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デジタルの第2ラウンドの勝者は誰か?

人力車や馬車がタクシー会社にはならないように、旧世代と新世代の間に断絶ができて、メインプレーヤーとなる会社が入れ替わることが、パラダイムシフトと共に起こる。今プリプレスの分野には、DTPの膠着状態やCTPのメリットが見えないなどから、「先が見えない」論者がかなりいるが、デジタルとネットワークという技術パラダイムの転換は、「先が見えない」人を振り落としてしまうかもしれない。ではデジタル化の第2ラウンドで何が起こるのかをザッとおさらいして、振り落とされないための戦略を考えてみよう。

まず第1ラウンドとは何であったのか? それは今までは現場も営業もみんながデジタルの勉強をして、デジタルでもミスのないように頑張れば脱落しないで付いてこれた時代のことである。従来のDTPはデザイナが先行したように、とりあえずデジタルで出発して、そのファイルを後ろ工程で何とか使えるものに「尻拭い」していた。そのためにさまざまな製版ツールが作られたが、こういう解決法は本末転倒である。

最初は出力センターが中心であったイメージセッタは次第に印刷会社に設置されるようになった。印刷会社が製版を内製化したからであるが、イメージセッタの買い替え時期を迎えてCTPへと移行しようとしている。これは工程がフルデジタルであることを必要とし、出力直前の最終工程が大きく変ることを意味している。つまりこの際、さまざまな製版ツールもPDFワークフローへと収斂しつつあるのだ。

DTP編集をオープンな横断的なものにした一つの要因はEPSファイルであったが、今度はPDFが同じように出力周りの製版ツールを連携させ、自動化させる役割を担うのである。印刷会社の受け皿が自動システムに変っていくと、DTPは前工程の自発的な努力の積み重ねの「草の根」的な作り方では対応できず、出力システムに合わせた作り方をしなければならなくなる。PDFでは前工程から自己完結的なファイルを作らなければならない。

つまり必要なフォントは予め文書に埋め込んでおくとか、カラーマネジメントの環境を作っておかなければならない。あるいは制作物のオンラインでの入稿も求められるようになろう。デジタルの第1ラウンドの結果として、今度はDTPの前工程が工芸的な作り方を捨てて、デジタルチームの一員としての環境整備を求められるように、デザイナに「課題」が巡ってくるだろう。Photoshop5ではPhotoshopの作業者が作業用の色空間の設定をするようになったが、工程を貫いた設計を共有しあう必要があるのである。

2年前にPAGEの基調講演で MILLS DAVIS は「チームで勝つ」ようになると言った。つまり、制作の自動化がさらに進むにつれて、人間が個々の仕事を確認してまわれないので、品質保証をチーム全体のシステムに組み込むことが重要になる。パラダイムの変化としては「草の根DTPから品質保証DTPへ」になろうか。デジタル化の第2ラウンドでは、勝つチームに加われるところと、そうでないところという区分けがされるのだろう。確実に仕事が進むようにすることは、一緒に仕事をする企業チーム全体の課題であり、またそのためにはレベルの揃った企業でチームの編成しなければならない。

勝つチームに入る企業の戦略として必要なのは、第2ラウンドで起こるであろうことの先取り的な取り組みである。今、インターネット・エキストラネット、データベース、IT、EC、CIM、SCMなどなどバラバラな言い方でそれぞれ話題にされていることを、自社の今後のシナリオの中にうまく位置づけているだろうか? もっとも戦略のうまい会社がチームのリーダになるのであるから、それが第2ラウンドの勝者といえるだろう。

PAGE2000における2月2日の基調講演は、こういった戦略化のための専門家である カリフォルニアのPointBalance社の Bill Davisonによって行われる。もう「先が見えない」とボヤき合っている段階ではない。新しい時代のリーダー企業は、もうとっくの昔に動きはじめているのである。グラフィックアーツのデジタルの第2ラウンドを深く考える機会はPAGE2000しかないので、ぜひお見逃しのないように!!

今DTPに必要な、デッカイ想像力

2000/01/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会