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「好ましい」グラフィックス表現とは何か?

デジカメWatchに、セイコーエプソンのIJ.CP推進部の小野勝広部長に聞く という記事で、エプソンの「おまかせ印刷」の話が出ていた。エプソンは、「写真は写真マニアやプロだけでなく、幅広くいろいろな人たちが撮影するものです。当然、失敗写真も少なくないでしょう。そうした失敗写真を、プリンタ側でいかにきれいに、満足した画質に補正して出すかが、大きなテーマです」というところから、写真の中を顔認識機能によって、人間が考える良い肌色(記憶色として)を再現するように補正を加えるという。

「人種による肌の色の違いもありますが?」という質問には、「元データの肌色がどんな系統の色であるかを判別し、微妙に色を変えています。健康的な肌を好む傾向が強くなってきているといった傾向の変化もあるため、やや赤味が乗った肌色にしています。以前のエプソン製プリンタは、忠実性を重視していたり、あるいはやや明るめにするといった方向の肌色にしていましたが、現在はもっと色を載せる方向になりました。また人種ごとに、ベースとなる色はそれぞれプログラムの中に持っています。」との答えがあった。

肌色は絶対的な基準があるのではなく、また記憶色といっても時代による傾向の変化がある。もう単純に「明るめ」「ピンク」という単純な処理ではなくなっている。デジタルカメラやカラープリンタの大衆化の裏には、アナログの時代のノウハウ以上にデジタルで処理できるようになったことがある。記事中でも「銀塩写真の場合、ラボのオペレータによって仕上がりの差が大きいのですが、エプソンのオートフォトファイン! EXは自動的に安定した画質を提供する。」という具合である。

直接的には画像処理のソフトウェア側の進歩がこれを実現しているが、それも専門業者のみが使えるノウハウではなく、安い機械にも組み込まれるようになったハード面の進歩もともにあることが伺える。しかし所詮ソフトやハードの進歩は最終的には誰でも恩恵を享受できる共通の土台のようなもので、この場合はソフトやハードで何をするかについてエプソンが独自に調査を繰り返して「目標」を自分で設定できたことが、成功要因の根本的なところだろう。

つまり、単にモノ作りのアイディアではなく、現状の正確な把握やニーズの統計的な把握、関連技術をつなぎ合わせる科学的な思考などが合わさって、デジタルの大きな飛躍につながることがわかる。今までいろいろ言われていた「好ましい」グラフィックス表現に関する議論も、主観的な堂々巡りから抜け出て、デジタルの上に新たな可能性を見つけることができるのではないだろうか。JAGATでは、まず一番議論が多かった人の肌の表現について、〜 肌色とは何だろう? 各分野の研究と科学的アプローチ 〜 を考える「肌色シンポジウム」(1月24日)を契機に、2007年は新たな色のアプローチを始めようとしている。

関連情報:どうして肌色は、気がかりなのか?

PAGE2007 A1セッション 脱三原色 分光的色再現技術の可能性

2007/01/16 00:00:00


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