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21世紀の風に乗って

皆さんは、毎朝新聞を見るとか、毎日茶の間でかなりの時間TVをつけていることに何の不思議も感じないでしょう。しかし近年では携帯電話や携帯音楽プレーヤが普及して電車の中の光景が変わったように、このような人とメディアの接触様式は刻々と変わってきたことも思い出すでしょう。今またメディアの接触という点では大きな転換点なのです。20世紀にはマスメディアが大きく発達し大企業のビジネスになったたように、21世紀にはデジタルメディア・デジタルプリントによって情報発信の多様化や民主化が起ころうとしています。まだ21世紀には入ったばかりですが、これからどのようにメディアビジネスが変わっていくのかをPAGE2007では考えます。

PAGE2007に向けて今回最もフォーカスしていたのは、20世紀と21世紀の世代ギャップの問題です。Webにも、いろいろな言い方をしながら、デジタルメディアの新たな利用や、そのコンテンツ作りは新しい世代を登場させなければならないということを、くどくどとWebに載せてきました。それは従来のメディアビジネスをしている人があまり意識していないことだと思ったからです。ビルゲイツに代表される1980年代当時の若者が既存のコンピュータの世界を作り変えてしまったように、今度は今までのメディア業界の外から、既存のメディアビジネスをひっくり返すほどの力がかかり始めているといえます。少なくともITは既存ビジネスよりは、それに挑戦する人に有利に作用していることはおわかりでしょう。

今、DTPからWeb制作へという仕事の流れが起こっていますが、デジタルメディアを手がけている業種はさまざまであり、単純に従来のグラフィックスのノウハウだけでネットメディアに生き残れるとはいいきれません。1990年代に製版・写植という専用システムからパソコンベースのDTPに変わって、DTPに関わる人の数は1桁増えましたが、DTPからWebというのも関わる人の数はさらに1桁増えようとしています。しかしWebをできる人の数が増えることが問題なのではありません。BlogやSNSのシステムの登場のように、Webくらい誰でもできるのが当たり前なのですから、ビジネスになるかどうかはオリジナリティの問題です。Blogは星の数ほどありますがオリジナリティのあるものは稀です。例えば本として後世に残るBlogを考えますと、それはドングリの背比べ・付和雷同・me too のものでないことは明らかでしょう。

コンテンツに関するオリジナリティ、デザインなど表現に関するオリジナリティ、使いやすい仕組みのオリジナリティなど、人がお金を払ってでもやってもらいたいと考えるほどのプロフェッショナルなスキルを持つ人の数は、技術や表現方法が何であっても限られています。このオリジナリティは21世紀にふさわしいものが求められているのであって、20世紀にプロとしてやってきたグラフィックアーツの人のそれが21世紀に通用するかどうかはわかりません。例えばFlashアニメとか動画オーサリングなどは、必ずしも従来のグラフィックスの人がうまくできるわけではありません。しかしこれに類似する技術は、今の子供が大きくなる段階では、たいてい誰でも身に着けてしまうかもしれません。さらにそこにプロとしてやっていける技術を身につける何パーセントかの若者が出てくることは確実です。何パーセントといっても従来の印刷関連分野の10倍は出てくるでしょう。

20世紀のプロが21世紀のメディアで仕事をしようとした時に必要なのは、そういう若い層と一緒にやっていくか、それを打ち負かす力を発揮するかのどちらかでしょう。現実的には現場は若い層に任せて、先輩はプロデュース、企画、経営に回ることになるのでしょうが、それでもそういう若い層を活用するためには、21世紀のグラフィックスのニーズの変化は捉えていなければなりません。PAGE2007はこれからのビジネスを着想して試行する若い層と、その時代の経営を担う若い経営陣の方々に、ぜひ参加していただきたいイベントです。今年は展示会入場登録の場所にもハイエンドデジタルカメラでのモデル撮影の現場を再現し、デジタルカメラからRGBワークフローでの制作への直結した流れをアピールしています。また基調講演では、写真をレタッチするのではなく、欲する被写体を写真の中に作りこんでしまうようなCGによるクリエーションを紹介しています。昔なら絵筆を使ってイラストレーションを描いていた人が、コンピュータのアルゴリズムで質感を出す工夫をしたり、画像の加工・合成で思いの質感を作り出しています。若いCGアーチストの技量は完成度の高いものになっています。

情報家電はこれから大きく変わろうとしている分野で、放送と通信の複合利用が、地デジとかワンセグといった放送側からのアプローチと、GyaOのようなインターネットTV、もうひとつはYouTubeのような動画投稿として始まっています。音楽がiPodになって手元に千曲単位で保存されていて、ネット上では無限とも思える楽曲から自由にダウンロードできるように、ネットがあたかもジュークボックスのようになってしまいました。それが今度は動画でもおころうとしているのです。遠い先のことだと思われたデジタルメディアがこんなに身近に迫っていることと、その活用を考え出すのは、21世紀の若い世代なのだから、その人たちと一緒にどうやってビジネスをしようかということを、PAGE2007をきっかけに考えていただきたい。

2007/02/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会