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情報伝播力が差を生むビジネスモデル

PAGE2007基調講演Bトラックは、ビジネスをコンセプトとした。エンドユーザーの情報行動を把握しながらビジネストレンドを見ていくというB1セッションの内容をうけて、B2セッションでは、ビジネスサイドからメディアビジネスの今後について掘り下げた。PAGE2007基調講演B2「情報の影響力とメディアビジネス」では、コンテンツやシステム、ノウハウ、デザイン等のソリューションを提供するインフォバーン代表取締役会長・小林弘人氏をモデレータに、マイネット・ジャパン代表取締役社長・上原仁氏とヴィジョネア代表取締役社長・内古閑宏氏をスピーカーにセッションを行った。


モデレータの小林氏が前提事項として、SNSやブログ、ポッドキャストやビデオキャストなど広義のCGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)を自己発信型の「マイメディア」と名づけて、マスメディアと対比させてコミュニケーション手法や情報伝播の相違を解説した。
そしてマイメディア空間における情報のフローとそのマーケティング活用、またリアルメディアを併用したクロスメディアマーケティングについての提言をした。
マスメディアは露出が大きいが、実は狭い範囲のもので、マイメディアのほうがより膨大な量である。マスメディアの情報はトップダウンだが、マイメディアでは、情報はウイルスのように水平状態で拡散していく。

これまでは、企業と顧客の関係は取引と反応であった。それに対して現在は、相互連関しながら貢献しあっていく(会話していく)方向に変容しつつある。
既に知られている情報は、マスメディア上で検索できるが、予知に近いものは難しい。しかし、マイメディア上のさまざまなサービスを活用することで何が話題になっているのかを測定できる。マイメディア上でインフルエンスしたものとして、たらこキューピーや男前豆腐などの事例を挙げた。


マイネット・ジャパンの上原氏は「ニューシング」という国内初のソーシャルニュースサービスを運営している。ユーザーが投稿・引用したニュース記事を他のユーザーの投票数、コメント数、閲覧数で評価して、リアルタイムでランキングするニュースサイトである。話題になっているニュースほどサイトの上に位置し、効率的に取得できる。また誰でも簡単に携帯電話から情報が配信できる無料携帯サイト作成サービス「katy(ケイティ)」も行っている。

会社を立ち上げたばかりの2006年6月時点で「マイネット・ジャパン」でGoogleやYahoo!で検索しても0件だったが、7カ月後の現在では10万件を超えた。この驚異的な数字を得るにはリアルなコミュニケーションとブログでのつながりを利用して相乗効果を高めた。上原氏は、ブロガーを集めてRTCカンファレンスというイベントを開催している。旬なテーマを扱い、ケーススタディとディスカッションをブログで配信するというサイクルをまわす。自身もブロガーとしてのアクションを取り続けていることが、上記の結果につながった。

インターネットを使ったことのある人は8000万人と推計されるが、実際のコアなネットユーザーは3000万人、ブロガーとSNSユーザーの実数は900万人くらいだろう。総務省の発表ではもっと多くなるのだが、あくまでも継続的に利用している人と限定すると社会の1割程度ではないか。
つまり限られた人たちの情報が伝播していく。また口コミが購買の後押しをするようになり、消費者の購買行動は、AIDMAからAISCEASへと変化している。


ヴィジョネアの内古閑氏は、インタラクティブな媒体としてのDVDの可能性に着目し、クロスメディア時代の「映像2.0」をキーコンセプトとしている。YouTubeを例にするまでもなく動画はもはやコミュニケーションにははずせない。
DVDは市場が大きく成長性もあるが、ネットや携帯電話にも注目している。DVDとインターネットを融合した新時代のDVDテクノロジーとして「DVDMAGIC」というサービスを行っている。

DVDそのものを新しい広告メディアとして活用し、DVDから最新情報、商品情報を入手できるだけでなく、DVDの視聴率のアクセスログを取ることができる。雑誌の付録としてバンドルされ、携帯電話とも連動し、読者のメールアドレスが分かり、顧客誘因の武器になる。付加価値がつくし、発売前に読者にメールを送ることで、雑誌の売り上げに貢献することもできる。
新しい視聴スタイルとして、PPV(ペーパービュー方式)を採用し、自分が観たいときに観たい分だけ課金する仕組みを作った。携帯からパスワードを取得することで、DVDコンテンツの新しい販売法を実現した。また低価格によって新しい市場の拡大につながる。

コミュニケーションのとり方もリアルなDVDかネットかという二者選択ではなく、今後は選択肢が増えて共存していく。マーケティングの活用なども含め、これまでになかった新しいコンテンツ流通の形を提案できる。


またこのあと「どうやって口コミ、バズマーケティングを発生させるか」「リアルとネット空間、コンテンツを掛け合わせる」「炎上についての具体例」などのテーマについてのディスカッションが行われた。

2007/02/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会