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念願のDTPエキスパートを取得!

◆松本 和樹

入社してから10年以上がたちました。私の会社は明治35年創業で老舗の印刷会社といったところです。
入社当初はオフセット印刷と活版印刷の受注が半々でした。グラフやイラストレーションなどは外注に頼っていて、MacやWindows環境なんてありませんでした。
私の主な業務はワープロによる文字入力とページ物などの組版業務で、サポート期限の切れた古い編集機を動かしていました。そんな仕事に飽きを感じていたころにようやくMacの導入が実現したのです。

Macを担当してから今年で10年になります。最初は図版やグラフの作成・画像処理・ページレイアウト作成から始まりました。そして長野オリンピックを境に、イメージセッタの導入やWindowsの本格的始動がありました。時には中古車雑誌の面付け→フィルム出力で30時間勤務。会社で朝を迎えたこともありました。今はマシン台数もかなり増えましたが、工場の隅っこでMac2台から始めたころを思い出すと懐かしく思います。

4年くらい前に上司がDTPエキスパートを取得しました。そのころからDTPエキスパート試験を知り、それに続けと思っていましたが、試験にチャレンジする機会がなく、今日まで至っていました。
昨年、JAGATの通信教育講座のお知らせが届き、上司にやってみないかと勧められました。XML関連やデザイン関連など、数項目の内容がありましたが、私が選んだのは、「チャレンジ the DTPエキスパート」でした。この通信教育を修了させるとともに8月の26期DTPエキスパート試験を目指したのです。
印刷業に関わって10年、たくさんの知識を身に着けてきましたが、いざ試験の内容をのぞいてみると、知らないことばかり。主に編集レイアウト部門なので、印刷技術関連や製本関連、企画関係やコンピュータ知識に関しては無知だったのです。おまけに社内での受験者は私一人。重いプレッシャーを感じました。風邪を引いてしまい、頭痛に悩まされながら必死に勉強したことを思い出します。

DTPエキスパートを取得してから、仕事に対しての考え方が変わったように思います。一番思うのは、後の工程のことを考えながら作業できるようになったことです。印刷関連や製本関連、後の工程の知識を身に着けることで、今まで何げなく行っていた作業の意味も理解でき、また後の工程でこうなってしまうのだから、前の段階でこうしておけばと応用することもできるのです。さらに現場とのコミュニケーションも深いものとなり、これは仕事をしていく上で重要なことです。
どんな仕事でも、すべての工程の知識を身に着けないと、自分の工程だけの知識では高い品質を維持できないんだなあとこの試験を受けて痛感いたしました。

わが社は長野市に本社を構えていますが、この街は印刷産業などで成長してきた街らしく、私の会社の近辺を歩いてみると、たくさんの印刷所や製本所を目にします。そのためか、ライバル社との価格競争などは厳しいものがあります。昨年、ご近所の印刷会社の倒産があったばかりです。
景気動向指数が上向きで、「平成不況から脱出した」「いざなぎ景気を越えた」などとニュースなどで耳にするようになりましたが、皆さんはどうお思いでしょうか? 一部の産業は業績好調らしいのですが、印刷業にとってはまだまだ厳しい状況が続きそうです。
若年層の新聞・読書離れ、紙媒体から電子媒体へ、そしてライバル社との競争…。
どうやって付加価値を付け、この先仕事と関わっていったらいいのか模索しているところであります。これはみなさんも同じことをお思いでしょう。

DTPエキスパートを取得して大きな自信が付きました。この自信を仕事に生かせるように努力し、またDTPの分野は技術の進歩が目まぐるしいので、常に新しい知識を身に着け、DTPエキスパートらしい仕事をしてがんばっていきたいと思います。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2007年3月号


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2007/03/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会