刷産業の出荷額をGDPを上回って伸ばした(GDP弾性値1.2)。

供給力不足を充足するために増加した事業所数
1980年代半ばまで印刷需要は2桁で伸びていたので、新しい企業が続々と生まれて供給力不足を補ってきた。しかし、1980年代後半に入ると需要の伸び率は7%程度となり、事業所数の増加が止まった。言い換えると市場が年率7%程度伸びなければ、事業所数は維持できないということである。

反転した需給ギャップによる価格低下
需給関係は、1990年代にはいると供給力過剰へと逆転した。バブル崩壊と重なったのでそれが主要要因と見られがちだが、1990年までの推移を見ればいずれ起こるべきものであった。当然のことながら過当競争を生み出し価格下落をもたらした。市場の伸びは今後とも1%強と見られており、印刷産業の供給力過剰はかなり先まで解消しないだろう。

不振の最大限原因はプリプレスの付加価値低下
1990年代に入るとプリプレスのデジタル化が始まり、96年以降、印刷産業出荷額減少の最大要因となった。JAGATの推計によれば過去10年間で3.4兆円の付加価値が、デジタル化によって失われた。一方、紙の出荷販売量は、1995〜2005年の10年間で8.6%増、平版インキの出荷販売量は50.6%増(年率4.2%増)で印刷物需要自体は増加していた。

両刃の剣の技術進歩
技術の進歩は、1990年までは印刷需要拡大に大きく貢献した。ホットメタルからコールドタイプへ、凸版印刷から平版印刷への移行、さらにエレクトロニクス技術を採用し品質の安定化・向上、脱技能化、省人化が図られ印刷需要拡大に大きく貢献したが、1990年代に入って、需給関係は供給力過剰に転じ、プリプレスのデジタル化はプリプレスの付加価値を大きく減じるよう働き長期低落をもたらしている。

需要内容と技術変化がもたらした産業の構造変化
印刷産業出荷額を業種別に見ると1975年以降、製本業のシェアが低下した。印刷業は新工場建設が都市部ではできなくなり隣接県に工場を建設し、設備を導入して製本の仕事を内製化した。製版業は、カラー化が進んでシェアを拡大したが、カラースキャナ、CEPSの登場で印刷業が製版を内製化し始めた。さらにDTPが本格的に普及し始めて以降は、もう一段のシェア低下が起こった。デジタル化とネットワーク化のもたらす構造変化は、印刷産業を含むメディア全体に広がるものである。

強まる縮小均衡の色合い
印刷産業の成長期は、一人当たり加工高が拡大する中で機械設備投資によって労働分配率を下げて利益水準を維持していた。しかし、1992年以降、一人当たり加工高はわずかな上昇に留まり、投資も横ばいになって労働分配率が上昇して営業利益は一段低い水準に落ちた。2001年以降は投資も控え、一人当たり人件費を下げて利益水準を維持する方向に向かった。

再チャレンジのソフト・サービス化
印刷業界では業態変革が叫ばれ始めた。目指すものは、印刷物生産の前後・周辺に事業領域を拡大していくソフト・サービス化である。そのチャレンジは、第3次近代化計画の「知識集約化」から始まったが、一向に成果を得ることなく、今日に至っている。中小印刷業におけるソフト・サービスによる売上高はいまだ2%にも達しない。
JAGATの塚田益男元会長は、その著書「印刷経営のビジョン」(1985年6月 JAGAT刊行)の中で、知識集約化について「ノーハウの蓄積は、飽きることのない社員教育と、開かれた経営の中で育てられた社員の意欲だけが決め手になるだろう」と述べている。印刷業界も、出口の見えない設備競争への疑念とソフト・サービス化の重要性認識の中で、これからの発展の最大の鍵はその方向いかんに関わらず「人材」である、と認識せざるを得なくなってきた。


経営情報配信サービス『Techno Focus(テクノフォーカス)』特別号1より要約。
『Techno Focus』特別号2「印刷40年アウトライン(2)「技術動向」
『Techno Focus』特別号3「印刷40年アウトライン(3)「人材動向」

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2006/12/26 00:00:00


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