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「次世代Web検索」コンファレンス報告

PAGEコンファレンス、C2「次世代Web検索」では、 高度なマイニング技術を取り入れたブログ検索エンジンや人の主観・興味を反映させようとする検索技術を採用したモデルの紹介と、次代の検索について議論を交わした。講演内容を要約する(文中敬称略)。


◆神崎正英(モデレータ:ゼノン・リミテッド・パートナーズ代表)
検索のサイクルは、ユーザーの問いかけに、検索システムが対応し、検索結果として提示する。結果表現を受けてユーザーの知識状態が変化、必要に応じて次の検索へと循環していく。このように問答のサイクルによりユーザーに知識状態が変化していく。
目的がはっきりしている検索の場合、目的に照らした精度が重要だ。多数の結果セットのうち、目的に近いものを順位付けて知らせる。ページランク、適合度順、鮮度順、信頼度ランクなどがある。

一方、漠然とした検索の場合、ゆるやかな対象で関連情報、可能性を探る。漠然とした対象の周辺に、思わぬつながりや収穫を期待していることも多い。そのため、検索システムに関連情報を加味して推薦してもらう。例えば、対象の持つ特徴を分析して類似情報を提示する。あるいは、ユーザーの類似パターンを調べてオススメを提示する(マッチング)。さらに一般的な評判だけでなく、信頼できる人による評価を重視して検索する方法などがある。また漠然どころか、もっと砕けて何かいいネタはないか、検索結果に依存する場合もある。

次世代検索は、「どんなデータをどんな切り口で」、「検索の入り口と出口」がカギとなるように思う。前者は、より的確な検索、よりしっくりくる推薦、思わぬ発見や楽しくなる検索など、多様化するユーザーの目的にフィットした検索の研究開発。後者は直感的、扱いやすさ、順序だけでなく目的にあった結果表示。そして、どのような評価方法、根拠となるデータの確かさを確認できるような、信頼性が当然必要となる。

◆奥村 学(東京工業大学 精密工学研究所助教授)
2000年初頭(日本では2003年頃)から急速に台頭したブログは時系列がはっきりしているものが多い。また個人と密着したメディアであり、トラックバックによるインタラクティブなつながりもある。コンテンツとしてのブログは集合知の宝庫で、最新の情報源としてみんなが何に関心を持っているか、あるいは意見分析に活用できる。ブログマイニングのビジネス活用も、例えばブランドイメージ分析、広告効果測定、企業・商品の評判・評価の把握などが考えられる。

インターネットから社会の関心、意見を収集、分析するために、「blogWatcher」を開発した。広義のブログ(テキスト系サイトなど含む)を対象に情報を収集しマイニングしていく。バースト分析(トレンド分析)、評判情報検索(評判分析)などができる。またニュースとブログのマッピング、つまりあるニュースに関連するブログ、ブログに関連するニュースを検索できる。また完全自動生成で、話題のトピックを紹介する「メタブログ」や「blogWatcher」の収集エンジンを利用したRSSフィードツールの「なんでもRSS」もある。「blogWatcher3.0」では入力された語のライバル関係にあるキーワード候補を提示する「VersusSearch」、行動分析、ブログ主の性別推定機能なども付加した。今後はトピックの傾向推定、評判抽出モジュールの一新など、次期バージョンに反映させる予定だ。

◆猪子寿之(チームラボ代表取締役社長)
「人の主観・興味を反映した検索結果」を抽出することを目指している。これらはGoogleなど、Webサイトへのリンク数に重きが置かれるロボット(クロール)型検索エンジンでは難しい。
チームラボでは、より「おもしろいもの」を探す、より「ディープな情報」を見つける、より「コアなこと」を知るため、オモロ検索エンジン「Sagool」を開発した。客観的な事実よりも、主観的なものを大事にした検索エンジンである。はっきりいって「Googleよりオモロイ」。Googleとの違いは、まず最先端のインターフェイス。ページ遷移しない。どのあたりに自分が探したいものがあるのか、インターフェイスでわかりやすくする。

可視化検索エンジン「マッピングセレクトウェア」も開発した。「自分のまだ知らない、自分の好きだろうモノに直感的にたどり着ける」ことを目指した。嗜好性を方向で表現、関係性が高いと思われるものが近くに表示される。ある中古車サイトの例では、国産の少量生産車の周囲に一方で同系のスポーツ車が、他方で国産の個性的な車種が配置される。何かしら同じ匂いの車を抽出していく。探していくプロセスも楽しい。 世界でイケているものは欧米のルールで戦っていない。家庭用ゲーム機では、身体を使う「Wii」が世界的巨大企業のゲーム機に勝ちそうな事実。日本の強みを理解して、日本だからこそ、の視点で、新たなテクノロジーにチャレンジしていきたい。

2007/02/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会